西日本を中心に広い範囲で記録的な大雨となり、全国各地で甚大な被害をもたらした「平成30年7月豪雨」。鉄道もJR西日本・JR四国など各線区で施設被害などが報告された。各事業者の列車運行情報をもとに、被害を受けた線区の7月10日の運転計画をまとめた。

  • 広島地区の山陽本線を走る普通列車(写真は2015年撮影)

JR西日本は広島・山口地区をはじめ各線区で列車の運転を取りやめており、大規模な土砂流入や盛土流出、電気設備の水没などが発生していることから「運転再開には相当長期間を要する見込み」と説明している。山陽本線三原~海田市間では、他の輸送手段による移動も困難であることから、山陽新幹線による代替輸送が当面行われる。山陽本線笠岡~三原間も道路事情等を鑑み、7月10日から山陽新幹線による代替輸送を行う。

JR四国は予讃線本山~観音寺間の財田川橋りょうが被災し、復旧に長期間を要する見込みとなったことから、同区間においてバス輸送を実施。7月11日以降、多度津~観音寺間で直行バス輸送を別途行う予定だという。JR九州は筑肥線・筑豊本線(原田線)・肥薩線の不通区間に関して、筑肥線筑前前原~唐津間は7月11日頃に運転再開予定、その他の区間は復旧に期間を要する見込みと発表している。

  • 筑肥線を走る303系(2015年撮影)。筑前前原~唐津間は7月11日頃に運転再開予定となった

JR東海は高山本線白川口~猪谷間で終日にわたり運転を見合わせる。とくに飛騨金山~下呂間・飛騨古川~猪谷間は詳細な被害状況を確認できておらず、運転再開の見込みは立っていないとのこと。美濃太田駅で高山本線と接続する長良川鉄道も、土砂流入や崩壊、浸水などの被害が発生し、美濃市~北濃間で運転を見合わせ、代行バスによる振替輸送を行うとしている。他にも京都丹後鉄道、井原鉄道、錦川鉄道、平成筑豊鉄道など各線区で列車の運転を見合わせる事態となった。

豪雨による被害を受けたおもな線区、7月10日の運転計画

JR西日本

  • 山陽本線(上郡駅以西) : 瀬戸~岡山~笠岡間、海田市~岩国間、徳山~下関間はすでに運転再開。姫路・相生~瀬戸間では7月10日以降、通勤時間帯に通常の6割、データイムに通常の3割程度で運転予定。笠岡~海田市間・岩国~徳山間は運転見合わせ。
  • 呉線 : 全線で運転見合わせ。
  • 芸備線 : 全線で運転見合わせ。
  • 岩徳線 : 全線で運転見合わせ。
  • 山口線 : 新山口~宮野間は運転再開。宮野~益田間は7月10日から運転再開予定。
  • 福塩線 : 神辺~府中間で終日にわたり通常の6割程度で運転予定。福山~神辺間および府中~塩町間は運転見合わせ。
  • 伯備線 : 上石見駅・生山駅・根雨駅から米子方面へ普通列車を運転。その他の区間は運転見合わせ。
  • 津山線 : 全線で運転見合わせ。
  • 姫新線 : 上月~新見間で運転見合わせ。
  • 因美線 : 用瀬~東津山間で運転見合わせ。
  • 木次線 : 出雲横田~備後落合間で運転見合わせ。
  • 播但線 : 寺前~和田山間で運転見合わせ。運転再開は早くても7月11日以降。
  • 山陰本線 : 福知山~和田山間で運転見合わせ。運転再開は早くても7月12日以降。
  • 舞鶴線 : 全線で運転見合わせ。運転再開まで少なくとも今後10日以上かかる見込み。
  • 関西本線 : 伊賀上野~加茂間は7月10日始発から運転再開予定。

JR四国

  • 予讃線など : 本山~観音寺間でバス輸送を実施。財田川橋りょうが被災し、復旧には長期間を要する見込み。多度津~今治間は大幅に減便して運転(遅れ・時刻変更が発生する場合あり)。今治~伊予北条間・伊予市~宇和島間(海回り・山回り)は終日運転見合わせ。
  • 予土線 : 全線で終日運転見合わせ。
  • 土讃線 : 阿波池田~土佐山田間で運転見合わせ。

JR九州

  • 筑豊本線(原田線) : 桂川~原田間で終日運転見合わせ。築堤崩壊、切取崩壊など多数の災害が発生しており、運転再開には期間を要する見込み。
  • 筑肥線 : 姪浜~筑前前原間は通常の半数程度に本数を減らして運転。筑前前原~唐津間は終日運転見合わせ(筑前前原~西唐津間で代行輸送を実施)、7月11日頃に運転再開予定。山本~伊万里間も終日運転見合わせ(代行輸送の実施に向けて準備中)。大規模な土砂流入が発生しており、運転再開には期間を要する見込み。
  • 肥薩線 : 八代~吉松間で終日運転見合わせ。大規模な土砂流入が発生し、運転再開には期間を要する見込み。八代~人吉間は7月10日から代行輸送を開始(平日のみ)し、人吉~吉松間は代行輸送の実施に向けて準備中。

JR東海

  • 高山本線 : 白川口~猪谷間で終日運転見合わせ。白川口~飛騨金山間は7月11日から運転再開予定。下呂~飛騨古川間も7月11日頃の運転再開を見込んでいる。飛騨金山~下呂間は線路内への土砂流入等、飛騨古川~猪谷間では線路内への土砂流入や盛土流出などの被害が確認されているものの、両区間とも現地の詳細な確認ができておらず、運転再開の見込みは立っていない。

その他の鉄道事業者

  • 長良川鉄道 : 美濃市~北濃間で代行バスによる振替輸送を実施。線路内の数カ所で土砂流入や崩壊、浸水があるとのこと。
  • 京都丹後鉄道(WILLER TRAINS) : 宮福線・宮豊線・宮舞線ともに運転見合わせ。宮豊線は7月11日朝から運転再開予定。
  • 井原鉄道 : 三谷~神辺間で安全が確認されたため、7月10日から運転再開(大幅にダイヤを縮小して運転)。
  • 錦川鉄道 : 全線で終日運転見合わせ。
  • 平成筑豊鉄道 : 伊田線・糸田線はすでに運転再開。田川線は7月10日から行橋~犀川間で列車の運転再開、犀川~田川伊田間で代行バスの運転開始。門司港レトロ観光線(北九州銀行レトロライン)「潮風号」は線路内土砂流入のため、当分の間、運転休止。