毎日の育児は楽しくもあるが、悩みも尽きない。子どものことで「ちょっと誰かに話したい」「他の子はどうなのか知りたい」と思っているママも多いはず。でも、共働きで忙しい、ママ友がいない……という人はどうしたら? そんなママの助けになる施設が、実は身近にあることをご存じだろうか。それが"児童館"である。

「港区立麻布子ども中高生プラザ」の休憩スペース

児童館とは、公的機関が営む「健全な遊びを通して、子どもの生活の安定と子どもの能力の発達を援助していく拠点施設」。そう聞くと難しく感じるかもしれないが、"育児の専門的な知識を持つ職員たちが見守るなか、子どもを伸び伸びと遊ばせてあげられる場所"と考えればもっと身近に感じられるはずだ。

今回は東京・港区にある「港区立麻布子ども中高生プラザ」に伺い、どのような施設なのかを取材してきた。育児に不安を抱えている人はもちろん、子どもの新しい遊び場を探している人、ママ友をつくりたい人……きっとすべての親子にとって役立つ施設なので、まだ行ったことがない人は参考にしてみて欲しい。

「麻布子ども中高生プラザ」の入館方法

「館長、ただいま!」「今日も来たよ、館長!」……子どもたちから親しげに声をかけられる館長の佐野真一さんは、この道30年のベテラン。今日は佐野さんに案内していただき、広々とした館内を巡っていく。

館内を案内してくださった館長の佐野真一さん

来館するとまず訪れるのが、この受付。初めて利用する人は最初に登録用紙を記入し「登録カード」を作成する。受付に置かれているバーコードリーダーにカードをかざすか、カードを持っていない人は入館者名簿に記名して入館手続きを済ませる。

受付前で「登録カード」を作成して入館する

公的な施設というと「古い建物なんじゃ……?」と思う人が多いかもしれないが、この「港区立麻布子ども中高生プラザ」は、ものすごくきれい。それもそのはず、開館したのはまだ3年前で、建物全体が白木の質感を生かしたモダンなデザインで統一されている。天然の木材が使用されているとあって、空間に温かみがありホッと心が癒される。

最初に案内されたのは、受付横に広がる「休憩スペース」。円形のイスやテーブルが並び、飲食をしたり本を読んだりとリラックスして自由に過ごせる場所だ。佐野館長は「この休憩スペースは施設のコアとなる場所です。親子で絵本を読んだり、ママ同士や子ども同士でお話をしたり、大きな子どもはここで勉強をしたりと、さまざまなシーンで利用できます」と話す。

充実した遊び場の数々

続いて訪れたのは「こそだてひろば」という、小さな子どもでも安心して遊べる遊び場。滑り台などの遊具が配されたフローリングスペースと、幼児用のおもちゃが豊富に用意された畳スペースがあり、親子でゆっくりと遊ぶことができる。

小さな子ども用の「子育てひろば」

部屋全体が広々としているので、子どもたちもリラックスして遊んでいる様子が見受けられた。佐野館長いわく「一緒に居合わせたママ同士で情報交換をしている様子もよく見かけますよ」とのこと。

キッチン玩具や手作りの人形など、さまざまなおもちゃがそろう

また、その隣にある「ゆうぎしつ」も広々としたフローリングの遊び場になっており、先ほどの「子育てひろば」よりも、少し大きい子どもたちが遊ぶのに適した場所だ。

広々とした「ゆうぎしつ」

さらに広い部屋として「アリーナ」があり、ここは体育館のようなスペース。小中学生用と幼児用のスペースが分けられており、幼児用スペースでは乗り物のおもちゃが用意されているので、身体を動かしてアクティブに遊ぶことができる。

まるで体育館のような「アリーナ」。乗り物のおもちゃで遊べる

なんと、こんな遊び場まで!?

これだけでも十分、子どもたちをのびのびと遊ばせられるが、この「港区立麻布子ども中高生プラザ」には、まだまだ遊び場がある。

佐野館長の案内のもと屋上に上がると、なんと「ローラーブレード場」を発見。さすがに幼児にローラーブレードはできないが、大型の乗り物おもちゃも豊富に用意されており、小さな子どもでもパパやママと一緒に楽しむことができるという。

屋上には、なんと「ローラーブレード場」が!

大きな乗り物おもちゃがそろう

これだけではない。他にも、工作が楽しめる「創作活動室」、中学生・高校生を対象としたバンドやダンスの練習ができる「音楽室」、読書や勉強ができる「学習室」といった部屋もあるのだ。しかも、これらがすべて無料で利用できるのだから、一日ずっと同館で過ごすというのもいいだろう。

「創作活動室」

「音楽室」

「学習室」

また、常設の遊び場だけでなく、定期的や不定期でイベントごとも実施しており、それも人気が高いという。そのラインナップも、定番の「おはなし会」をはじめ、「親子ヨガ」「陶芸」などなど実に多彩。「スタッフが企画したものだけでなく、地域のママさん主導で、手作りのハンドクリームや流行のお昼寝アートといったイベントも実施しています。そうしたイベントの参加を通じて、新たに地域とのつながりが持てるというのも大きな魅力だと思います」

今、子どもの施設が必要とされる理由

館内を案内してもらっている間も、子どもたちから「館長、館長!」としきりに話かけられる佐野館長。同館では、スタッフと利用者(親子)の距離感がとても近いことが感じられた。充実した設備や遊具の数々もいいが、児童館の本当の魅力はそこにある。

「親子向けの施設や機関は数多くありますが、ここは"いい意味で敷居が低い"ことが魅力だと思っています。近年は、育児の悩みを気軽に相談できる人がおらず、一人で思い悩む母親も多いです。そんな方にこそ来てほしい。『うちの子のことなんですが……』と、スタッフにちょっと話してみるだけでも気持ちがずいぶんと楽になるはずです。私たちは毎日大勢の親子と接していますので育児のアドバイスができますし、必要であれば専門的な機関をご紹介することもできます。そうやって気軽に育児の話ができる施設が、お住まいの地域にあることはきっと心の安心につながると思います」

少し前は、よく"公園デビュー"という言葉が聞かれたが、最近はめっきり耳にしなくなった。公園にママたちのコミュニティーが無くなっているからである。かつては当たり前にあった地域ごとのコミュニティーがどんどんと影を潜めていっているのだ。そんな時代だからこそ、親子がふらりと立ち寄り、気軽に話をできる場所。"人を、親子を、地域社会をつなげる施設"こそ、これからの育児に必要と言えるだろう。

「港区立麻布子ども中高生プラザ」の所在地は、 東京都港区南麻布4-6-7。開館時間は、9時30分~20時、休館日は、祝日、12月29日~1月3日となっている。