"洋楽"のように聞ける力のある声を

――黒羽は対するキャラクターによって見せる顔も異なる難しい役どころですが、そこに梶裕貴さんを当てたのはなぜなのでしょう? また、キース役の平田広明さんもすごくはまっていますよね。

まず平田さんは、アタマから決めていました。平田さん演じるキースと、森川(智之)さん演じるギルバートの2人は、最終話でずっとしゃべり合うことになるだろうと想定していたんです。そうなった時に、声に力のある2人であることがとても重要だなと。"洋楽を聴いている感覚"といいますか、歌詞の意味はわからなくても、世界に酔いしれるような、力のある音というのを考えた時に、ほかに思い浮かぶ人がいませんでした。

梶くんや、ほかのキャストさんたちはオーディションをしてもらったんですけど、梶くんはもう即決でした。個人的にも、ほかの人の意見でも「梶くんだよね」ということだったので。僕も確かに上手だなと思いました。現場でもどんどんいろんなアイデアをもってきてくれて、「ハイ、それでお願いします」という感じでした。振り返ると、もっとしゃべってもらってもよかったなって(笑)。

  • 黒羽設定画

イメージは「黒」だけど、すべてが「グレー」な世界

――テレビと配信作品では、作り方の面でかなり違いがあると思うのですが、一作を監督されてみて、作り手の目線で「発見だったな」と感じたことはありましたか?

「全部が合わさったときの心地よさ」ですかね。絵ができました、音が入りました、全部ガチっと合わさって見てみましたというそれぞれの段階で、すべてのパートの印象が違っていたんですよ。その箇所その箇所で100を出していると崩壊してしまうこともあるので、最後の最後でその話数がもっているいい見え方にもっていくために、こういう風に振り分けなきゃいけないんだということは本当に勉強になりましたね。

今回すごく見て参考にさせてもらったのは海外の連続ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』だったんですけど、正直なところ僕も細かいところまでは理解できないんです。いろんな家があって、「あれ、この家なんだっけなあ」みたいな感じで。でもすごいおもしろいんですよね。どうしても気になるところは戻って見ればいい。それよりも、テンポや見る側の心地よさを重視している印象があって、「この世界観に入っていればそれでいいんだ」というのを感じました。こういうところも配信作品の違いなのかもしれませんね。

――配信がはじまり、さっそく『B: The Beginning』を見ている方もいると思うのですが、監督として「ここを見てほしい」、または「ここをポイントにするとさらに楽しめる」というところはありますか?

最後まで見てから1話を見るとすごく気持ち悪いと思うんですよね。大人がもっている汚さというか、そういうものが冒頭の会話ですごく出ていて……。すべてがわかった上で2人とも会話しているという感じ。1度目とは別の見方ができると思います。

物語のイメージとしては「黒」なんですけど、『B: The Beginning』は全てが「グレー」なんですよね。あらゆるキャラクターが全部「グレー」な中、リリィだけが一服の清涼剤として存在している……そういうところも見どころですね。

  • 星名リリィ設定画

■作品概要
タイトル:Netflixオリジナルアニメ「B: The Beginning」(英題 B: The Beginning)
配信:3月2日(金)よりNetflixにて全世界同時配信中
エピソード:各話約23分/全12話

■スタッフ
原作:中澤一登×Production I.G
監督:中澤一登、山川吉樹
プロデューサー:黒木 類
シリーズ構成・脚本:石田勝也
キャラクターデザイン・総作画監督:中澤一登
美術デザイン:伊井 蔵
メカニックデザイン:常木志伸
プロップデザイン:津坂美織・冨田収子
色彩設計:境 成美
美術監督:田中孝典
3DCGディレクター:磯部兼士
撮影監督:荒井栄児
音響監督:長崎行男
音楽:池 頼広
編集:植松淳一
制作:Production I.G

■キャスト
キース・風間・フリック:平田広明
黒羽:梶 裕貴
星名リリィ:瀬戸麻沙美
エリック・トガ:東地宏樹
ボリス・マイアー:稲葉 実
吉永カエラ:小清水亜美
ブライアン・ブランドン:豊永利行
マリオ・ルイス・ズリータ:田中進太郎
ジャン・アンリ・リシャール:後藤 敦
ギルバート・ロス:森川智之
皆月:石川界人
ユナ:佐藤聡美
ライカ:喜多田 悠
イザナミ:斎賀みつき
カムイ:中井和哉
タケル:亀田望美
クエン:粟根まこと

(C)Kazuto Nakazawa / Production I.G