昨今の猫ブームにより、さまざまな品種の猫が注目を浴びています。犬に比べて猫の品種はわかりづらく、少し前まではアメリカン・ショートヘア、スコティッシュ・フォールド、ペルシャぐらいしか一般的には知られておりませんでした。
しかし、昨年の0歳の品種別ランキング(アニコム 家庭どうぶつ白書2016)では3位にマンチカン、5位にノルウェイジャン・フォレスト・キャット、6位にブリティッシュ・ショートヘアが入っており、猫の品種も幅が出てきたように感じます。
新しく猫を飼いたいという方に「どの猫が一番飼いやすいですか?」と質問されますが、その時は「短毛の日本猫」と答えています。
日本猫には好発疾患がない
いくつかの品種には発生しやすい病気があります。そういった病気を好発疾患といいます。動物病院の問診票に必ず品種の項目があるのは、品種が病気を探すヒントになるからです。その点、日本猫には特になりやすい病気・好発疾患はありません。
また、原因はわかっていませんが、猫伝染性腹膜炎(FIP)などの病気は純血種で発生率が高いことがわかっています。猫伝染性腹膜炎は若い猫に発症する恐ろしい病気で、発症すると完治するのが非常に難しいです。
飼いやすさでいえば短毛
短毛種が飼いやすいことにも理由があります。メイン・クーンやサイベリアンなどの長毛猫のコートはもふもふで大変魅力的ですが、一方でお手入れが大変なことがあります。猫によっては、毎日ブラッシングを行わないと毛玉ができてしまいます。そして触られることが嫌いな猫の場合は、ブラッシングにも苦労します。
毛玉ができてもカットすればいいんでしょ、と甘くみてはいけません。毛玉が原因で皮膚病になってしまうこともありますし、全身毛玉まみれになって身動きが取れなくなってしまうこともあります。動く猫の毛玉を切るのは難しく、動物病院やトリミングサロンで定期的にカットしてもらう必要がでてくることもあります。
また、毛玉はお腹の中に溜まってしまうことがありあます。やはり長毛猫は短毛猫よりも毛玉を吐くことが多いようです。手術が必要になることは稀ですが、病気で吐いているのかそうでないのか、見極めが難しいのです。
オスかメスか
一方で猫の性別は、飼いやすさにそこまで影響しないと感じます。オスの方が社交的で活発で飼い主さん大好きな猫が多いです。しかし、人が好きなので一緒にいないと大きな声で鳴いたりしてしまうことがあり、その分しっかり遊んであげる必要があります。
メスはおとなしく、知的な猫が多いです。一方で警戒心が強い猫が多く、静かな環境を好むのでストレスを感じやすいことがあります。性別については、自身のライフスタイルや生活環境を考慮して選択するといいと思います。
まとめ
猫は手間がかからないペットといわれています。確かに犬に比べると散歩やしつけがない分は楽ですが、病気になったり問題行動をおこしたりすることはあります。
猫を飼いたいけど色々と不安、という方には、まずは短毛の日本猫をおすすめします。もちろん縁があって長毛の猫や純血種の猫を飼っている方は、その猫について調べより良い環境を用意し、お手入れをすれば猫も幸せに暮らせます。迷っている場合は猫を飼っている友人に色々と聞いてみるのもいいでしょう。
参考文献: HAIR BALLS IN CATS. A normal nuisance of a sign that something is wrong? Journal of Feline Medicine and Surgery (2013)15, 21-29
著者プロフィール: 山本宗伸
獣医師。猫の病院 Syu Syu CAT Clinic で副院長を務めた後、マンハッタン猫専門病院で研修を積み帰国。現在は猫専門動物病院 Tokyo Cat Specialistsの院長を務めている。ブログ nekopeidaも毎月更新中。