北米で稼ぐスバルのビジネスモデル

スバルの業績向上と高い収益力を支えるのは、ひとえに北米での成功だ。いま、スバル車は北米で売れに売れており、供給が間に合わない状況が続いている。いわゆる“タマ不足”である。

それでは、なぜ北米でそんなにスバル車が人気で、売れるのか。一言でいえば、スバルの経営における「選択と集中」の賜物であろう。北米でのスバル車は、もともと雪の多い地域や山間地域など四輪駆動技術で人気はあったが、それは地域限定的なものだった。

中国戦略がままならない中、スバルはグローバル戦略において、北米にリソースを集中させて重点展開していった。主力車レガシィのサイズアップやスバル車の走りと安全性(技術力)の全米訴求、米国販売統括会社スバルオブアメリカ(SOA)主導による全米ディーラーのイメージアップ作戦など、ブランド力向上を積極的に進めたのである。

結果として、スバル車はインセンティブ(販売奨励金)が少なくても売れるようになり、収益性も高まっていった。前期のスバル車北米販売は58万3,000台で過去最高となり、グローバル販売95万8,000台の6割を占めるに至った。さらに今期(2016年4月~2017年3月)は、北米で66万2,000台と過去最高を更新する予定。北米での売れ行きがドライバーとなり、スバルの今期グローバル販売は同社初の100万台超えとなる106万2,000台を見通す。

北米生産も増強する。現地Subaru of Indiana Automotive, Inc.(SIA)工場では、7月から旧カムリラインでスバル車(アウトバック)の本格生産を開始。さらに11月からは、北米向けインプレッサ生産を米国に移管して生産能力を引き上げた。これにより、北米現地生産は年間39万4,000台へとほぼ倍増し、2018年度には43万6,000台に増えるという。

米国工場での本格生産が始まっている「アウトバック」

米国でビジネスモデルを守っていけるか

トランプ政権の誕生を控える米国では、メキシコがらみの北米自由貿易協定(NAFTA)の動向や経済政策に関心が集まっている。自動車市場のピークアウトも懸念材料だ。その中にあって、スバルは現地生産の増強でこれまでの需給ギャップを埋める流れを作った。吉永社長は「確かに米国市場のピークアウトや各社のインセンティブ積み増しなど楽観はできない。ただし、スバルのタマ不足は全需に支えられたのではなく、スバル車自体の伸びによるもの。(SIA増強で)現地の供給が改善され、販売店は存分に売れることになる。ただ、これからはその“舵取り”が大事になる」という。

つまり、北米で培ったスバルのビジネスモデルをいかに守っていけるかが大事だということを強調する。“北米一本足打法”といわれようが、スバルとしてはブランド力を磨き、インセンティブ競争に陥ることなく、品薄程度で高い台当たり利益をキープしていくことが生きる道ということだろう。