金融商品の収益の計算で、「利回り」や「利率」という言葉をよく見かけますよね。両者を同じ意味として使っている人もいますが、厳密には違うものです。紛らわしい「利回り」と「利率」の違いを確認してみましょう。

  • 利回りとは? 利率とは?

利回りとは

利回り(年利回り)とは、利子も含めた年間収益が投資金額に対してどのくらいの割合かを示したものです。

たとえば、年利率5%の金融商品を100万円購入して5年間保有した後、売却したとします。その売却金額が105万円だとすると、5年間の収益は合計で30万円となります({利子5万円×5年間}+売却金額105万円−投資金額100万円)。この時、年間収益は6万円のとなり、投資金額100万円に対し年利回りは6%となります。

もし、売却時の金額が95万円だとすると、5年間の収益の合計は20万円となります({利子5万円×5年間}+売却金額95万円−投資金額100万円)。年間収益は4万円、年利回りは4%となる計算です。

なお、実際には税金を考慮して、利回りは以下のように計算を行う必要があります。

(収益金額−税金)÷投資金額÷運用年数×100=利回り(%)

利率(年利率)の意味は?

利回りに対して、利率(年利率)とはどのような意味なのでしょうか。利率とは、1年内の利息の割合が元金に対してどのくらいの割合かを示したものです。

たとえば、先ほどの例ですと、年間では5万円の収益を受け取っているため、利率は5%となります。預金等の利息や株式などの収益は、以下のように計算します。どちらも考え方としては同じで、収益金額を元本で割ることで求められます。

■ 預金等の利息
利息金額÷元本金額×100=利率(%)

■ 株式等の収益
(売却金額−投資金額)÷投資元本額×100=収益率(%)

利回りと利率の違いとは

利率は、「1年内に発生する利子の元本に対する割合」であるのに対し、利回りとは「収益を1年単位に換算したもの」と言うことができます。

ちなみに、利回りにだけ適用される考え方として「複利」があります。複利とは、運用期間中に生じる利子を投資元本に上乗せして再投資することで、利回りを高める効果を狙うことです。また、利回りには「表面利回り」と「実質利回り」があります。投資して得られる収益だけを考慮して計算するのが表面利回りで、費用を加味して計算するのが実質利回りです。

これまで利回りと利率を同じように考えていた人は多いと思いますが、違いはわかりましたでしょうか。また、利回りには複利や表面利回り、実質利回りといった考え方がありますし、金融商品ごとに計算に組み入れる費用なども変わってきます。少し複雑ですが、しっかりと理解して資産運用に役立ててみてください。

■ 筆者プロフィール: 武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント

会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。FP Cafe登録FP。