民営化の本旨が問われる北海道と福岡

6月28日、新千歳空港を運営している北海道空港は2016年末をめどに会社を分割することを発表した。空港運営を行う空港事業会社を切り離し、新たに設立する持株会社兼関連事業運営会社の100%子会社にするとしている。

新千歳を運営している北海道空港は、土産物売上は全国ナンバーワンという旺盛な商業需要を背景に黒字経営を続けている

各社報道によると、この会社分割はこの後、自治体の持つ株式を民間に売却させ、「持株会社が純民間の新たな空港運営権者として応募することを可能にする」ための措置という。「3セクは空港運営に応募できない」という従来の国交省方針と、それを形骸化させようとする空港会社側の思惑が交錯しているわけだ。

北海道の民営化においては、道内複数空港との一括民営化方針が国から示されているが、現実的には新千歳での商業部門を含む収益で、道内内部補助によって経営安定を図るという思惑だろう。これに対し、現・北海道空港にすれば、関空・伊丹や仙台の民営化において空港会社は新運営権者の支配下に入り、旧経営陣は退出させられたことに大きな危機感を持ったと思われる。しかし、同ケースにおいては「空港会社(現経営陣)の主権存続」と「民営化による空港経営の改革」は真逆の方向にあると筆者は考えるがどうだろうか。

福岡の民営化プロセスにおいて、2015年国交省は「経営権取得のビッドにおいて第三セクターの参加は認めない」との方針を打ち出した。各種のリアルな事業情報や選考過程での忖度(そんたく)などを考慮し、選考の透明性を保つための方針と言える。これにより、福岡は新経営権者の元で新たな再出発を図るものと思われたが、実際は新千歳と同様の「空港会社の形態、資本構成を変えることで応募を可能とする」動きが福岡にも出てきていると言われている。

それを裏付けるかのように、最近国が公表した福岡のマーケットサウンディングに関する資料では、「空港会社が自治体資本を排除し、一定条件を満たせば経営権取得に応募できる」という項目が追加された。国の方針に示された「3セク(=空港ビル)は経営権取得に参加できない」を遵守したとしても、現空港ビルの出資者である県・市はSPCへの出資(想定議論上は10~20%)が可能で、最終的には選考を勝ち抜いたSPCの経営に関与でき、空港会社社員の雇用も現状に沿って確保される。なぜ現空港会社の応募資格を"実質的"に復活させることになったのか、筆者は疑問を感じる。

求められる透明性の高い評価プロセス

北海道、福岡での今後のポイントは自治体の適切な関与であろう。福岡においてはビッドを勝ち抜いた優先交渉権者のSPCに県・市が出資することを認めており、福岡市は不参画、福岡県は参画方針を示している。県が参画の意思を表明した背景には、滑走路増設後も長期的には需要に見合う十分な空港容量の増加が見込めない中で、北九州・佐賀空港との空港運営の連携性を考えようとする県の思惑があると思われる。

また、北海道においては新千歳だけが突出して拡大強化がなされることの問題を考慮し、他の国管理空港である函館、釧路、稚内、そして道・市管理空港である帯広、旭川、女満別をどのように取りまとめ、一体性のある空港運営を実現するかが重要となっている。これを側面から支え、必要な調整を行っていく上で、北海道の関与は不可欠と言える。新経営権者には自治体と目線を合わせ、北海道全体の空港の発展をどう実現するかという、公益の視点を持って行動することが求められる。

福岡では七社会グループと呼ばれる地元企業が影響力をもっているという背景がある

他方、福岡では「地元連合」が強い影響力を持って民営化プロセスに関わっている。現空港ビルの応募スキームに地元財界の中軸である七社会グループ(九州電力、福岡銀行、西部ガス、西日本鉄道、西日本銀行、福岡シティ銀行、九電工)が乗ってしまえば、県外からの応募企業が独自構想を掲げて参入するのは難しいのが実情だ。地元連合が割れない限り、複数のコンソーシアムが選考で競い合う形にはなりにくいと思われているのが現実である。

新千歳に関しては、現・北海道空港が術策を用いてビッドに参加したとしても、福岡のような強力な地元連合がない。そのため、地元(空港会社)に対抗して独自にビッドに参画する企業・コンソーシアムが複数登場しても、十分勝機があると考えられる。

その意味で、最終的に選考プロセスにおいてどれだけ透明性の高い評価がなされるか、その評点設定の合理性があるのかは、どの空港ケースであっても厳しく問われるだろう。実際、羽田空港の国際線隣接地区PFIでは、事業企画で最低評価の応募者が抜きんでた高額でビッドし、この価格評価点だけで選考をひっくり返したことは、今後の評価ルール設定の重要性を再認識させた。公正な選考の推進役として、また行司役としての国交省当局の積極的な関与が期待され、問われるところである。

筆者プロフィール: 武藤康史

航空ビジネスアドバイザー。大手エアラインから独立してスターフライヤーを創業。30年以上におよぶ航空会社経験をもとに、業界の異端児とも呼ばれる独自の経営感覚で国内外のアビエーション関係のビジネス創造を手がける。「航空業界をより経営目線で知り、理解してもらう」ことを目指し、航空ビジネスのコメンテーターとしても活躍している。スターフライヤー創業時のはなしは「航空会社のつくりかた」を参照。