WOWOWで11月12日からスタートする連続ドラマ『遠藤憲一と宮藤官九郎の勉強させていただきます』は、遠藤憲一演じる刑事・諸井情が連続殺人犯を追うサスペンスドラマ…の撮影現場を舞台に、そこで次々と発生するさまざまなトラブルに対処する姿をコミカルに描いたワンシチュエーションコメディドラマ。

主演の遠藤憲一をはじめ、ゲストの小栗旬、仲里依紗、加藤諒、高畑淳子、野村周平、水野美紀、高嶋政伸、桃井かおりといった名だたる俳優たちが実名で登場するなど、フィクションとリアルが交差する不思議なテイストに仕上がっているこの作品。脚本を務めた宮藤官九郎と主演の遠藤憲一に話を聞いた。

主演の遠藤憲一(左)と脚本を担当した宮藤官九郎

――まず最初に、こういう変則的なメタ脚本について、書く側としての感想はいかがでしたか。

宮藤:初めての経験だったんです。作り方をディレクターの伊藤(征章)さんと模索している間は、正直「どうやって書いたらいいんですかね?」みたいな感じで書ける気がしなかったんですけど(笑)、やり方が見つかってからは楽しく書けました。

――具体的にはどのように?

宮藤:まずキャスティングが決まって、それから「この人に何をやってもらったら面白いか」というところから打ち合わせして行きました。例えば第1話のゲストに小栗旬くんが決て、小栗くんと遠藤さんが演じる「テイク2」では、どんな絡みが見たいかを話し合い、そこから逆算して最初のパートである「テイク1」は何をやろうか、という感じで。打ち合わせはテイク2→テイク1、書くのはテイク1→テイク2。今までそんなことしたことないですし、まるで脚本を途中から書いているような感覚でした。

――出る側の遠藤さんはいかがですか。

遠藤:今回、僕はすべて“受け芝居”なんですよ。しかもこんなにずっと連続して受けをするっていうことは今までなかったので、その意味で本当に新鮮で勉強になりました。楽しく笑い転げながら勉強させていただきました。

  • 第1話のゲストは小栗旬

――遠藤さんほどのキャリアでも新鮮な経験だったんですね。

遠藤:自分がこれまで演じてきた役はわりと"攻め"の意識が強かったと思うんですよ。ですから今回、来るものをフラットに受け止めることの難しさと楽しさを学んだと共に、自分の新たな伸びしろを発見した気持ちです。まだまだ知らない領域があるんだなと。

宮藤:確かに、受け芝居をする遠藤さんの姿はあんまり見たことないですよね。「テイク1」の方がいつもみなさんが見ている遠藤さんだと思います。

――遠藤さんをはじめ、ゲストの方々が本当に言いそうなリアルなセリフが興味深かったです。

遠藤:たまに生々しい表現がでてくるのがちょっと微妙でしたけどね。僕のことを「便所みたいな顔」とか「アジアの痩せこけた野良犬」とか(笑)。

宮藤:いや、そこはさすがに当て書きじゃないです(笑)。

遠藤:でも、それぞれのキャラクターについて上手に書かれていると思います。みなさん共演したことはあっても深い部分までは知らないので、「そういうこと言いそう」とか「本人っぽいな」と思わせる意味での当て書きというか。

宮藤:高畑(淳子)さんに「(このキャラクターが)私は分からない」って言われたんですけど、「俺にはそういうふうに見えてるんだけどなぁ……」って心の中で思ってました(笑)。

  • 第3話のゲスト・高畑淳子

――オファーを受けた俳優さんが「自分なりにやってみます」と言うセリフも印象的でした。

宮藤:考えてみれば便利な言葉ですよね。貸しを作っておきながらメチャクチャなことをやる、という(笑)。でも、そこが役者の面白いところでもあるというか。それに桃井さんなんて「自分なり」の極みですもんね。

遠藤:僕は自分なりにやってみるときもあれば、作品に染まってみることが面白いときもあるし、それぞれですね。今回はもうとにかく書かれている世界にハマって余計なことはしない、それだけでした。ただ自分、ゲラ(笑い上戸)なんですよ。目の前の出来事をフラットな気持ちで受け止めようと俯瞰で見ている分、ツボにすぐ入っちゃって。だからもうちょっと吹くのを抑えたかったですね(笑)。

――本作で発生するさまざまなトラブルは、実際のドラマや映画でもよくあることなんですか?

宮藤:あそこまで極端なのは少ないけど、わりとあるような気がします。「(髪型や服装の)つながりが…」とか「企業名を言っちゃいました」とか。さすがに役者がすぐ帰っちゃうっていうのはないですけど(笑)。続けて見るとこの現場の異常さが伝わると思います。

遠藤:多少デフォルメしてる部分はありますよね。でも、第2話で「大きいスクーターに乗ってすごいスピードで帰りました。もう高速乗ってます」みたいなやりとりがあるんですが、演じた役者さんにそんなイメージがまったくなかった分、かなり僕のツボにハマりました(笑)。

宮藤:穴埋めをする役者さんへの出演交渉を監督じゃなくて遠藤さんがするところもいいですよね(笑)。

――遠藤さんから見た宮藤さんの脚本の魅力とは何でしょう?

遠藤:言葉は悪いけど、「頭おかしいじゃないの?」って思うくらいの発想力というか(笑)、どういう回路でこういうこと思いつくんだろう、って毎回読んでびっくりしてました。いい意味で言ってるんですよ、ホント。こんなに台本を読んで腹抱えて笑う作品なんて、そうそうないです。

宮藤:ありがとうございます! 勉強させていただきました(笑)。

――では最後に、ドラマのタイトルにちなんでお二人が今後「勉強」したいことは何ですか?

宮藤:僕は落語が好きでよく聞くんですけど、最近、落語やってみたいなって。

遠藤:自分で?

宮藤:はい。落語を書いたことはあるんですが、いつか一席、演じてみたいですね。

――遠藤さんは?

遠藤:英語はもう1回ちゃんと勉強したら話せるようになるのかなって思いますけど、今はなかなか時間も取れないだろうし…夢みたいな話ですけどね。

宮藤:俺も英語、勉強したいです。恥ずかしいんですよね。海外に行って追い込まれた時に英語が出てこないのは嫌だなって。なので英語も追加します(笑)。

連続ドラマ『遠藤憲一と宮藤官九郎の勉強させていただきます』はWOWOWプライムにて11月12日(毎週月曜 24:00~)スタート。全7話(第1話無料放送)。