正常な生理と生理不順の原因を知る

生理の期間や周期、経血の量に悩みはありませんか?

生理の期間や周期が長すぎる、短すぎる、周期が毎回バラバラで安定しない……。こうした症状を「生理不順(月経不順)」といいます。安定していた生理が乱れると不安になるものですが、なぜ生理不順がよくないのかと聞かれたら、ちゃんと答えられる人は少ないのではないでしょうか?

そこで今回は、生理不順の種類や原因、体への影響についてお話しします。

正常な生理とは?

正常な生理は、個人差があるものの期間は4~7日間となる

一般的に生理は、12歳前後で始まって50歳前後で閉経するまで、一定の周期で繰り返されます。個人差はありますが、出血が持続する期間は4~7日間、周期は25~38日が正常範囲とされています。

また、生理期間中に出る月経血の総量は、20~140ml程度といわれており、通常は、生理初日から2日目までは量が多く、3日目からは少なくなります。量が多めだとしても、2日目くらいまで、昼間2時間ごとにナプキンを交換する程度であれば、正常な範囲といえるでしょう。

生理の期間や周期、血液の量が、上で述べた正常な範囲から外れる場合、生理不順の可能性があります。

主な生理不順の種類

次に、生理不順の種類別に、考えられる原因を説明します。

・過長月経、過多月経
生理が8日以上続くことを「過長(かちょう)月経」といいます。過長月経には主に2種類あり、出血量が正常より多い「過多(かた)月経」になっているために生理が長引くパターンと、出血量は少ないのにダラダラ生理が続くパターンがあります。

過多月経になっているために期間も長くなっているという場合は、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮がんなど、子宮の病気が原因となっている可能性が考えられます。経血の量の多さを自分で判断するのは難しいことですが、昼間、ナプキンを1時間に1回以上替えなければならないほど出血が多い状態なら、過多月経が疑われます。

・過短月経、過少月経
生理が2日以内で終わってしまうことを「過短(かたん)月経」、生理2日目でもナプキンを交換する必要がないほど経血の量が少ないことを「過少(かしょう)月経」といいます。主な原因としては、子宮の発育不全、ホルモン分泌の異常のほか、ストレスや不規則な生活によりホルモンバランスが乱れ、「無排卵性月経」になっていることが考えられます。無排卵性月経とは、生理は来ていても排卵を伴っていない状態のことです。

一方、生理の終わりかけのような中途半端な出血だけが長く続く場合も、卵巣や脳の視床下部、脳下垂体などホルモン分泌に関わる器官がうまく働かず、無排卵性月経になっている可能性があります。排卵がないと、ホルモンの分泌にメリハリがなくなるため、少量の出血がダラダラ続くパターンになりやすいのです。無排卵性月経の大きな原因は、ホルモンバランスの乱れですが、多くの場合、ストレスや睡眠不足、生活リズムの乱れ、無理なダイエットなどが関係しています。

・稀発月経
生理周期が39日より長く、生理がたまにしか来ないことを「稀発(きはつ)月経」といいます。原因は、ホルモンバランスの乱れや、卵巣や脳下垂体の機能低下、精神的ストレスなど。排卵がある場合もありますが、無排卵性月経になっている場合もあります。

・頻発月経
生理周期が24日より短く、生理が頻繁に来ることを「頻発(ひんぱつ)月経」といいます。原因としては、ホルモンバランスの乱れ、卵巣の機能低下のほか、黄体ホルモンの分泌が不足し、子宮内膜が十分に成熟できなくなる「黄体機能不全」の可能性もあります。また、子宮内膜ポリープや悪性疾患などが頻発月経と自覚されていることもあるので、注意が必要です。

放置しておくと不妊になることも

生理不順の原因としてもっとも多いのはストレスによるホルモンバランスの乱れだという

さまざまなケースや原因を紹介しましたが、生理不順の原因としてもっとも多いものは、ストレスによるホルモンバランスの乱れだと考えられています。女性の生理のメカニズムは複雑なので、体や心に少しでも負担がかかると影響が出やすいのです。ホルモンバランスの乱れや生理不順を長い間放置しておくと、将来、妊娠しにくくなるほか、若年性更年期障害や早発閉経になる可能性もあります。

また、子宮や卵巣の病気のサインとして生理不順が起こっている場合は、放置すると病気が進行し、さらに症状がひどくなる恐れがあります。もちろん、妊娠が難しくなることもあります。

「よくあることだから」と生理不順を放置するのはよくありません。健康のためにも、将来の妊娠・出産のためにも、生理周期の乱れや気になる症状があれば、早めに婦人科で相談するようにしましょう。

※画像は本文と関係ありません


記事監修: 鈴木俊治 医師

葛飾赤十字産院 副院長
日本産婦人科医会 副幹事長
1988年長崎大学医学部卒業、日本医科大学付属病院産科婦人科学教室入局、葛飾赤十字産院産婦人科派遣をへて米国ロマリンダ大学胎児生理学教室へ研究留学。帰国後、日本医科大学産科婦人科学講師、学助教授、東京臨海病院産婦人科部長を経て、現在は葛飾赤十字産院にて副院長を務める。