山梨大学の中村和彦 教育学部長

教育玩具の開発・販売などを行うボーネルンドはこのほど、「子どもの未来とあそびの未来展」を開催。発育発達学などを専門とし、NHK教育テレビ「からだであそぼ」等の監修を務めた経験を持つ、山梨大学の中村和彦 教育学部長が講演した。

「日本の子どもすべてを元気に-あそびが育むこころとからだ-」をテーマに語った講演の中で中村氏は、子どもの発達の側面として「技能・運動能力」(身体運動の発達)、「コミュニケーション・態度」(情報・社会性の発達)、「認知的な発達」(思考・判断)の3つがあると主張。この発達側面を育てていくために大切にしなければならない4つの発達特性について説明した。

小学校のクラス担任制には理由があった

はじめにこれら3つの発達側面は、特に幼少年期において、それぞれが独立して習得されていくのではなく、お互いの発達側面が関係し、補い合いながらその能力を育んでいく特性を持っているという。これを「相互補完性」と呼び、中村氏は「これをやれば、コミュニケーション能力だけを身につけられるという方法はない」と指摘した。

その上で、子どもが育っていくには「発達段階」があり、発達の段階に応じて指導していくことが大切だそうだ。これは日本の教育制度にも反映されていて、例えば、小学校でクラス担任の教師が全ての教科を教えることにも意味があるという。教師には「教科それぞれの指導より、1日中、1年中、まるごと子どもを見ていくということが要求されている」とのこと。子どもたちの生活全般を見て、長所を見いだし、次の教育課程につなげていくことが求められている。

その後、中学校、高校と進学するごとに専門性が高くなり、大学では単位申告制になる。この制度に関して中村氏は、「世界と比較しても非常に優れた制度」だと話している。

小学校低学年ではさまざまなスポーツをすることが大事

さらに3つ目に大切なこととして指摘したのは「子どもの育ちには、強調すべき時期と課題がある」ということ。ある能力を身につけるのに最も適した時期があるという意味だ。例えば「技能・運動能力」(身体運動の発達)においては以下のことが言えるという。

・幼児期(3~5歳): いろいろな運動ができるようになる時期
・低、中学年(6~10歳): 運動がうまくできるようになる時期
・高学年、中学校(11歳~): いろいろな運動・スポーツを実施する時期

中村氏は日本の学習指導要領を例にとり、「小学校では1年中サッカーや陸上競技などの特定のスポーツをやっているわけではない。いろんなスポーツをやりながら、いろんな体の動かし方を身に付けて経験することが大切だ」と語った。

子どもの「遊び」は生涯の健康につながる

最後に強調したのは「持ち越し効果を視野に入れた子育て・教育」の必要性だ。「子どもの頃、体を使うことが面白いと感じたり、のめりこんで気持ちがいいと感じたりすることができれば、大人になってから運動することがおっくうではなくなる」と語った。そういう意味で、子どもが体を使って仲間と関わり、たくさん「遊ぶ」ということは、大人になってからの健康につながると中村氏は考察している。

「動き」という観点で見ると、幼児期から小学校高学年までが、一生のうちで最も動きを身につける効率がいい時期にあたるという。「現在は、子どもの頃にいろんな遊びやスポーツを経験することが少なくなってしまっているので、体力や運動力、その他いろんな能力を下げてしまっている」と中村氏。子どもたちが自ら意欲的に動きを身につけていける環境を整えていくことが大事なのかもしれない。