不妊治療は3ステップ

田口先生: 不妊治療は3つしかないです。「タイミング法」「人工授精」「体外受精」です。タイミング法は排卵日に性交渉をもちましょう、というだけなので自分ででもできます。そのため、ハードルとしてはそれほど高くないと思います。それでも妊娠できなかったらステップアップするか、という選択になります。最近では、ひとり目は自然に妊娠したけれど、なかなかふたり目ができないということで、不妊治療をされる方もいます。

「タイミング法」は自分でもできる

田口先生: 人工授精は子宮の中に精子を入れるだけで、その先は何が起こっているかは分かりません。体外受精は受精して分割が進んだ段階で子宮に着床させるので、妊娠率が全然違ってきます。もちろん、体外受精になればかなり高額にはなりますが、年齢とともに妊娠率が確実に低下することを考えると、早めにステップアップした方がいいことも多いです。検査で異常なく、自然にできる可能性があるとなると先延ばしになりやすいですが、そこは割り切ることが必要でしょう。

―不妊治療のクリニックを訪れる人は女性だけ、パートナーと一緒、男性だけ、どのケースが多いでしょうか。

田口先生: 基本的に女性だけということが多いですが、精子検査の場合は、男性に訪問をうながすことになりますね。ただし、その検査を拒否する男性は多いです。「もし精子がなかったら」と考えると、アイデンティティーが脅かされると感じる方も少なくないです。現代では、スマホのアプリで精子検査をすることもできるようなので、まずはそれを試してみるのもいいでしょうね。

―不妊治療のクリニックでも、婦人科で行っているような一般的な検査にも対応してとのことですが、例えば子宮筋腫があると言われた場合、筋腫を摘出すると妊孕性にも影響するんでしょうか。

田口先生: 子宮筋腫がある人は筋腫の芽になるものをもっているので、単発でできることは少なく、複数あることが多いです。筋腫がある場所と大きさによっては妊娠しにくい人もいますので摘出することが必要になりますが、だからと言って妊娠ができないというわけではないです。

子宮筋腫にしろ子宮内膜症にしろ、何かしら婦人科的な疾患があった場合、婦人科では妊孕性までサポートしてくれないこともあると思います。婦人科の先生と不妊治療の先生では考え方が違うことも多いです。病気を治し再発を食い止めるのことが婦人科の役割ですが、再発してもできるだけ妊孕性を残すことが不妊治療の役割です。婦人科に行く時は、妊娠を希望していることを伝えるようにしましょう。

婦人科にかかる時は自分の希望もしっかり伝える

平均初産が30歳を超えている今、考えるべきこと

―いろいろなライフスタイルがある現代社会において、「いつかは妊娠したいけれど今はその時ではないのでは」と悩んでいる人も多いと思います。そうした人々に何かアドバイスをするとしたらどんなことでしょうか。

田口先生: 現代では、妊娠がなかなかできない年齢で結婚する人も少なくないですよね。先ほど、1個排卵した卵子が赤ちゃんになる確率を、20代の場合は18%くらい、35歳の場合は9%くらい、40歳の場合は5%と言いましたが、平均初産年齢が30歳を超えている現状は、そうした人間のつくりにあっていません。なら、10代~20代前半で子どもをうむ、ということができるかというと、それも難しいのが現状です。

例えばですが、これだけ医療が発達している時代ですので、受精卵を凍結させておいてから自然での妊娠を考える、結婚をしていない人でも卵子凍結をする、という"保険"もひとつの考えだと思います。妊活は気合いだけでできることではないですし、パートナーとうまくコミュニケーションをしていくことが欠かせません。自分が今後、どのような人生を歩んで生きたいのかをよく考え、いろんな方法を考えてみるといいと思います。

※写真はイメージで本文とは関係ありません

プロフィール: 田口早桐

産婦人科医。生殖医療専門医。1965年大阪市生まれ。1990年川崎医科大学卒業後、兵庫医科大学大学院にて、抗精子抗体による不妊症について研究。兵庫医科大学病院、府中病院を経て、大阪・東京で展開する「医療法人オーク会」にて、不妊治療を専門に診療にあたっている。国際学術誌への投稿、国内外学会での研究発表を数多く行う。近著に『ポジティブ妊活7つのルール』(主婦の友社)あり。