今や一人に1台の所持が当然のようになったスマートフォン(スマホ)。中には用途ごとに2台、3台を持ち歩いている人も珍しくない。ちょっとした仕事用のメールからおいしいご飯屋探し、さらには暇つぶしのための動画やゲームアプリなど、この「小さなパソコン」は私たちのさまざまなニーズに対応してくれる。

そんななか、近年このスマホを育児に活用するパパ・ママも増えてきた。自宅で日常的に子どもにスマホをいじらせたり、公共の場で泣きじゃくる乳幼児に動画を見せてなだめさせたりといった具合に使うケースが散見される。

「発育面を考えれば、スマホの使用は子どもにとってよくないはず」と思いつつ、かんしゃくを起こしている我が子を落ち着かせようと、ついスマホの力を借りてしまっているパパ・ママもきっといるはずだ。

では、幼少期からスマホに触れることは子どもの発育にどのような影響を与えるのか。そして、子どもはどのようにスマホと付き合っていくべきなのか。小児科医で、自身も2児の母である竹中美恵子医師にうかがった。

  • スマホは育児に使用してもいいの?(写真:マイナビニュース)

    スマホは育児に使用してもいいの?

子どもが2歳になるまで公共交通機関は避けた

――友人・知人から、「電車内やデパートで子どもが突然泣き出すとすごく慌てて困ってしまう」という話をよく聞きます。

家の中でならまだしも、幼い子どもを持つ親なら誰しもが悩まされる問題ですよね。最近は女性の社会進出も進み、ご自身のキャリアを考えるとブランクをあけるわけにはいかないと、子どもを持たない選択をする女性も増えてきているのが現状です。

このような選択をする人もいるなかで、日本での子育ては海外に比べ非常に息苦しくなっています。実際私も、仕事が終わった後にみんなで話し合うカンファレンスには保育園に子どもを迎えに行ってから絶対に出席しなければいけませんでした。でも、乳飲み子が泣き出すと、「うるさいから出ていけ」と言われ、「じゃあどうしたらいいのか」と、おやつを持っていったり、抱っこ紐で踊りながらカンファレンスに参加したりといった経験があります。

――先生ご自身もとても苦労なされたのですね。

そのことがトラウマになり、子どもが2歳頃になるまでは、新幹線や公共の乗り物に乗るのが恐怖となり、ほとんどタクシーや自家用車移動だったことを思い出します。「泣いたら眠いかお腹がすいているかのどちらかでは?」といったことを言われますが、実際に子育てをしてみるとそんなに甘いものではありませんでした。

お腹を満たしても、寝かそうとしても、機嫌が悪いときは大泣きするのが子どもです。後から聞くと、「お菓子を落として悲しかった」とか「ママの口調が怖かった」など、大したことではないケースが多いのですが、公共の場でそんなことを丁寧に話している暇はありません。周りの視線を気にしつつ子どものことも気にしていたら、1人泣き出して2人目も泣き出す……。ノイローゼになってしまいますよね。

子どもはスマホからさまざまなことを学ぶ

――そんなとき、スマホに頼ってはいけないのでしょうか。

私は頼るべきだと思います。誰も「スマホに子育てをさせよう」と思って頼っているわけではなく、仕方なく頼らざるをえない状況で頼っている場合の方が多いのではないでしょうか。

実際問題として、スマホを育児に使うお母さん方への世間の目は非常に冷たいものですが、大人もテレビやラジオを見聞きするように、子どももスマホから新しい情報を得て学びます。最近は知育アプリもありますし、都市では体験できないようなことを疑似的に経験できたり、生活の知恵を学べたりできます。中には、スマホで英語の歌を歌えるようになった子もいました。

確かに、長時間の使用は視力低下などが懸念されますが、近年はパソコンでアプリを使用して教育する保育園や幼稚園も出てきています。今からのメディア社会を考えれば、スマホを使用して悪いことは一つもないと思います。

――スマホを活用した育児は時代に即している、ということでしょうか。

10年前と今とでは、子育ては異なります。私もかつて抱っこばかりしてたら、「抱きグセがつくからやめた方がいいよ」と見知らぬ人に言われ、内心、「あなたの子どもじゃなく、私の子どもです。私が決めるので放っておいて」と思った経験があります。

この記事を読まれている方の大半は、実際に育児をされているパパ・ママでしょう。子どもの親はあなたです。あなたが「良い」と思うことは、人になんと言われようと良いのです。スマホ使用も、利用時間を決めたり、「一つのテーマが終わるまで」「電車を降りるまで」といった具合にルールを設けたりして使えば、全く問題ないと思いますよ。周りの言うことは気にしないようにしましょう。

子どもは飽きやすい生き物です。スマホを使用する前に例えば、持ち運びできるおもちゃで遊ばせてみたり、小さな絵本を読ませてみたり、簡単なゲームなどをさせたりして、それでもダメであれば、気分を変えるためにスマホに力を借りるのもありでしょう。