時代が莉々奈に追いついていない!

――では莉々奈の方はどうですか。

莉々奈ちゃんは可愛いですよね! 本当に頭が良くて、ちゃんと理論立てて素直にそれをポンと出しているからこそ、周りに友達がいなかったりちょっと誤解されちゃったりする部分がある。でもそれって大人になると、だんだん皆分かってきて、多分、彼女の周りにはいっぱい人がいるようになるんじゃないかなと思うんですよね。だからまだ皆、莉々奈ちゃんに追いついてない、いや時代が莉々奈ちゃんに追いついてない! という感じがしています(笑)。そういう頭が良くて真っ直ぐなところの魅力がある女の子なんだというのは、牧野さんが演じているのを見て気付きました。漫画でだと、どうしても美咲ちゃん視点で読んでしまうので「ここでこんなこと言うの!?」とビックリしちゃう部分もあるんですけど、それも誰に対しても同じような言葉を向けられて、いつも純粋な心でいられるからこそなんだなと思いました。あとやっぱり……可愛い(笑)。

――ご自身が高校時代に美咲や莉々奈と出会っていたら、どちらと仲良くなると思いますか。

どっちかなぁー! 莉々奈ちゃんみたいな子がいたら、面白い答えをいっぱい持ってそうだから、めっちゃ話しかけちゃいますね。何か悩み事があったとして、それに対して美咲ちゃんは多分気を遣って答えてくれると思うんですけど、莉々奈ちゃんは割と心情入れずにバサッと言ってくれそう。そう考えると、美咲ちゃんも好きなんですけど、莉々奈ちゃんに興味が湧くと思いますね。

――ネジくんと仁坂くんならどうでしょう?

絶対、ネジくんの方が付き合いやすいと思いますね(笑)。仁坂くんはハッキリ言うタイプだし、イケメンは緊張しちゃうから。それに謎も多くて、彼がどんな気持ちでいるのかは分からないじゃないですか。だから話していて、ちょっとビクビクしちゃいそうですね。

こんなにドキドキする作品に関わったのは初めて

――そんな彼らを演じる他の役者の方やスタッフさんとは、今回どういう風にチーム感を作っていってらっしゃるのですか。

実は、この現場で「はじめまして」という方はあんまりいなくて。それぞれがそうなので、最初から良い雰囲気でした。本編の前にプロモーションビデオを作ったんですね。そこでスタッフさんとも「この子はこういうキャラだよね」といったようなキャラクター決めもきっちりできたので、連携もしっかりしているなと思いますね。すっと入っていけました。それと(本作は)結構、キスシーンが多いんですよ。だからそこに皆でドキドキしながらアフレコしていますね。

――第6話まで演じてこられて、役者として関わったからこそ感じた作品の魅力はどんな部分になりますか?

いやぁ、やっぱり「切ないって美しいなぁ」と感じますね。それに、皆応援したくなっちゃうんですよね。入り込めば入り込むほどキャラに感情移入できて、自分の心も動かされていく。やっぱり物語の流れや設定がしっかりしていないとそういう風にはならないので、本当によくできた作品だと思いますね。それに、こんなに触れ合う場面が多い作品に取り組んだことって私は今までなかったので、演じながら「こんなにドキドキしちゃうんだ」と感じました。キスシーンも……ねぇ(と投げかける)、美咲ちゃんがめちゃくちゃドキドキしているし、その熱を持った感じが何度も訪れるんですよ。そんな「ドキドキするな」という感覚は、初めてかも知れないですね。

――そのドキドキの種類はシーンごとに変わっていくものなのでしょうか。

そうです、その場面によるんですよね。初めてのチューは思いの募った先のもので、ちょっと大胆なことを言ってしまった後の「もうどうにもなれ!」という感じだったり。2回目以降は「ちょっとやむを得ないみたいな、ここでしないと」という瞬間があったり、すごく罪悪感でいっぱいのチューもあったりとか。

――キスシーンで考えても、やはり美咲は切ない役どころですね。

あと美咲ちゃんは、良い感じではだけたりするんですよ。なので男子諸君は1人で見てほしいなと思いますね(笑)。それに美咲ちゃんも莉々奈ちゃんもネジくんも結構、囁くセリフが多いんですよ。だから1人でヘッドフォンを着けて、耳にダイレクトに響かせて、ニヤニヤしながら観ていただけたらと思っております(笑)。

色々な恋愛模様を楽しんでほしい

――では、本作は実写映画にもなるということで、アニメならではの見どころをお聞かせください。

映画はまたネジくんたちとは違うカップルの話ということで――本当に「色んなスピンオフが作れるんじゃないか?」と思う世界観じゃないですか――なので、それはそれで楽しんでもらいたいです。アニメはちゃんと原作通りに進んでいくので、原作の読者さんたちには動いている皆を観られるというのは良いんじゃないかと思います。原作で言えば、美咲ちゃんには「こういうこと、言われたいな」とか「言ってみたいな」と思える、すごく魅力的なセリフがたくさんあるので、観ていただいて「これこれ! これが欲しかった!」と思ってもらえたとしたら、とても嬉しいです。ただ……その原作は終わってないんですよね。だから「どういう風になるのかな?」というワクワク感も楽しんでほしいです。またネジくんたちの恋愛模様が描かれる中で、例えば(厚生労働省の)矢嶋さんと一条さんのちょっと大人の恋愛もしっかり描かれますし、ネジくんの両親も「こういう理想の夫婦、良いよね」と思えるような会話があったりして……なので色んな年代、色んな人たちの恋愛模様が楽しめるんじゃないかなと思いますね。

――最後に、高校時代に花澤さんに政府通知が届いたらどういう風に行動していたと思いますか。

遺伝子レベルで(相性が)合うと言われているわけじゃないですか。だからやっぱり会いもしないで突っぱねることはしないと思います。話し合って「本当に合うなーこの人」と思ったら、そのまま突き進むと思いますね。

――でもネジくんのように既に他にも好きな人がいたとしたら?

それですよねぇ! 「どうしてくれるんだ!」って思っちゃいますよね(笑)。その時、恋愛してたら苦しいなぁ……でもちょっと、(相手が)どこにいるか調べてコソッと姿を見るくらいはするかも知れないですね(笑)。

■プロフィール
花澤香菜
1989年2月25日生まれ。東京都出身。幼少時より子役として活動し、2003年にTVアニメ『LAST EXILE』で声優としての活動をスタート。2009年に『化物語』(『〈物語〉シリーズ』)の千石撫子役に抜てきされ活動の幅を広げながら、2012年からはシンガーとしてもデビュー。ROUND TABLE・北川勝利や元Cymbalsの沖井礼二や矢野博康、カジヒデキといった"渋谷系"のアーティストから楽曲の提供を受け、精力的に活動する。近年に担当してきた主な役どころとして、『てーきゅう』シリーズの板東まりも、『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズの常守朱、『凪のあすから』(2013年)の向井戸まなか、『3月のライオン』(2016~17年)の川本ひなた、『夜は短し歩けよ乙女』(2017年)の"黒髪の乙女"などがある。本作では、主人公・根島由佳吏が思いを寄せる美女・高崎美咲役を務める。

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