スポーツ中継を見ていたら、解説の人が「イニシアチブをとられた」と言っていた。最初は相手チームの選手の名前かなと思ったけど、どうやら違うらしい。
いったいどういう意味? というわけで、今回は「イニシアチブ」という用語について解説します。
■「イニシアチブ」の意味
「イニシアチブ」には、「物事を率先してすること。首唱。先導」「主導権」「国民が自発的に立法に関する提案を行うことのできる制度」といった意味があります。「イニシアティブ」と表記されることもあります。
ビジネス用語としてのイニシアチブは、「物事を率先してすること」や「主導権」の意味で使われるのが一般的です。
■「イニシアチブ」の使い方
イニシアチブという言葉は、シーンによって若干意味が異なります。具体的な事例とともに、それぞれの使い方をご紹介しましょう。
・「主導権」という意味で
イニシアチブの意味の中で、最も一般的なのが「主導権」です。
例えば、ある製品においてトップシェアを誇る企業を、「○○業界でイニシアチブを握っている」と言います。また、スポーツの場合では、相手に主導権を握られ、ゲームを有利に展開することができなくなった時に、「イニシアチブをとられた」という言い方をします。
ビジネスでもスポーツでも、「主導権を握った方が有利」という考え方は、同じということでしょう。
(例文)
・価格交渉では、イニシアチブをとるように。
・会議でイニシアチブを発揮する。
・序盤から完全にイニシアチブをとられてしまった。
・「率先して」「先導」という意味で
「主導権」という意味に類似していますが、状況や文脈によっては「率先して」「先導」といった意味で捉えた方がいい場合もあります。
(例文)
・A社のイニシアチブで協議を開始する。
・プロジェクトは、技術開発部のイニシアチブで行ってください。
・日本のイニシアチブで国際会議をすすめる。
・「構想」「戦略」「計画」という意味で
「構想」や「戦略」「計画」といった意味で使われる場合には、計画の名称や発議した人の名前、会議の開催地などの後ろに付けて、「○○イニシアチブ」という形で表現するのが一般的です。政治やマネジメントなどで使われることが多いでしょう。
政治での実例を挙げると、2000年/那覇市開催の「アジア太平洋・アジェンダ・プロジェクト」で琉球大学の3教授が提言した「沖縄イニシアチブ」、2009年/鳩山首相が国連気候変動サミットで提言した「鳩山イニシアチブ」、ASEANの格差是正を目的とした「ASEAN統合イニシアチブ」などがあります。
マネジメントにおける例としては、新たな事業を開拓し推進していくことを「新規事業推進イニシアチブ」、経営戦略を実行し達成するための活動を「戦略的イニシアチブ」と言ったりします。
この場合、「推進する」という言葉に置き換えた方がしっくりくるかもしれませんね。多くの企業では、ホームページに「イニシアチブ」というページを設け、自社がどんな事業を推進しているのか、どんな構想に取り組んでいるのかを掲げています。
・「住民発案」「直接発案」という意味で
イニシアチブには、「国民が自発的に立法に関する提案を行うことのできる制度」という政治的な意味があります。日本では、地方公共団体の住民が行う条例の制定や改廃請求などがこれに該当します。
主導権の「主導」には、「中心となって他を導くこと」という意味があります。ゆえに、イニシアチブを握ったり掲げたりすることには、大きな責任が伴います。
ビジネスで新たなプロジェクトを任された場合には、単にイニシアチブを握るだけでなく、そのプロジェクトを成功へと導くよう、最後まで責任を持って努めましょう。