感染症が流行する今の時期、赤ちゃんの鼻水に悩む人も多いのではないでしょうか。夜、鼻づまりの息苦しさから赤ちゃんが何度も起きてしまい、親子でつらい思いをすることもありますよね。
そんなとき、自宅で鼻水を吸う人もいると思いますが、そこには思わぬ危険もあります。今回は、自宅での赤ちゃんの鼻水の吸い方について、小児科医の竹中美恵子先生に聞きました。
Q.赤ちゃんの鼻水は、自宅で吸っても大丈夫ですか?
鼻水がズルズル出て赤ちゃんが苦しそうな様子なら、自宅でも吸ってあげた方がいいと思います。ただ、赤ちゃんは鼻水を吸うことを嫌がるので、押さえつける必要が出てきますよね。
それがトラウマになって、鼻吸い器を見るだけで泣くようになってしまう子もいるんです。そこまでしても吸わなければならないかどうか、赤ちゃんの様子をしっかりと見極める必要があります。
Q.鼻水を吸わないと、どのような影響がありますか?
本人が苦しいのはもちろんですが、中耳炎になる可能性が高まってしまいます。鼻水を吸うと、中耳炎になる可能性が6割減少するということが分かっていて、こまめに吸うことが重要というのは間違いありません。
Q.吸う以外に、鼻水の上手な取り方はありますか?
乾燥した鼻水は取りにくく、赤ちゃんも嫌がってしまうので、まず取りやすい環境にしてあげましょう。病院でも鼻水を吸引する前に蒸気をあてるのですが、同じような状態にするのが理想的です。
お風呂の中など、湿気が多く暖かい場所では鼻の中が通りやすくなり、鼻水も取りやすくなるのでお勧めです。
Q.赤ちゃんの鼻水を吸うときの鼻吸い器は電動と手動のどちらがお勧めですか?
電動の方がお勧めです。吸引力が一定で強く、鼻水を着実に吸い取ることができるからです。値段が高いため、簡単に購入するのは難しいのですが、鼻水で悩んでいる人たちは購入を検討してみてもいいと思います。
手動では、吸引力にどうしても限界があり、確実に鼻水が取れないことも多くあります。また、お父さんやお母さんが口で吸いこむ方式だと思うのですが、その際、病気に感染する可能性が高くなってしまいます。赤ちゃんの鼻水は、95%がウイルス性のもので感染しやすいので、十分に注意して使いましょう。
Q.鼻吸い器で鼻水を吸うとき、注意することがあれば教えてください
吸い口を奥まで入れすぎると、鼻の奥が刺激されて鼻血が出てしまったり、気持ち悪くなり吐いてしまったりする子もいるので注意しましょう。また、強い圧で長時間吸引を続けると、耳の痛みにつながる可能性があります。全ての鼻水を取り切ろうとは思わず、無理はしない方がいいでしょう。
鼻の中はとても複雑で細く、デリケートな部分です。鼻水を吸うときに鼻の入り口や粘膜を傷つけてしまい、そこからばい菌が入って病気になってしまった子を診察したこともあるので、十分に気をつけて行ってください。
Q.鼻吸い器は衛生面での心配もありますが、洗浄はしっかりするべきでしょうか?
電動のものは特にメンテナンスが大変なのですが、鼻を吸った後はしっかりと洗浄、消毒をする必要があります。カビなどが発生して不衛生になり、ウイルスや細菌が増殖してしまう可能性もあります。ベビーグッズの消毒液などを使用して、消毒までした方がいいでしょう。
Q.鼻水を吸うためだけに病院に行ってもいいのでしょうか?
もちろん、大丈夫です。鼻水を吸うだけでも構いませんし、蒸気をあてたり鼻水を循環させる薬を処方してもらったりすることもできます。
鼻水の吸い方にはコツがいるので、家の中で完璧に行うのは難しいですよね。家庭での吸引はあくまで補助的なものとして考え、難しいと感じたら病院を頼ってみてください。
竹中美恵子先生
小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。
アナウンサーになりたいと将来の夢を描いていた矢先に、小児科医であった最愛の祖父を亡くし、医師を志す。2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。広島市立広島市民病院小児科などで勤務した後、自らの子育て経験を生かし、「女医によるファミリークリニック」(広島市南区)を開業。産後の女医のみの、タイムシェアワーキングで運営する先進的な取り組みで注目を集める。
日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得
メディア出演多数。2014年日本助産師学会中国四国支部で特別講演の座長を務める。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加する「En女医会」に所属。ボランティア活動を通じて、女性として医師としての社会貢献を行っている。