「ミニマリスト」と呼ばれる人々がいる。持ち物を減らし、必要最小限の物で暮らす生き方の実践者だ。カナダ在住の筆子さん(H.N.)もその1人。自身のブログ「筆子ジャーナル」は『1週間で8割捨てる技術』として書籍化し、今もモノの減らし方を多くの人に発信している。今回は筆子さんに、上手な衣替えの仕方を聞いた。

インタビューイプロフィール: 筆子(ふでこ)

1959年生まれの節約系主婦ミニマリスト。付録やおまけが大好きなのに、もったいなくて使えない貧乏性だったが、20代後半のある日、ためこみすぎた物にうんざりしてシンプルライフに目覚める。
OL、派遣社員を経て1996年、37歳のとき単身カナダに留学。以後カナダ在住。モノが増えるプチリバウンドを経験しつつも、ついにシンプルライフを実現。2015年2月、ブログ『筆子ジャーナル』を開設し、持たない暮らしを発信中。

かつては300着以上の服を持っていた

――もうすぐ衣替えの季節ですが、筆子さんは現在何着の服で生活していますか?

今は14着の服で暮らしています。

――14着! 最も多いときで何着くらいの服を持っていたのですか?

数えていませんが、300~400着ぐらいでしょうか。

――20分の1未満になるまで服を減らされたのですね。14着の服にたどり着くまで、どれくらいかかりましたか?

そうですね。年数にすると30年ほどなのですが、何も30年間ずっと捨て続けていたわけではありません(笑)。

大きく減ったのは、カナダに移った1996年です。ほとんどすべての服を実家に置いてきたので、この段階でかなり減りましたね。その後、増えたりもしましたが、最終的に、2015年には14着になりました。

――現在持っている14着の服のうち、春夏・秋冬服の比率はどれくらいですか?

秋冬ものは、
・セーター
・ダウンジャケット
・中綿パンツ
・フリースのパーカ
・長袖のトップス×2
の6着なので、全体の約42%になります。ですが、私の住んでいるところは春もけっこう寒いので、フリースのパーカや長袖のトップスは通年のアイテムとも言えます。すると、純然たる秋冬モノは3着で、約20%です。

……とは言え、夏でも雪がふることもありますし、ダウンジャケット以外はすべて通年アイテムと言えるかもしれないですね。スパッツは年中はいているし、半袖のTシャツは冬はインナーとして着ています。

捨てる基準は"着ているかどうか"のみ

――『1週間で8割捨てる技術』によると、その人にとって本当に必要な服は全体の2割、とのことでしたが、その2割を見極めるために必要なことを教えてください

シンプルに、「実際に自分が着ているかどうか」です。

――ということは、気に入っていても着ていないものは捨てるべきですね。デザインが好きで捨てづらいものも手放した方がいいでしょうか?

そうですね、手放したほうがいいと思います。着ていないものは捨ててしまいましょう。デザインが好きでも、着ていないなら、着ない理由がほかにあると思います。

たとえば
・サイズがきついとか、布地がチクチクするとか、着用感が悪い
・ほかに同様の用途のアイテムがある
・合わせにくい色である
・着ていく場所がない
こんな理由から、だんだん着なくなってしまうのではないでしょうか?

デザインが好き、という理由だけで服を買っていたら、お金がいくらあっても足りませんよね。ならばいっそ、服は実用品と捉えるのもひとつの考え方ではないでしょうか。

――服や靴、アクセサリーなどを捨てるとき、初めに着手すべきアイテムがあれば教えてください

まず、買っても開封していないものは捨てましょう。服、靴に関しては、ここ1年着用していないものを目安にするといいと思います。ただし、季節物や特別なオケージョン用のものは除きます。アクセサリーについても、ここ1年着用していないものをまず捨てるといいでしょう。

9月は春夏服を処分して

――日本では9月に春夏服→秋冬服の衣替えを行うことが多いですが、春夏服と秋冬服のどちらに着手したほうが捨てやすいでしょうか?

9月の衣替えでは、春夏服を捨てるほうが理にかなっています。この春夏に着なかった服を捨てればいいので、秋冬の服を捨てるより簡単なのではないでしょうか。春の衣替えではこの逆です。

――逆に、このタイミングで秋冬物を処分するチャンスがあるとすれば、どんな心がけで衣替えを行うといいでしょうか

この場合も、去年の秋冬には着なかった服、今年の秋冬はもう着ないな、と思う服を捨てるといいと思います。

捨てるアイテムの目安は先ほどもお話しましたが、ほかには、
・やたらと似たようなアイテムがたくさんある服
・難が出ているのにずっと修繕せず、ここまで来てしまった服
・今の気分にフィットしていない服
も捨てるといいですね。

着るかもしれない"いつか"はこない

――思い出の詰まった服や、着ていないが捨てにくいものとはどう向き合えばいいでしょうか

捨てにくい気持ちはわかりますが、思い出は心の中にあり、物の中にはありません。思い出すきっかけが欲しいだけなのだから、思い出の服は写真をとっておいて、きっかけだけを残すようにすればいいと思います。

――なるほど。それでは、逆に「いつか痩せたら着たい!」と思っているものは捨てるべきなのでしょうか?

もちろん、これも捨てた方がいいですね。だって、今着ていないのですから。

いつか痩せたい、という「いつか」は、こないものと考えてください。痩せるのに何年かかるかわかりませんから。「いつか痩せたら着たい服」は、痩せたときの自分にサイズは合っているかもしれませんが、雰囲気が合わない、ということは充分ありうることです。いつくるかわからない未来より、今を楽しく過ごすほうがいいのでは? と私は思っています。

それに、その服を捨てても「痩せよう」という意志はなくなりません。痩せたら、その時にサイズの合う服を買えばいいでしょう。その方が、気持ちよく服を着られるはずです。

――「迷ったら捨てる」という心がけも大事ですね。ありがとうございました。

「1週間で8割捨てる技術」(1300円・税別/KADOKAWA)

30年以上試行錯誤して、モノではなく自分が主役の部屋を手に入れたという筆子さんの体験と、ブログの読者の意見や感想を体系化した「捨てる技術」を盛り込んだ本。全体の8割のことは2割の要素が握っているという「パレートの法則」をベースに、所持品の8割を捨てられる人になるための具体的、実践的ノウハウを集めています。