1968年に創刊された少年マンガ誌『週刊少年ジャンプ』(集英社)の歴史を振り返る展覧会の第1弾「創刊50周年記念 週刊少年ジャンプ展VOL.1 創刊~1980年代、伝説のはじまり」が18日より「森アーツセンターギャラリー」にて開催される。それに先立つ13日には、まさにその"伝説"を牽引した作家陣を招いての特別トークセッションが行われ、当時の思い出を振り返った。

左からケンドーコバヤシ、高橋陽一氏、秋元治氏、嶋田隆司氏、中井義則氏

トークセッションには、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』を手がけた秋元治氏、『キン肉マン』を手がけたゆでたまご(嶋田隆司氏、中井義則氏)、『キャプテン翼』を手がけた高橋陽一氏という黎明期から『週刊少年ジャンプ』を支え、今なお第一戦で活躍するレジェンドたちが登場。また、お笑い界屈指のマンガ好きとして知られるケンドーコバヤシが加わり、熱いトークを繰り広げた。

展示の感想を聞かれると、秋本氏は「やっぱり原画がスゴイ。原画というのは当時の作家さんたちが描いたものなので、熱気が伝わってくる」と興奮冷めやらぬ様子。また、嶋田氏も作家陣の原画の凄さに圧倒されたようで、「まだゆっくり会場を回れてないので、秋本先生や高橋君の原画もじっくり観てみたい」とコメントしつつ、「でも、自分たちの原画がほかの作家さんに見られるのは恥ずかしい」と素直な気持ちを吐露すると、秋本・高橋両氏も同意。さらにケンコバが「我々で言うと"ネタ帳"を見られるようなもんですね」とたとえボケを炸裂させ、会場は笑いに包まれた。

また、ジャンプ展の『キン肉マン』コーナーは「マッスル・ドッキング」の立像や、キン消し約3万体で成型した巨大なキン肉マンマスク、貴重なグッズ群など見どころが多い。この「マッスル・ドッキング」立像に関して、中井氏は「100%の等身大で再現したかったんですが、会場の天井の問題もあり90%サイズです。それでも迫力は十分ですね」と裏話を披露。高橋氏も「やっぱりマッスル・ドッキングは、凄かった」と立像を見どころとして紹介した。

続いてMCから「皆さんは、80年代からジャンプを盛り上げてきた同士。お互いを見て、昔と今で変化は感じられますか?」という質問が。秋本氏は「皆さん、当時から変わらない。やっぱり少年の気持ちで描いているので、今でも当時の作品に関して熱く語れます」と回答。嶋田氏は「少年の心は大事。それがあるから、まだまだ頑張れる。少年の心がなくなると、みんなを魅了するマンガは描けないと思います」とマンガへの想いを熱く語った。

その後、80年当時で記憶に残っているエピソードについて聞かれた嶋田氏。「秋本さんに最初に出会ったのが、作家陣が集合する表紙の撮影の時でした。表紙への登場は当時のステータスだったんですよ。当時の『ジャンプ』の作家さんって、本宮(ひろ志)さん、車田(正美)さん、宮下(あきら)さんなど豪快な人が多くて、破天荒な両さんを描く秋本さんも、とても破天荒な人なのだと思っていました。でも、秋本さんは優しくて、お酌をしてまわる僕達を『トランプやろう』と誘ってくれました」と当時を振り返った。高橋氏も「秋本さんは、同郷の先輩であり、漫画家のお手本のような存在」と、秋本氏への溢れるリスペクトを明かした。

一方、秋本氏は「ゆでたまごの2人は、『手塚賞』『赤塚賞』授賞式で出会いましたが、当時まだ学生でした。東京に出てくると聞いて、何かフォローできればと心配していて、結構声をかけて。高橋さんに関しては、葛飾区にもう一人作家が出たということでうれしかった。サッカーマンガは当時新しかったし、スピード感があり、チャレンジングなこともしているなと思っていました」語った。

創刊から79年までに300万部、84年には400万部、89年には500万部を突破と、年月を重ねるごとに発行部数を伸ばしてきた『週刊少年ジャンプ』。トークセッションでは「当時、ライバル的な存在はいましたか?」という質問も飛び出した。秋本氏は「当時アンケート投票もあったので、ある意味みんながライバル。でも、彼に勝ちたいとか、こっちのほうが人気は上がったとか、その切磋琢磨があったから、逆によかったんじゃないか。ベテランも新人も関係なかった」と厳しかった当時の様子を振り返った。

嶋田氏も「本当にギスギスしていました。今でこそ、高橋君と仲良くしゃべっていますけど、当時誰とも喋りたくなかったし、みんなが敵。もう、情報戦ですよね。ほかの作家さんが次でクライマックスを持ってくると聞くと、後で使うつもりで考えていたネタをぶつけたりもしていました。今は戦友という感じですが、当時は編集者同士も仲が悪かったです(笑)」と、ぶっちゃけトークが炸裂。また、中井氏は「僕は、やっぱりコンビを組んでいる嶋田が一番のライバルだったかもしれません。面白い原作を描いてくると、いい絵を描かないといけないという気持ちがありました」とお互いを高めて、あの名作『キン肉マン』が作られたことを告白した。

そのほか、嶋田氏は「『キン肉マン』の連載2年目に"アメリカ編"を描いたんですが、どうも評判がよくなかった。正月に作家さんが集まって表紙撮影するんですが、その時、担当編集者から『来年、君たちはここにいないよ』と言われました。これはマズイということで、すぐにアメリカ編を終わらせてしまいました」と再びぶっちゃけつつ、「その後、日本に舞台を戻して、武道館や田園コロシアムで試合するようになると、人気が回復していきました」と、当時は海外をイメージできる子ども達が少なかったのではないかと分析した。

その後、ケンコバから「僕を皆さんの作品に登場させると、どんなキャラになりますか?」との無茶ぶりリクエストが。秋本氏は、"両さんの競馬仲間"だというキャラを、中井氏は"キン肉族の額に「ケ」を持つキャラ"を、そして、高橋氏は『キャプテン翼』の"ドイツ代表・カルツ(ケンコバのお気に入りキャラ)の弟"という「カルツ・コバヤシ(カルコバ)」を描き上げ、ケンコバを歓喜させた。

さらに、トークの流れでケンコバのTシャツにサインをするという、『ジャンプ』ファン垂涎の展開に。喜びのあまりケンコバも思わず「もう、楽屋に帰って、じっくりTシャツを見たい……」と、司会放棄も辞さない勢いで会場を爆笑させた。

最後に、秋本氏は「この『ジャンプ展』の原画1つみるだけでも、その作家が前に座って描いていたという熱意が伝わってきます。そして、読者がいるからジャンプがある。これからも『ジャンプ』を応援してください」と挨拶。また、嶋田氏は「昔の原画は、今のデジタルと違って、判子を押していたり、ホワイトを塗ったり、文字などを指定する写植なども貼ってあったりするので、楽しみにしていてください」とコメントし、中井氏は「原画もそうですし、楽しい仕掛けもあるので、親子でこられても楽しめると思います」とアピール。そして、高橋氏は「今日、会場を回っていると、どういう感情かわかりませんが涙が溢れてきました。『ジャンプ』世代はもちろんですが、いろいろな世代が間違いなく楽しめる展覧会なので、ぜひ遊びに来てください」と挨拶し、トークイベントは幕を閉じた。