現在、テレビ朝日系で好評放送中の『仮面ライダージオウ』(2018年)では、「王様になる」という壮大な夢を抱く高校生・常磐ソウゴ(演:奥野壮)が『仮面ライダークウガ』(2000年)から『仮面ライダービルド』(2017年)までの「平成仮面ライダー」の"時代"をめぐり、それぞれの仮面ライダーの力を宿した「ライドウォッチ」を受け継いでいく過程を描いている。

50年後に「最低最悪の魔王」として人々に恐れられる存在になると未来人のツクヨミ(演:大幡しえり)から教えられたソウゴだが、自らの運命を変えて「最高最善の魔王」になると決意し、ジクウドライバーで仮面ライダージオウに変身する。12月16日放送の第15話では、ソウゴが50年後の2068年に行き、未来の自分=オーマジオウとの対面を果たしている。ソウゴは人々に災いをもたらし、苦しめる「魔王」になる運命から逃れられないのだろうか、それとも自身の運命を変えて「よい魔王」になることができるのか……?

歴史改変を目論むタイムジャッカーによって「アナザーライダー」が作り出されると、それぞれの仮面ライダーの「歴史」が変化し、変身者は「仮面ライダーにならなかった」別の人生をたどることになる。第9、10話では、2010年に活躍していた『仮面ライダーオーズ/OOO』の仮面ライダーオーズ/火野映司(演:渡部秀)の歴史が変わり、国会議員となってソウゴと遭遇を果たしている。2018年12月22日より公開されている映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』(監督:山口恭平)を記念して平成仮面ライダーの歴史を振り返る企画の第12弾は、この『仮面ライダーオーズ』をとりあげ、作品の概要を解説してみたい。

『仮面ライダーオーズ』とは、2010(平成22)年9月5日から2011(平成23)年8月28日まで、テレビ朝日系で全48話を放送した連続テレビドラマである。前作『仮面ライダーW(ダブル)』(2009年)で好評だった「小型アイテムの組み合わせによって、複数のフォームチェンジを行う」というギミックを受け継ぎつつ、さらなるパワーアップを目指した仮面ライダー像が志向されている。

800年もの長きにわたる封印から、古代の怪物グリードが不完全な状態で解き放たれた。完全な形で復活を遂げるべく、人間の欲望から生み出される「オーメダル(核となるコアメダルと、肉体を形成するセルメダルの2種)」を求めるグリードの一体であるアンクは、偶然メダルを拾った青年・火野映司に変身ベルト「オーズドライバー」を与え、さらに3枚のコアメダルを与えて仮面ライダーオーズに変身させた。腕だけしか復活することができなかったアンクは身体を完全復活させるのに必要なメダルを集めるため、そして映司は人々の平和を脅かす他のグリードたちと戦うため、互いに手を組んで戦うことを決意する。

本作のヒーロー・仮面ライダーオーズの特徴は、数種類の生物の能力を秘めたコアメダルを3枚組み合わせることで、「頭部」「胸部・両腕」「脚部」がさまざまに変化して、戦況に応じた戦闘スタイルをとることである。その基本形態はタカ・トラ・バッタのメダルを装填した「タトバ」コンボであり、鷹の優れた視力、虎の鋭いツメ、バッタの跳躍力を駆使してバランスの取れた戦闘を行うことができる。

映司がオーズドライバーにメダルを装填し、腰に備わっているオースキャナーで3枚のメダルをスキャンすると変身が開始され、その変身過程では「タ・ト・バ・タトバ・タ・ト・バ♪」という「歌」が発生する。この「歌」はタトバ以外にも、共通する属性(鳥系、昆虫系、猫系、重量系、水棲系など)のメダルを3枚組み合わせた「コンボ」形態を発動させた際、それぞれ異なったメロディーが流れることになり、オーズの独自性を強く打ち出している。

『W』では2種類のガイアメモリを組み合わせることで、左右対称に「色」が変化するフォームチェンジが行われていたが、『オーズ』では3つのオーメダルを用いて「頭部」「胸部・両腕」「脚部」と縦に3種類の要素を配置するスタイルになった。コアメダルの組み合わせは、頭部(タカ、クワガタ、ライオン、サイ、シャチ)、胸部・両腕(トラ、カマキリ、ゴリラ、クジャク、電気ウナギ)、脚部(バッタ、チーター、ゾウ、コンドル、タコ)で行われ、計算上では125種類(そのうち、タトバを含むコンボ形態が6種)ものフォームチェンジが可能となった。後に恐竜系をはじめとするイレギュラーなメダルも作られ、フォームチェンジの数はさらに増加している。

しかし、アンクが所有するコアメダルは同時に復活した他のグリードたちにとっても大切なものであり、劇中では彼らによる壮絶な「メダル争奪戦」が繰り広げられた。それゆえ、エピソードによってオーズがフォームチェンジに使うことのできるメダルの種類と数は常に変動する運命にある。毎回のドラマ開始時(オープニング主題歌が流れた直後)には、その時点でアンクと映司が所有しているメダルの数が明示され、どのメダルで変身可能なのかがはっきりとわかる仕組みになっていた。

本作の主人公・火野映司は「ちょっとの小銭と明日のパンツがあればいい」と常日頃から言い、特定の住居も定職も持たない自由な若者である。まるですべての欲望を放棄したような超然とした性格の彼だが、知人・他人に関わらず、困っている人や苦しんでいる人の姿を黙って見ていられないという一面を備えている。誰かを守るためなら、自分の身の危険をまったく顧みないという映司の姿勢には、世界の紛争地域を放浪していた時に直面した、ある悲痛な出来事が大きく関係しているという。

腕だけで復活したアンクだが、第2話で瀕死の重傷を負った刑事・泉信吾(演:三浦涼介)に憑りつくことで、人間の身体を一時的に手に入れる。アンクが離れてしまうと信吾の命は10分ともたないことから、映司は不本意ながらこの状況を受け入れ、いつかアンクから信吾を取り戻そうと思いつつ、奇妙な協力関係を続けている。アンクは他のグリードからコアメダル、そしてグリードが作り出した怪物ヤミーからセルメダルを奪おうという目的でオーズ/映司を利用しているにすぎず、不幸な目に遭う人間のことなどまったく関心を示さないが、オーズの力を使って人間を助けようとする映司はそんなアンクを巧みに"操縦"しながら、いつしかイキの合ったコンビネーションを築き上げるようになっていった。

すべての人々の思いを受け止められるほど器の大きな映司と、ひねくれ者で計算高く、常に悪態をついているアンクという、濃厚な個性を備えたまったく対照的な2人のやりとりが多くのファンから注目され、愛された。アンクが戦闘状況に応じてメダルを選び、投げられた3枚のメダルを映司がつかみとるという変身直前のシークエンスもまた『オーズ』を代表するビジュアルとして人気となっている。

そして、信吾の妹で可憐な容姿に似合わぬ怪力の持ち主・泉比奈(演:高田里穂)とアンクとの複雑な関係性や、映司を多国籍料理店「クスクシエ」の住み込みアルバイトに誘った白石知世子(演:甲斐まり恵)の細かいことをあまり気にしない大らかな性格、そして「クスクシエ」店内の陽気な雰囲気なども、本作を彩る重要な要素として好評を博した。