JR北海道は21日、日高本線鵡川~様似間の復旧を断念せざるをえないとの結論に至り、沿線自治体へ説明を行ったと発表した。今後はバスなどによる代替交通をはじめとした新たな交通体系の確立、さらなる地域振興への支援について協議を開始する。

日高本線は現在、苫小牧~鵡川間のみ列車の運転が行われている

日高本線鵡川~様似間(営業キロ116.0km)は高波被害により、2017年1月から不通に。復旧とその後の持続可能な運営のあり方について、「JR日高線検討会議」「JR日高線沿線自治体協議会」などの場で協議を行ってきた。同区間の復旧費は約86億円にのぼると試算され、海岸侵食対策に必要な離岸堤の整備も含めると、総額100億円を超えるという。

JR北海道は同区間を持続的に維持するために必要な収支差額・土木構造物老朽対策の単年度費用を16.4億円としており、これを単独では負担できないとし、うち13.4億円(列車運行に関わる経費相当額を差し引いた額)について上下分離方式の導入または地元自治体による費用支援を提案。しかし「受け入れは困難とのご回答を頂き、復旧の前提である『鉄道を持続的に維持する仕組み』が合意に至らなかった」と説明している。

加えてモータリゼーションの進展や沿線人口・高校通学者の減少なども影響し、2014年度の輸送密度は186人、収支状況も年間約11億円の赤字に。沿線では高規格幹線道路の日高自動車道が2017年度に厚賀IC(仮称)まで延伸予定で、静内IC(仮称)まで事業区間とされていることから、鉄道のさらなる利用減が想定されるという。

これらの理由をもとに、復旧断念の結論に至ったとJR北海道。沿線自治体との協議開始にあたり、「国・道・町が補助するバス路線への、町負担分の一定程度の支援」「列車運行時と同等以上のバス運行便数を確保するための支援」「定期差額運賃の一定期間の補填」「鉄道公園等の駅舎周辺整備への協力」「鉄道用地を活用して行う地域振興のための整備費用の一部補填」などの内容で、「皆様のご意見を充分に反映し、できうる限りの協力をすべく、協議を進めていきたい」としている。

なお、復旧断念した区間のうち鵡川~日高門別間に関して、日高町長からの要望を受け、復旧・維持費の試算を別途回答するとJR北海道は発表している。