働き方改革の一環で日本政府も普及促進を図っている副業・兼業。民間企業だけでなく地方自治体でも副業を容認するところが出てきており、さらには条件付きではありながら国家公務員の兼業も認める方向で政府の調整が進んでいます。こんな状況をみながら副業にチャレンジしたいと意欲を膨らませる人も多いでしょう。
一方で、副業するにはいくつかのルールがあります。本業に支障をきたさないというような業務上のルールもありますが、副業で収入を得る時の税金もルールのひとつ。きちんとしておかないと罰則されることもありますから、会社員が副業をするときに知っておきたい税金について、気をつけるべきポイントを知っておきましょう。
「確定申告」するかどうか確認を
会社員は入社して初めて給料をもらった時から自動的に所得税が天引きされています。2年目の6月からは住民税が天引きされるようになりますが、これも自動的に徴収されるもの。実はこれは、経理担当者などの会社の誰かが本人に代わって計算、納税をしているのですが、給料をもらっている本人は申告・納税の仕組みを知らないという人も多いかもしれません。シンプルにいうと「所得があれば、税務署に申告して、納税する」というのは誰にもある義務なのですが、それを自分自身でアクションを起こす「確定申告」については意識することがないかもしれませんね。
しかし、副業をするということは本業での給料以外の副収入を得るということ。ですから、副収入部分にも税金がかかる可能性があるということを意識しておかなければなりません。副業の普及促進を行っている厚生労働省は、企業や働く人が現行の法令のもとでどういう事項に留意すべきかをまとめ、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」として2018年1月に作成、公表しています。この中でも確定申告が必要になる旨について明記されています。
だからといって、副業による収入があれば必ず確定申告をしなければならないのかといえば、そうではありません。所得税法では給与所得者で確定申告が必要な人が定義されていますが、そのなかでも会社員の副業に関連する場合を挙げると、次のような人が該当します。
a) 1カ所から給与の支払を受けている人で、給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
b) 2カ所以上から給与の支払いを受けている人で、主たる給与以外の給与の収入金額と給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
ちょっと難しく感じる書き方なので、具体例を挙げながら説明しましょう。
・フリーライター、フリーカメラマン、オークションなどの副業
売り上げや報酬という形で収入を得る場合は、上のaに該当します。得た収入からは税金が引かれていないため、自分で税金を払わなくてはいけないのはイメージできるでしょう。 詳しくは後ほど説明しますが、この場合は年間の「所得」が20万円を超えていれば確定申告しなければなりません。
・パートやアルバイトとして、他の勤務先で副業
パートもしくはアルバイト先から給料という形で収入を得ている場合は、上のbに該当します。この場合、パートもしくはアルバイト先の「給料」が年間20万円を超えていれば確定申告が必要です。副業先でも源泉徴収してもらってる……という場合でも、2カ所以上から給与所得を得ている場合は確定申告しなければならないことになっています。
所得税のしくみを知っておこう
副業の種類が何であれ、確定申告が必要になるのは副業で得たお金が年間20万円を超えるかどうかが目安ということですね。しかし詳しくみてみると、aタイプの副業では「所得」が20万円を超える場合とされています。まずは「収入」と「所得」の違いについて知っておきましょう。
所得とは収入から必要経費を差し引いて残った金額のこと。いわゆる儲けの部分ということです。たとえばアクセサリーを作って販売する仕事なら、アクセサリーを作るための材料が必要ですね。売り上げが1万円でも材料費に2,000円かかっていたら、差し引き儲けは8,000円となります。つまり、これが所得ということ。1年分の売上合計額から1年分の必要経費を差し引いて副業の年間所得を計算します。
ところで、なぜbタイプの人も確定申告が必要なのかが気になりますね。給与所得者の場合、必要経費の代わりに「給与所得控除」というのがありますが、これは年間の給与収入の金額によって給与所得控除の額が決定します。2カ所以上から給与をもらっている場合はすべての給与収入を合計します。つまり、仮にアルバイト先で源泉徴収されているとしても、本業の給与と合わせた場合、正しい給与所得控除の額が適用されているかどうかはわからないのです。
確定申告はいつ、どうやって?
所得税の申告は毎年1月1日~12月31日までの1年間の所得を計算して申告します。確定申告する時期は、翌年2月16日~3月15日までと決まっています。たとえば2018年中に副業を開始するならば、2018年12月31日までの所得を2019年2月16日~3月15日までに確定申告することになります。
確定申告は申告書を作成して税務署に持参または郵送する方法や、国税庁のサイト「確定申告書作成コーナー」からオンライン申告することも可能です。画面の指示通りに入力していくだけで自動計算され、確定申告書が作成されますので、税金計算に慣れていない人でも簡単です。税務署に出向く時間のない人にもいいですね。
その際には収入額や経費の金額などを入力していくことになりますので、売り上げ明細書や経費として払った領収書類、アルバイト副業の場合は本業分と副業分両方の源泉徴収票を手元に準備しておきましょう。申告時期になって慌てることのないように、日頃から確定申告のことを意識しながらきちんと領収書などの書類を保管しておくようにしてください。
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著者プロフィール: 續 恵美子
エフピーウーマン認定ライターファイナンシャルプランナー。生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。