「生理は28日周期でくるもの」――学校の保健体育でそのように習った覚えのある人は多いだろう。しかし、「私はそんなにきっちりこないけど……」と、どことなく不安を感じている人もいるのではないだろうか。そしてなかなか妊娠しなければ、それが原因と思うかもしれない。そこには何かしらの因果関係があるのだろうか。順天堂大学医学部附属練馬病院産婦人科長の荻島大貴先生にうかがった。
そもそも、生理不順は異常なの?
一般的に、"生理の周期がバラバラ"という状態は「月経不順」として定義されている。不順というと正常ではないような響きもあるが、「"きっちりとこない=異常"ではありません」と荻島先生は言う。
教科書的には、25~38日周期が月経の正常範囲とされている。しかし、その範囲外だからといって「異常だ! 」と悩むにはまだ早い。荻島先生は、「それよりも、確認すべきなのは"排卵されているかどうか"です」と話す。
生理があっても排卵していないという場合も
生理とは知っての通り、周期的に出血することだ。しかし、出血はあるが排卵されていない「無排卵周期症」という病気があるという。
まずは、正常な月経の流れを確認しよう。通常、子宮の中では受精卵を迎えるための内膜が作られている。内膜は日々厚くなり、受精卵が着床しなければ根こそぎはがれ落ち、経血として体外に排出される。その現象のキーとなるのが「黄体ホルモン」だ。
黄体ホルモンは、排卵が起こることによって出される。このホルモンには、内膜を「分泌期」という状態にキープする役割があるが、10~14日間を過ぎると一気に減少してしまう。すると、内膜は分泌期でいられなくなり、きれいにはがれ落ちていく。
つまり、排卵が起こらなければ黄体ホルモンは出されない。そうなると、内膜は分泌期になる前の「増殖期」のままどんどん厚くなってしまう。しかし、増え続けるといっても表面部分だけがはがれ落ちて排出されることがある。それが何となく周期的に起こると、まるで生理のように思えてしまうのだ。この場合、排卵されていないため、不妊となってしまう。
排卵の有無は自分でチェックできる
「なかなか妊娠しないし、もしかして排卵してないのかも? 」と不安になった場合、自分で排卵の有無をチェックできる方法がある。「基礎体温」の記録がそれだ。
ここでもキーとなるのは黄体ホルモンである。このホルモンは、体温を0.3度以上上昇させる働きがある。先ほど述べたように、黄体ホルモンは排卵することで出されるものであるから、体温の上昇が定期的に起きていれば排卵を確認できるというわけだ。基礎体温の測り方や記録の見方が分からなければ、産婦人科を訪れてみよう。
「月経不順=不妊症ということではありません。例えば40日周期でも、排卵していれば妊娠します。ただし、妊娠のチャンスという点では、28日周期であれば1年に12回のところが、40日周期では9回になります」と荻島先生は言う。また、基礎体温を毎日測るのは面倒くさい作業ではあるが、現在ではアプリなどと連動して、簡単に基礎体温を毎日記録できる体温計もある。
排卵障害には治療法も
基礎体温をつけてみて、排卵していないかもしれないと思ったら、病院を受診して原因を確かめたい。卵子はあるが排卵できない疾患に「多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)」があるという。これは無排卵周期症のひとつで、月経不順につながる病気だ。この場合、クロミフェンという排卵誘発剤を使ったり、腹腔鏡(ふくくうきょう)手術で治療することもできるとのこと。
荻島先生は、「人間は機械ではありませんから、いわゆる正常範囲という周期ではない人もいます。心配であれば基礎体温で確認し、病院を受診してみてください」と話す。一般的に正常な周期かどうかで悩むよりも、それが自分の身体にとって正しい周期であるかどうかを知ることが大切と言えるだろう。
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監修者プロフィール: 荻島 大貴
1994年順天堂大学医学部卒業、2000年同大学大学院卒業。現職 順天堂大学医学部付属練馬病院 産科婦人科診療科長・先任准教授。日本産科婦人科学会専門医・指導医、日本臨床細胞学会細胞診専門医、日本婦人科腫瘍学会専門医・指導医・評議委員、日本がん治療認定機構がん治療認定医、日本周産期・新生児学会周産期専門医、母体保護法指定医。練馬区を中心として城西地区の婦人科がんの診療と周産期医療を行っている。
筆者プロフィール: 木口 マリ
執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。旅に出る度になぜかいろいろな国の友人が増え、街を歩けばお年寄りが寄ってくる体質を持つ。現在は旅・街・いきものを中心として活動。自身のがん治療体験を時にマジメに、時にユーモラスにつづったブログ「ハッピーな療養生活のススメ」も絶賛公開中。