トキシックショック症候群(TSS)の症状と対策は?

働く女性の中には、生理のときにタンポンを愛用している人も多いのではないでしょうか。タンポンには、もれる心配が少ない、ズレを気にせず動き回れる、ナプキンのようにムレやかぶれが起こる心配がないといったメリットがあります。

一方で、長時間使用や取り出し忘れなどが主な原因と考えられている「トキシックショック症候群」には、くれぐれも注意する必要があります。

トキシックショック症候群とは?

トキシックショック症候群(以下TSS)とは、黄色ブドウ球菌が原因で引き起こされる病気のことです。黄色ブドウ球菌は、私たちの皮ふや脇の下、鼻の穴、膣などにもよくいるバクテリアの一種。通常はトラブルを起こすことはないのですが、ごくまれにバクテリアの一部が毒素を出す場合があります。

TSSは、その毒素が体内の血液中に入り込むことで発症します。主な症状は、急な発熱、吐き気、日焼けのような発疹、目や口が赤くなる、筋肉痛、めまい、下痢など。これらの症状を放置すると、血圧が低下し、失神または失神に近いショック状態に陥ることがあります。

女性がタンポンを使用する際に、不潔な手で装着したり、長時間入れっぱなしにしたり、出し忘れたりすると、黄色ブドウ球菌が増殖して、TSSの原因となる毒素を出しやすくなると考えられています。まれにしか起こらない病気とはいえ、発症すると、重とくな症状が出る場合もあれば、時には死に至ることも。タンポンを使う女性は特に注意が必要です。

虫さされから起こる場合もある!?

タンポンを使用している女性が発症する例が多いことから、別名「タンポンショック」とも呼ばれるTSSですが、実は、タンポンを使っている女性だけがなるわけではありません。例えば、火傷(やけど)や虫さされ、外科手術などがきっかけとなって、男性や子どもなど、誰でもなる可能性があります。ただ、TSSを引き起こす毒素に対する抗体は年齢とともに増加するため、年齢が若いほどリスクが高いといえるでしょう。

タンポンは定期的に交換し、ナプキンと併用を

TSSを予防するには、タンポンの説明書に記載されている使用時間を守り、定期的に交換することが何より重要です。使用時間の限度は商品や経血量によっても異なりますが、長くても8時間に1度は必ず交換を。くれぐれも入れっぱなしにして忘れることのないようにしてください。加えて、タンポンを使う前には、必ず手を洗いましょう。なお生理中は、ずっとタンポンを使うのではなく、自宅で過ごすときや寝るときなどにはナプキンも使うようにすると、TSSの発症リスクを下げることができます。

最後に、タンポンをちゃんと外したつもりでも、一部が腟内に残っている可能性もあります。時には、残ったタンポンが原因で細菌が繁殖して、デリケートゾーンから悪臭がする場合も。タンポンを使用していて抜けなくなったとき、TSSと思われる症状があるときのほか、悪臭を感じるときは、速やかに婦人科、産婦人科などの医療機関を受診しましょう。

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記事監修: 鈴木俊治 医師

葛飾赤十字産院 副院長
日本産婦人科医会 副幹事長
1988年長崎大学医学部卒業、日本医科大学付属病院産科婦人科学教室入局、葛飾赤十字産院産婦人科派遣をへて米国ロマリンダ大学胎児生理学教室へ研究留学。帰国後、日本医科大学産科婦人科学講師、学助教授、東京臨海病院産婦人科部長を経て、現在は葛飾赤十字産院にて副院長を務める。