小説家・三島由紀夫が1962年に発表した「美しい星」が、55年の歳月を経て映画化された。同作は三島作品の中でも異色とされるSF要素を取り入れた作品で、ある日自分たちが宇宙人であると覚醒した家族の姿を通し、宇宙という目線から地球の問題を切り取っていく。『桐島、部活やめるってよ』『紙の月』を手がけた吉田大八監督により舞台を現代に移し、大胆に翻案された形で製作されることになった。

今回は一家の父で火星人に目覚めた気象予報士・大杉重一郎を演じるリリー・フランキーと、水星人に目覚めた重一郎の息子・一雄役の亀梨和也の"父子対談"を実施。映画『美しい星』作中で描かれるテーマを紐解いていく。

■プロフィール
・リリー・フランキー
1963年11月4日生まれ。福岡県出身。武蔵野美術大学卒業後、イラスト、文筆、俳優など幅広く活躍。小説『東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~』は230万部超のベストセラーとなり、06年本屋大賞を受賞。『ぐるりのこと。』(08)で、第51回ブルーリボン賞新人賞を受賞。そのほか多数の映画賞を受賞。16年、第40回日本アカデミー賞、第59回ブルーリボン賞でそれぞれ優秀助演男優賞を受賞。今後も、主演作『一茶』『パーフェクトレボリューション』などが待機中。 撮影:大塚素久(SYASYA)

・亀梨和也
1986年2月23日生まれ。東京都出身。歌手、俳優、タレント。1999年、『3年B組金八先生 第5シリーズ』で連続ドラマ初出演以降、数多くのドラマに出演しヒットに導く。近作としては、『セカンド・ラブ』(15)、『怪盗山猫』(16)など多数。映画出演作品には、『ごくせん THE MOVIE』(09)、『映画 妖怪人間ベム』(12)、『俺俺』(13)、『バンクーバーの朝日』(14)、『ジョーカー・ゲーム』(15)などがある。2017年は本作のほか、『PとJK』(17)が公開中、ドラマ『ボク、運命の人です。』が放送中。

「面白いものを観たな」という感覚

――父子役で初共演とのことですが、まずはお互いの印象を教えてください。

リリー:単純に自分がもし親になって、亀梨くんみたいな息子がいたらいいなと思います。

亀梨:嬉しいですね。

リリー:すごくちゃんとしているんですよ。優しいし、男気があるし。

亀梨:今回お仕事させていただく以前に、プライベートでお会いする機会が1~2度あったんです。リリーさんって、圧倒的に"リリーさん"じゃないですか(笑)。お仕事でお会いする時もその雰囲気は変わらず存在感があって、現場で主役の立ち方がすごいな、と思いました。ナチュラルでいながら、強さを持ち合わせるというのはなかなか……僕にはまだまだできないことです。

リリー:亀梨くんは男らしい部分もあるし、目ヂカラが強い、初対面だと「強い人なのかな」と誤解されやすいのかもしれないけど、すごくいいお兄さんですよ。僕以外の先輩にも「あいつ元気かなあ」と思い出させる人なんですよね。あと、ちゃんと酔っぱらうところも信用できる(笑)。

亀梨:ちゃんと酔っちゃいますね(笑)。1回、P(山下智久)と飲んでいて、リリーさんのお知り合いのお店に2人で行こうと言ったんですが、2人とも酔っ払っているから全然お店の暗証番号が思い出せなくて、リリーさんに電話しました(笑)。

リリー:「お父さーん! お父さん!!」と電話が来て、「何があったんだ」と迎えに行ったらもう帰っちゃってた(笑)。

亀梨:本当に申し訳ないです(笑)。

――今回はかなり原作から翻案されている点もあり、かなり大胆な作品になっていると思いましたが、お二人は観た後にどう受けとられましたか?

リリー:取材をたくさん受けているんですが、この映画、しゃべればしゃべるほど、お客さんが来づらくなるんじゃないかと(笑)。あえて言うなら、感動するとか、泣けるとか、すごく笑えるとかではなく、映画を観た後に「面白いもの観たな」という感覚になる作品ですかね。

亀梨:「これだけを受け取ってほしい」という答えを提示してるものではないので、僕も監督に身を委ねて、やらせていただきました。僕は完成した作品を観たとき、すごく心拍数が上がったんですよ。脅される演出があるわけでもないのに、詰められているところもあり、映画との距離感がすごく面白かったというか。この感覚、DVDでも楽しんでもらえるとは思いますが、すごく映画館で観てもらうことを意識している作品だと思います。

リリー:それは本当にそうだよね。

亀梨:映画としての贅沢なものが、すごく詰まっているみたいな感覚がありましたよね。

リリー:「イケてるものを観た」みたいな感じだった。

亀梨:「俺、観たよ、『美しい星』」と得意げになってしまうみたいな。本当に。