乗用車とは一線を画す「ハイラックス」も人気に
欧米の影響を受けていない、ジャパンオリジナルのデザインに人気が集まる。これは2017年に発売された他のトヨタ車にも共通している。13年ぶりに日本市場に復活したピックアップトラックの「ハイラックス」と、マイナーチェンジを受けたワンボックスの「ハイエース」だ。
どちらも、現在の乗用車とは一線を画した機能重視の形をしている。ピックアップは米国が源流のボディタイプであるが、ハイエースのワンボックススタイルは現在、日本の商用車が主役となっている。
それが若者に受けている。ハイラックスの購入者の中心は20~30歳代だそうで、ハイエースもマリンスポーツなどレジャーのツールとしての需要が増えているという。
ハイラックスやハイエースのような新興国でも活躍する商用車は、壊れても簡単に直せること、部品の供給が安定していることが大事である。これが、シンプルで機能重視のデザインを継承する理由だろう。多くの乗用車とは異なるその形が人気を集めているという現象は興味深い。
ホンダのEVコンセプトにも息づくヘリテージ
ジャパンオリジナルを大切にする傾向はトヨタ以外にも見られる。ホンダは同じ東京モーターショーで、「Honda Sports EV Concept」と「Honda Urban EV Concept」という2台のコンセプトカーを発表した。車名が示すように電気自動車(EV)で、丸いLEDランプを据えた顔はさまざまな情報を表示するディスプレイとするなど最新技術を搭載するが、無駄な線を極力排したスタイリングからは懐かしさも感じた。
デザイナーは明らかにしていないが、アーバンEVは1972年に発表された初代「シビック」、スポーツEVは1965年に登場した「S600クーペ」のフォルムを彷彿とさせる。似たようなデザインが多いEVコンセプトの中で、ホンダらしいと感じるのは同社のヘリテージをうまく取り込んでいるからだろう。
発売前の一部の予想を裏切ってヒット作となった新型「シビック」も、かつてのホンダ車を思わせる雰囲気を濃厚に再現していた。
全高も運転席は現在のセダンやハッチバックとしては低く、その前に広がるインパネやエンジンフードも高さが抑えられており、低いスタンスで水平移動するようなコーナリングを含め、「ワンダーシビック」という愛称で親しまれた3代目「シビック」、デートカーの異名をもらった2代目「プレリュード」など、1980年代のホンダ車を思わせる世界観なのだ。
現在、ホンダは新しいデザインの方向性を考えている最中だそうで、その1つとして世界的に注目を集めた1980年代のデザインがホンダらしさと考え、その雰囲気を感じるような造形を新型シビックに与えたのだという。