懐かしさだけではない「Z900RS」人気の理由

なぜ「Z900RS」の人気がここまで高まっているのか。理由を自分なりに考えれば、アドベンチャーツアラーの記事でも書いたように、まず背景として、大型バイクのライダーは高齢化し、マシン選びはスピードよりも乗りやすさ重視に変わりつつある。そんな中、彼らが若い頃に憧れたマシンに乗りたいと考えたとしても、近年「Z1」の中古車価格は高騰しており、程度の良い個体だと200万円以上の値がつく状況にある。そこに登場した「Z900RS」にライダー達が注目したのではないだろうか。

しかも「Z900RS」、見た目は懐かしさを感じるけれど中身は最新だ。エンジンは「Z1」や「ゼファー」のような空冷ではなく、モダンなロードスポーツ「Z900」と基本的には共通の水冷並列4気筒を搭載する。電子制御による安全装備も、ABSとトラクションコントロールを備えており平均以上と言ってよい。旧車のような不安感はなく、逆に安心感を抱かせる内容だ。

  • カワサキ「Z900RS CAFE」

    見た目はレトロでも「Z900RS」の中身は最新だ

もうひとつ、レトロなデザインの新型車が登場しているのは外国車が作った流れでもあり、ベテランライダーたちが気になっていたところにカワサキから「Z900RS」が登場し、決断に至ったというケースもありそうだ。

欧米のレトロデザインバイクも選択肢が充実

バイク人気について書いた記事の中で、二輪車の世界は日本メーカーが主役であり、欧米のブランドは昔から使っているエンジン型式を核とした、味で勝負する車種が中心になっていると書いた。

米国のハーレーダビッドソンはその代表だろう。懐かしさを感じるデザインに、大排気量のV型2気筒エンジンを組み合わせ、ゆっくり走っても満足できる車種が中心となっている。

  • ハーレーダビッドソン「ロードキングスペシャル」

    ハーレーダビッドソンの「ロードキングスペシャル」

英国のトライアンフも、モダンな車種と並行して、1959年にデビューした空冷並列2気筒「ボンネビル」の復刻版を2001年に発表。水冷化された近年はモダンクラシックシリーズとしてバリエーションを増やしている。

  • トライアンフのモダンクラシックシリーズ

    トライアンフのモダンクラシックシリーズ

さらに2013年には、ドイツのBMWが1970年代の高性能車「R90S」に範を取った「R nineT(ナインティ)」シリーズを登場させた。イタリアのドゥカティも、1960年代に米国で人気を博したオフロードも走行可能なスタイルを、2015年に昔と同じ「スクランブラー」の名前で復活させた。

  • BMW「R nineT」
  • ドゥカティ「スクランブラー」
  • 左がBMW「R nineT」、右がドゥカティ「スクランブラー」

アドベンチャーツアラーについて書いた記事では、ライダーの高齢化が日本だけでなく欧州でも進んでいることにも触れた。昔から変わらぬスタイルを貫いているハーレーやトライアンフはともかく、近年、BMWやドゥカティがレトロデザインのモデルを送り出したのは、現地の事情も関係しているだろう。