女性にとっておりものは、普段見ることができない体内の様子をしるうえでとても重要なものとなる。大半の女性はそのことを認識しているだろうが、一方で「正常なおりもの」と「異常なおりもの」を把握している女性となると、一気にその数は減るのではないだろうか。

おりものは特定のタイミングでその色や量が変わり、妊娠を知らせてくれる「サイン」ともなりうるため、その実態を正しく理解しておくことは女性にとって有用となる。そこで今回は、産婦人科専門医の船曳美也子医師におりものの重要性やその変化の仕方などについてうかがった。

  • 異常なおりものは悪臭が漂う

膣や子宮内膜、子宮頚管などからの分泌物であるおりものの主な役割として、「膣を通って体内に侵入してくる細菌のブロック」と「精子の子宮への到達サポート(受精の手助け)」がある。一般的に20~30代で最も量が多くなり、40代頃から次第に減少。そして、閉経後には一気にその量が減る。

おりものの中にはさまざまな種類の常在菌が存在しており、正常なおりものだと「lactobacillus属」という乳酸菌が8~9割を占めているという。そして、この乳酸菌がおりもののにおいに影響を与えると船曳医師は解説する。

「正常なおりもののにおいは、乳酸菌がつくる乳酸のにおいです。おりものの中には新陳代謝ではがれ落ちた膣壁の細胞も入っており、乳酸菌は膣壁細胞に含まれる糖を分解して乳酸を産生します。乳酸は膣内のpHを4.5以下の酸性に保つため、『健康的なおりもの』は軽く酸っぱいにおいがするというわけです」

おりものが臭う原因は膣炎かも?

一方で、どこか異常があるおりものは、酸っぱさとは程遠い悪臭がするのが特徴。膣内の乳酸菌は、膣内を酸性にすることで雑菌の侵入を防いでいる。そのため、膣内の細菌叢(そう)のバランスが崩れて乳酸菌がなくなると、さまざまな菌が増殖してにおいがきつくなってしまう。

このようなきついにおいを発するおりものがおりてきた際は、膣炎に罹患している可能性が高い。膣炎の直接的な原因となるのは、大腸菌やブドウ球菌、レンサ球菌などの一般的な細菌と、カンジダ、トリコモナスなど特定の病原微生物がある。

大腸菌やブドウ球菌雑菌が引き起こすのは非特異的膣炎で、その主な症状は「生臭いにおいのおりもの」「おりものの増加」「外陰部のかゆみ」などがある。

一方、真菌であるカンジダ菌が増えると膣・外陰カンジダ症(カンジダ腟外陰炎)になり、カッテージチーズのような白色~緑がかった白色のおりものになる。形状は塊となり、外陰部のかゆみが生じる。

また、クラミジアや淋菌の感染症にかかると、無症状のケースもあるが、性交時の出血や黄色のおりものが認められるとのこと。

生理前と後のおりものの変化

これらの細菌や微生物による変化以外に、生理周期によってもおりものに変化がみられる。その理由は、生理周期によって分泌されるエストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンが増減するためだ。

「女性ホルモンの量が変化すると、子宮の頸管粘液の分泌量が変わります。エストロゲンが増えて排卵前のピークになるころには、透明でのびのある頸管粘液が出ます。すなわち、透明なおりものがでたら排卵が近いと予想できます」

そして排卵が終わりプロゲステロンの量が増えてくると、頸管粘液は粘調になる。こうして粘度を増すことで、精子や細菌が子宮の中に入りにくくさせているのだという。

また、閉経後に女性ホルモンが著しく減少することに伴い、おりものも減る。そのため、刺激で出血やかゆみが出やすくなることを女性は覚えておくとよいだろう。

※写真と本文は関係ありません

取材協力: 船曳美也子(フナビキ・ミヤコ)

1983年 神戸大学文学部心理学科卒業、1991年 兵庫医科大学卒業。産婦人科専門医、生殖医療専門医。肥満医学会会員。医療法人オーク会勤務。不妊治療を中心に現場で多くの女性の悩みに耳を傾け、肥満による不妊と出産のリスク回避のために考案したオーク式ダイエットは一般的なダイエット法としても人気を高める。自らも2度目の結婚、43歳で妊娠、出産という経験を持つ。2014年、健康な女性の凍結卵子による妊娠に成功。出産に至ったのは国内初とされる。著書に、「婚活」「妊活」など女性の人生の描き方を提案する著書「女性の人生ゲームで勝つ方法」(2013年、主婦の友社)、女性の身体について正しい知識を知ってもらえるよう執筆した「あなたも知らない女のカラダ―希望を叶える性の話」(2017年、講談社)がある。En女医会にも所属している。

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。