さまざまな業界のビジネスシーンで使われる、英語の略語。一見同じような略語でも、まったく別の意味になることもありますから、正しく理解する必要があります。

  • IRとPRの違いを理解していますか?

今回、解説するのは「IR」と「PR」。どちらも広報に使われる言葉ですが、その違いは分かりますか?

IRって何をすること?

IRとは【Investor Relations】の略で、日本語では「投資家向け広報」と訳されます。

企業は、新しく事業を始める際や、今の事業を拡大する場合に、金融機関から融資を受けるなどして資金を集める必要があります。新規株式の発行も、資金を調達する方法の一つです。

調達できる資金は、株価によって変わります。新たに50万株発行するとして、1株500円なら2億5,000万円ですが、1株2,000円では10億円を調達することができます。

企業は自社の株価が高ければ高いほど、より多くの資金を集めることができるのです。ここにIRの意義があります。

Webサイト上で業績・財務状況を伝えることはもちろん、業界の最新動向に関する説明会を開催したり、事業の特徴をわかりやすくムービーで紹介したり、商品概要をカタログにして配布したりと、IRを丁寧に、こまめにすることによって、投資家は株価判断をしやすくなるのです。

もし、IRが分かりづらく、ほとんど更新されていなかったら、たとえ良いニュースがあったとしても、その企業は信頼してもらえないかもしれません。

投資家と良い関係を築くための活動がIRです。

PRの本当の意味は?

続いて、PRの意味を解説します。これは【Public Relations】の略で、日本語では「広報」という言葉が近いとされています。

IRがInvestor(投資家)を対象にしているのに対して、こちらはPublic(公共)と、より広い対象になっています。社会を構成する大人たちと信頼関係を築いていきましょう、という活動がPRなのです。

企業のPRは顧客、従業員やその家族、取引先、株主、銀行、政府、学校など、社会のさまざまな構成員が対象となります。

といっても、すべての人に満遍なく伝わりますように、と発信するよりは、各グループに合わせてメッセージを伝えたほうが効果的です。

PRはPromotion(商品宣伝)や、Press Release(メディア向け発表)の略として使われることもありますが、もともとのPRは、より広い概念を持っています。

企業だけではなく、官公庁もまたPRをしています。

たとえば「働き方改革を推進しましょう」とか、「インフルエンザの予防接種を受けましょう」とか、「振り込め詐欺に気をつけましょう」といった取組もすべてPRです。

代表的なPRの方法には、CMを打ったり電車をラッピングしたりするといった、有料でおこなう「広告」や、マスコミに情報を提供して記事や番組に取り上げてもらうようにする「パブリシティ」などがあります。

近年は、企業がTwitterやFacebook、InstagramなどのSNSを活用したり、自ら情報サイトを立ち上げたり、雑誌を創刊するなどして、より直接的に情報発信・情報交流するケースが増えてきました。

「認知度が拡がった」「ターゲット層の意識が変わった」「売り上げが増えた」「投票率がアップした」といったことが起きれば、それはPRの成果と言えるでしょう。


さまざまなネットメディアの登場によって、企業の活動はより注目されるようになりました。広報担当者ではなくても、外部と接する機会は必ずあります。

IRやPRの概念をしっかりと押さえて、きちんとしたコミュニケーションをとっていきましょう。