ごみを持ち帰らない、落とし物は届けない、順番を守らない。海外に行くとびっくりするような光景を目にすることがある。そこで今回は、日本で働く外国人20名に、日本のビジネス習慣で「やめたほうが良い」と思うことについて聞いてみた。
Q.日本のビジネス習慣で「やめたほうが良い」と思うものを教えてください。また何故やめたほうが良いか、その理由も教えてください。
■残業
- 「残業です。長時間仕事をすることが勤勉なサラーリーマンだと思っているようですが、休みなく働くのも限度があり、仕事の効率が悪いのは統計学的にも証明されています。仕事を早く切り上げ家へ帰り、家族のために時間を使うことを考えた方がいいと思います」(エジプト・30代前半・女性)
- 「自分の仕事が終わっても帰れない、不要な要残業」(ポーランド・30代前半・男性)
- 「サービス残業です。①残業も仕事なのでサービス(つまりただ)でやるのは考え方として間違っていると思います。自分はプロという価値を見失う。自分の時間に価値がないと思ってしまいます。②みんな(先輩、上司)が残っているから自分も残らなきゃと思って残業する。一方、後輩が残っている限り先輩や上司も帰らないという悪いループを作ってしまいます。③人間の集中力に限界がありますから、残業した時点で自分や会社にプラスを与えているとは限りません。疲れすぎてクオリティーの低い仕事をしているかもしれません。④残業していることは、自分が自分に与えられた時間で仕事を完了することができなかったということです。それは、実は会社にとって問題だと思うべきだと、海外大学のManagement courseで教えられています。この社員の能力が足りていないか、仕事が多すぎて会社に社員が足りないか。日本も同じ考え方に変更するべきだと思います」(イタリア・20代前半・女性)
- 「残業」(オーストラリア・30代後半・女性)
■上下関係
- 「上下関係の厳しさをやめた方がいいと思います。職場では才能を唯一の基準にした方がいいと思います。会社の発展に重要だと思います」(香港・20代後半・男性)
- 「答えがちょっとずれているかもしれませんが、日本で上下関係の激しさが強く感じるので、もうちょっとフレンドリーな感じでビジネスもしたほうが良いのではないかと、思います」(シリア・30代後半・男性)
- 「日本の先輩後輩関係、またはその関係によって人間同士での扱いの違いは海外では理解できない風習だと思います。特に、外国人は新しく日本の会社に入ったら、学歴と母国での経験があっても自動的に"後輩"になるのがおかしいです」(フィリピン・30代後半・女性)
- 「厳しいヒエラルキーをやめた方がいい。それはよく悪影響の原因になる」(ロシア・20代前半・男性)
女性差別
- 「女性に対しての対応が不公平と感じる時がある。能力がある女性は認められるべきだと思います」(タイ・40代前半・男性)
- 「日本のビジネスワールドは未だにほとんど男性が支配しています。若者にリーダーシップのチャンスを与え、その中でも女性を平等の権利や給料を与え、すすんでリーダーの責任を与えるべきです」(ドイツ・30代前半・男性)
■飲み会
- 「上司との飲み会や無駄な会議。疲れます」(インド・30代前半・男性)
- 「飲み会などはたまに必要ですけど、毎日のように深夜まで同僚と一緒に飲んでいると、家族が可哀想なのでやめた方がいいです」(アメリカ・30代前半・女性)
■その他
- 「繰り返して尋ねてくることです(お金など)。お客様の時間の無駄だからです」(ペルー・40代前半・女性)
- 「特に、年配の日本人は何が何でもお土産を買っていこうとしますが、どんなに高価なものを送っても好まれません。表面上は喜んでもらえますが、本心は相手を困らせるのでお土産を渡す習慣はやめましょう。母国の人もそれをやっていますが、私があまり好きではないです」(カンボジア・20代前半・男性)
- 「やめる理由と言えば、仕事に向いていない場合や、仲間と仲良くできない場合などを挙げられます」(スペイン・30代前半・男性)
■特になし
- 「ない」(マレーシア・40代前半・男性)
- 「特にありません」(スペイン・40代前半・女性)
- 「特にありません」(パラグアイ・50代・女性)
- 「特にありません」(中国・20代前半・女性)
- 「あまり詳しくないので分からない」(ハンガリー・30代後半・女性)
総評
日本で働く外国人に、「日本のビジネス習慣でやめたほうが良いと思うもの」を聞いたところ、「上下関係」「女性差別」「残業」に対する意見が目立つ結果となった。
厳しい「上下関係」は、外国人にとってかなり理解し難い風習のようだ。母国で積み上げてきた学歴や経験が無視され、あくまでも入社順で決まってしまう先輩後輩の関係に「おかしい」と怒りの声も挙がり、職場での地位は「才能を基準にするべき」とのことだった。外国人がおかしいと感じているのは、上下関係だけではない。職場における男女の差についても「女性に平等の権利や給料、リーダーの責任を与えるべき」「能力がある女性は認められるべき」という主張が並んだ。多くの日本企業が"年功序列制の廃止"や "男女平等"を掲げているものの、まだまだ外国人が納得するレベルには達していないようだ。
最も不満の声が多かった「残業」については、誰かが残っていると帰りづらい雰囲気があることや、「長時間仕事をすることが勤勉なサラーリーマンと思い込んでいる」という指摘も。また、与えられた仕事を時間内に終わらせることができないのは、「社員の能力不足か仕事量が多いのか、それとも人手不足なのかを考えるべきだ」と問題提起する人もいた。なぜ日本は残業が多いのか、なぜ他国では定時で帰れるのか、日本はもっと他国から学ぶべきなのかもしれない。