営業マンは商品の「すごい」ところを知ることが不可欠!

――では、「自分の言葉」が効果を発揮するシーンを具体的に教えてください。例えば、営業マンが、自分の意図を伝えて相手の心を動かすにはどうすればいいでしょうか。

営業トークでは、自分が好きな商品を売ってるかどうかが大前提です。僕はインターネット広告の営業を始めたとき、じつは「これをやって何の意味があるの?」って思ってしまってたんです。だからなかなか売れなかったし、売れるテクニックみたいな方に走っちゃいました。何がいけなかったのかというと、押し売りでもなんでもなく、お客さんとして毎月何百万とか何千万円というお金を払ってくれてる会社が実際にあるのに、その人たちがどこを評価してくれてるのかを全然知ろうともしなかったんですよね。テレビでも、ラジオでも、雑誌でもなくインターネット広告を選んで使っている理由があるはずなのに、そこに全然目を向けていなかった。

木暮太一さん「営業トークでは、自分が好きな商品を売ってるかどうかが大前提」

今でも衝撃的なこととして覚えてるんですけど、僕のチームで某企業を担当してネット広告を売りに行ったときに、社長が開口一番「ネット広告安いね!」って言ったんですよ。そんなこと言われたことないからビックリしちゃったんですが、「や……安いんです! だからテレビよりもいいんです~!」って言うしかない(笑)。そうしたら、「じゃあネットにしようよ」という社長の鶴の一声で、それから結構お金を出してくれるようになったんです。そんな風に思ってくれる人がいることを、ちゃんと分かってないといけないですよね。

別の会社にいたときも、僕はそこの製品をちゃんと使ってなかったんですよ。社内の倉庫にある商品を半ば自由に使ってよかったので、自分でお金を出して買ったことがなかった。そうなると、真剣に考えなくなるし、全然おもしろくなくて良さも分からなくなっちゃうんです。でも、なんでもそうですよね。自分で使ってみればどこか「あ、これはいいんじゃないの?」「ここはすごいかもしれない」っていうポイントが見つかる。そこを教えてあげて、「これ、すごいね」と共感してくれそうな相手にだけ営業に行くんですよ。もちろん、そうじゃなくても行かなきゃいけないケースもあるかもしれないけど、 そういう人を探しましょう。

雑談に必要なのはネタの多さではなく「理由」

――では、雑談をするというシーンではいかがでしょう?

よく、「雑談が得意になるためには、いろいろ情報を仕入れましょう」などと書いてある本がたくさんありますが、実はそこじゃないんですよね。確かにまったくネタがなかったらダメなんですけど、雑談が苦手なのはネタがないからじゃなく、なぜ今その話題をしているのかを言ってないから話が続かないんです。

例えば、「今、あの投手って二軍でもかなり打たれちゃってるらしいんですよ」と唐突に言われたら、「はぁ。大変なんですねぇ……」ってなっちゃいますよね(笑)。でも、何でこの話をしているかという理由を付け加えれば、また全然リアクションになったりするんです。僕はこのニュース記事を見たときに、「あぁ、引き際って難しいのかな」って思ったんですよ。そこまで続けなくてもよかったんじゃないかなと思う反面、かつて一度スポットライトが当たったスゴイ選手は、なかなかやめられないのかなって。だから「僕はこのニュースを見て、自分の引き際を考えるようになりました。いかにシフトチェンジしていくかって、大事なんだなって思ったんですよね」という言い方をすれば、また違う話に発展できるんです。

一方的にネタだけを並べるだけでは、キャッチボールにならず続かないので、雑談が苦手な人はとにかく「理由を言う」ってことをクセづけてください。そうすれば、相手からも引き出せます。

自己PRは「教えたい」ことを探すべし

――就活している学生が面接で、一見すごそうなんだけど面接官も聞き飽きたようなことしか言えないケースは、どう脱却したらいいですか?

面接官に響く話をしようとしないことですね(笑)。学生の話題なんて、社会人からしたら大体たかが知れてるので、社会人に感銘を与えようなんて思わないほうがいいです。それよりも、今までやってきたことがどれだけ好きで、それに対してどのくらいのめり込んで来たかっていう話をした方がいい。大学生活を振り返って、自分としてはこういうことをやってきたと「教えたい」ポイントに絞るのが一番だと思います。

僕の大学の友だちに某外資系企業に入った人がいるんですが、彼は面接で「大学に入ってアメフトを始めて、体を作るために1年で30キロ太りました」という話をしてました。人によっては「だから何?」って話かもしれないけど、彼は結構いろんなところがトントン拍子で進んでましたね。だから学生は、ネタの内容や頭のよさじゃなくて、「いかにのめり込んできたものがあるか」をぜひ「教えて」あげればいいと思います。のめり込んできたものがない人は、がんばって作っていきましょう! 少なくとも資格を取ることに走るよりは、自分を振り返って教えたいことを探したほうがよっぽどいいと思います。

「教えたいこと」は応用が利く!

僕は人に贈り物をするのもすごく苦手だったんですけど、いいもの選ぼうとか、相手が欲しいものを選ぼうと考えずに、自分が「教えたい」と思うおもしろいポイントを見つけられたら、すぐ決められるようになりました。以前は1~2時間かかってたのが、今は多分5分くらいです(笑)。「これってこうなんですよ。おもしろくないですか?」って言って渡せば相手も意味がわかるから、喜んでくれます。教えたいポイントをさえ見つかれば、贈り物は自分が「すげぇ!」と思ったらそれでいいんですよ。

――「自分の言葉」が出せるようになるのに、コツはありますか?

「こうじゃなきゃいけない」っていうのをとにかく取っ払うことです。「飲み会で友だちに話すとしたら、なんて言う?」というくらいラフな感じで考えてください。自分のテンションを上げることが第一です! そうすれば自信がついてくるし、相手も楽しくなりますから。

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