ミシュランガイドに載った店を訪れることは海外旅行の楽しみの1つだが、星がついているような高級レストランにはおいそれと行けるものではない。しかし、香港・マカオのミシュランガイドには「ストリートフード部門」という、財布に優しいカテゴリーがあるのをご存じだろうか。今回は、そんな中でも老若男女に人気な「エッグパフ」の名店を紹介しよう。

香港で"激安ミシュラングルメ"を楽しもう

ミシュランに載ったエッグパフ

「エッグパフ(egg puff)」は「鶏蛋仔(ガイダンジャイ)」とも呼ばれ、香港ではポピュラーなストリートフードだ。卵と小麦粉でできたワッフルのような甘い生地のおかしで、丸い房が板状に連なった形が特徴的。都市部でも手軽に手に入り、日本の食べ物で例えるならば、縁日のベビーカステラと路面店のクレープの中間的な存在といったところだろうか。

これがエッグパフ。正確な作り方は違うが、"たこ焼き器で焼いた羽根つきワッフル"といった見た目だ

そして、ミシュランガイドの「ストリートフード部門」に掲載されたエッグパフの専門店が、九龍半島で最もにぎわう商業地域・尖沙咀(チムサーチョイ)にある「Mammy Pancake(マミーパンケーキ)」だ。商品引き渡しのカウンターのみのコンパクトな店舗で、面する歩道はエッグパフの受け渡しを待つ人であふれていた。

香港・マカオのミシュランガイド「ストリートフード部門」に掲載された「Mammy Pancake(マミーパンケーキ)」

全10種類を販売

同店が販売しているエッグパフのバリエーションは全10種類。16香港ドル(以下、HKD・約208円)のオリジナルフレーバーを基本として、20HKD(約260円)のチョコレートチップ、22HKD(約286円)の抹茶、30HKD(約390円)のチーズなどがある。

筆者はオリジナルフレーバーとチョコレートチップを購入。人気のため10分ほど待ったが、紙袋に入ったできたてアツアツのエッグパフを手渡してもらうと、10分ばかりの待ち時間などどうでもよくなる。

できたてを紙袋に入れて提供。右がオリジナルフレーバー(16HKD・約208円)、左がチョコレートチップ(22HKD・約286円)。左手が2つ映っているのは同行者に持ってもらったからだ

ちぎって食べるのが(多分)今風!

そのままかぶりついてもいいのだが、店頭のテレビで流れているテレビ番組では、香港の女性タレントが同店のエッグパフを一口サイズにちぎって食べていた。おそらくはこれが香港で最先端の食べ方なのである。筆者もそれにならうと、房状になったエッグパフの生地は簡単にちぎれてちょっと楽しい。オリジナルフレーバーをひょいと口に入れると、ほんのりとした甘味と共に、焼き立ての香ばしい香りがいっぱいに広がった。

一口サイズに簡単にちぎれる。割と満腹でも不思議とどんどん食べてしまうので注意してほしい

筆者はコツをつかんで2個ずつちぎれるようになった

生地は、表面はカリッと、中はふんわりと仕上がっており、見た目よりも食べごたえがある。しかし味はあっさりとしていて甘さもしつこくないため、持っている限りついついもう片方の手が伸びてしまうような一品だ。

続いてはチョコレートチップを一口。チョコレートは生地の中でトロッと溶けて、濃厚でなめらかな口当たりだ。当たり前だが、オリジナルフレーバーよりも甘い。飲み物なしでもさくさく食べられてしまうオリジナルフレーバーに対して、こちらはコーヒーや紅茶が進みそうな味わいだ。

チョコチップは温かい生地の中でとろけていた

街になじめる気軽さが魅力

エッグパフを手に持って尖沙咀の街を歩く。人口密度は東京の繁華街並み。あちこちに車が路上駐車していてちょっと歩きにくいが、そんな煩雑さも不思議と心地いい。

この心地よさは、たぶん手に持っているエッグパフのおかげなのだ。ついさっきまでソワソワと落ち着きなかった自分が、地元民にも人気のストリートフードを持っているだけで、なんだか香港という地に認められたような気分になる。尖沙咀の景色に溶け込んでいるような気がしてくる。

東京よりほんの少しだけカオスな香港の街並み。エッグパフを手に歩くと不思議とわくわくするのはなぜだろう

ヒョイヒョイとものの5分ほどで食べ終わったあと、手持ち無沙汰な1人の観光客に戻ってしまった自分に少しだけ寂しい気持ちを覚えた。たぶん、次にくることがあればまた買ってしまうだろう。今度は抹茶味にしよう。そう思った。

※日本円換算は1香港ドル=13円で計算。記事中の情報・価格は2016年10月取材時のもの

取材協力: 香港政府観光局