現在最も大きい猫種であるメインクーンは10kgを超えることもあります。ミックスのノラ猫でも大柄だと7kg台はそこまで珍しくありません。大きな猫のどっしりとした振る舞いや、自信に満ちた表情に憧れる方も多いでしょう。

ヒョウの体重が40kg程

しかし超大型犬のグレートピレネーズやグレートデンのように数十キロの猫はいません。40kgのグレートピレネーズを室内で飼っている方はいますが、猫で40kgというとヒョウと同じぐらいになります。動物園のヒョウのケージをイメージしてみると分かりやすいです。ヒョウを飼育するためには、立体的に配置された丸太や給水用の池などが必要ですが、これは普通の家では用意するのは難しいです。

友人のチワワ(ラビ 2.5kgピッポ 1.6kg)とグレートピレネーズ(フォルテ 40kg)。一般的な猫はチワワより1回り大きい程度。

ヒョウまで大きくなくても10~20kgのカラカルやサーバルキャットを飼っている方はしばしばいるようです。これらは特定動物に指定されおり、厳重な脱走防止措置を行った上で、都道府県知事の許可を得て飼育しています。人と暮らしているとはいえ、カラカルやサーバルキャットは野生動物なので、一度攻撃のスイッチが入ると非常に危険です。

大型犬のような大型猫はいないの?

野生のネコ科動物や大型種を掛け合わせれば大きな猫種が生まれると思いますが、通常サイズの猫でもまだまだ警戒心が強く、飼い主さん以外の人に攻撃的になる子がいるので危険だと感じます。

動物病院で働いていて、猫に一度も引っ掻かれたことがないという獣医師はいないと思います。猫のスピード、動体視力はプロボクサー以上で、それが大型になると人間には対処不可能でしょう。

友人の獣医師は実際にカラカルの診療をしたそうですが、病院で唸っているカラカルは体重すら測れなかったと嘆いていました。猫嫌いでなくても、数十kgの猫が脱走して塀の上に座っていたら怖いですよね。もし超大型猫がいても、特定動物と同様に脱走予防と許可が必要になるかもしれません。

まとめ

大型猫を飼うには動物園並みの施設が必要になるでしょう。同じ体重だからといって大型犬と一緒に考えるのは難しいです。猫は高い場所を好み、家の中でもジャンプを繰り返すでしょう。

また犬のように公園で運動不足を解消させることも難しいです。猫は犬よりも人間と生活してきた歴史が短いです。飼い主さんと一緒にいる時は大人しくても、慣れない人が近づくと攻撃的になる猫も少なくありません。猫パンチなら引っ掻き傷で済みますが、ヒョウのパンチを受けたら無事じゃ済まないでしょう。私もどちらかというと大柄な猫が好きですが、これ以上大型化すると一緒に暮らすのが大変になると思います。

■著者プロフィール
山本宗伸

獣医師。猫の病院 Syu Syu CAT Clinic で副院長を務めた後、マンハッタン猫専門病院で研修を積み帰国。現在は猫専門動物病院 Tokyo Cat Specialistsの院長を務めている。ブログ nekopeidaも毎月更新中。