2017年に放送を開始し、2018年8月に終了した『仮面ライダービルド』では、仮面ライダービルド/桐生戦兎(演:犬飼貴丈)や仮面ライダークローズ/万丈龍我(演:赤楚衛二)のいる「東都」と対立している「北都」から来た仮面ライダーグリス/猿渡一海を演じて人気を博した武田航平。かつて2008年の『仮面ライダーキバ』で仮面ライダーキバ/紅渡(演:瀬戸康史)の父であり、天才バイオリニストの紅音也役で好評だった武田にとって二度目の「仮面ライダー」役となるグリスは、北都三羽ガラス(赤羽、青羽、黄羽)を束ねる"カシラ"として男くさい頼りがいを見せる一方で、ネットアイドルのみーたんこと石動美空(演:高田夏帆)の大ファンであり、美空の前ではふだんのクールさから一転してアイドルオタクの面を露出するという愛すべきキャラクターであった。

  • 武田航平(たけだ・こうへい)。1986年生まれ、東京都出身。第14回JUNONスーパーボーイコンテスト審査員特別賞を受賞。2008年『仮面ライダーキバ』に紅音也役でレギュラー出演した。NHK 大河ファンタジー『精霊の守り人 最終章』(2018年)などのTVドラマや、園子温監督作品『東京ヴァンパイアホテル』(2017年)など映画に多数出演。撮影:大塚素久(SYASYA)

2018年12月22日より公開されている映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』では、テレビシリーズ最終回の"その後"の世界でふたたび仮面ライダーグリスに変身する一海の姿が観られるという。ここでは武田にインタビューを敢行し、グリス/一海役にかけた熱き思いや「仮面ライダー」に携わった者としての心がまえ、そして最新映画の見どころを訊いた。武田の「仮面ライダー」に対する演技者としてのこだわりや、熱い思いのこもったインタビューをお楽しみいただきたい。

――『仮面ライダービルド』での仮面ライダーグリス/猿渡一海はファンの間で非常に人気の高いキャラクターとなりましたね。武田さんは10年前に『仮面ライダーキバ』で紅音也を演じ、そのときは仮面ライダーイクサ、仮面ライダーダークキバに変身し、最終回では未来から来た渡の息子・正夫として仮面ライダーキバにも変身しており、まさにご自身でおっしゃるところの「仮面ライダーの申し子」にふさわしい"爪痕"を残されていますね。

そうなんです。『キバ』から10年後、一海としてふたたび仮面ライダーシリーズに戻ってきて、変身まで出来るなんて「快挙」だと思います。わりとふざけ気味に「仮面ライダーの申し子だよ!」と言っていますけれど、本気の発言でもあるんです。「ミスター仮面ライダー」とか名乗ってもいいんですけれど、主役ライダーを演じていないんでね。「申し子」くらいがカッコいい響きかなと思っています(笑)。

――『キバ』から10年ということで、役者としてもキャリアを積んだ武田さんだけに、一海のキャラクターはご自身が思ったとおりに作り上げることができたのではないですか。

自分が「こうやりたい」と希望した部分は、9割5分やることができました。現在、1年もの放送期間があるテレビドラマって、NHKの大河ドラマか、「仮面ライダー」か「スーパー戦隊」くらいじゃないかと思うのですが、その「仮面ライダー」でレギュラーをやらせてもらうことの良い点は、役を演じながら"成長"していくところなんです。自分の演じるキャラが活躍して、人気が出てくると出番が増えたり、当初予定していないことが起きたりするんですよ。僕は『キバ』で音也を演じていたときにそのことが分かっていたので、今度の一海のときも、一生懸命やっていればきっと現場の方々が見てくださると思っていました。

――スタッフさんたちが『キバ』での紅音也のブレイクぶりを知っているからこそ、一海の大活躍に期待をかけ、どんどんやりたいことをやってもらったというわけなんでしょうね。

今回、一海役で声をかけてくださった大森(敬仁)プロデューサーや、夏の映画『Be The One』やテレビシリーズを撮られた上堀内(佳寿也)監督など、役者がどれだけ頑張ってるかをちゃんと見てくれていますからね。そういう思いに応えたい、という気持ちもあります。あと、なぜ僕が『ビルド』にキャスティングされたかという意味を改めて考えると、10年前の『キバ』で経験してきたもの、つかんだものを後輩の俳優たちに示さないといけないな、と思ったんです。カッコいい言い方をすると、僕を選んでくれた大森さんのために、何か「結果」を出しておかないといけないと。それだけの覚悟で臨んだ『ビルド』なので、自分自身がここですべての力を出し切っていかないとダメだという思いが強かったですね。

――具体的に、武田さんがグリス/一海役で「やりたかった」ことはどんなことだったのでしょう。

演技のほうはそれこそ好き放題、真面目なところも遊びの部分も思いっきりできました。何よりグリスをカッコよく目立たせようと思って、当初は予定されていなかったというグリスのフォームチェンジ(グリスブリザード)をやらせてほしい、絶対やりたいと主張しました。最後に華々しく"散りたい"という願いも叶いましたね。僕がどんどん「こんなことやりたい」とリクエストするので、大森さんは「はいはい、わかりました。(グリスの)人気が出ればね~」みたいに返事をするんですよ。だから僕も「わかりました。じゃあ人気出しますよ!」って言って、頑張ったところがあります(笑)。ただひとつ、グリスの「面割れ/顔出し」をやりたかったんですけれど、これは実現しませんでした。代わりに幻徳が「面割れ」やっていましたね。剣星さん、さすがカッコよかったな~。グリスの最後の戦いも、仮面が割れて一海の顔を見せながら戦っていたら、もっとカッコよくなっていたと思いますけれどね(笑)。