将来的に生き残り可能な多気筒エンジンを

ダイムラーは直列6気筒エンジンを採用するにあたり、電動技術を追加した。モーター機能付き発電機の意味を持つ「ISG」(Integrated Starter Generator)という仕組みだ。ISGはエンジン始動、アイドリングストップからの再始動、加速の補助力として働くほか、減速時の回生も担う。

  • 「S450」の運転席

    「S450」の運転席(左ハンドル)

新エンジン開発の目標について、メルセデス・ベンツ日本の広報は、将来的に生き残ることが可能な多気筒エンジンを目指すこと、そしてエンジンの欠点であるトルク(回転力)の立ち上がりの遅れや振動を補うことの2点を示した。

エンジンとモーターの融合

将来的に生き残ることが可能な多気筒エンジンを目指すという目標を達成するには、新しい発想が求められる。20世紀の設計のままでは、馬力は出せても燃費を両立させるのが難しい。生き残るためには、馬力と燃費の両立が欠かせないのだ。

  • メルセデス・ベンツ「S450」

    多気筒エンジンの生き残りを図るため、設計の見直しは不可欠だった(画像は「S450」)

では、トルクの立ち上がりの遅れや振動を補うとはどういうことか。まずエンジンは、アクセルペダルを踏み込んでから力が出るまでに、ある程度まで回転が上がらないと威力を発揮できない。ことに低回転からの発進加速では、エンジンの振動が車体に伝わりやすく、アイドリング時にはブルブルと振動が出る。対するモーターは、アクセルペダルを踏み込んですぐに大きな力を出せるのが特徴で、スタートダッシュが効く上、振動はほとんどない。高性能車や高級車の条件として、エンジンよりモーターの方が圧倒的に優れているのだ。

エンジンの中ではバランスが良く、振動の少ない直列6気筒エンジンと、モーター技術を使うISGを組み合わせることにより、高度なシステムとして設計されたのが、メルセデス・ベンツの新しいエンジンなのである。

  • メルセデスがエンジンを説明したスライド

    直列6気筒と「ISG」の組み合わせで新たなエンジンが生まれた

なおかつ、アウトバーンを時速200キロ以上で安定して走れて、そこからの追い越しでも力溢れる加速を実現するため、排気を利用する過給機のターボチャージャーも、このエンジンは装備する。またターボチャージャーは、燃焼を終えたガスが十分に排気されてからでないと過給が機能しないため、エンジン回転数に関わりなく、吸気を過給できる電動スーパーチャージャーも装備した。