揚げたてホカホカのコロッケを手にすると、なんとも幸せな気分になる。身近な総菜であることは間違いないのだが、コロッケには人々を引きつけるパワーがあるのだ。今回は、洋食の町として知られる兵庫県・神戸エリアで、地元の人々に愛されるコロッケを食べ歩く。
中華街で味わう「神戸コロッケ」
1868年に神戸港が開かれ、早い時期から西洋文化を受け入れてきた神戸。市内の「旧居留地」に住んでいた多くの外国人の影響もあり、洋食がしっかり根付いているこの町のコロッケは、さてどんなものだろう?
まずは、神戸の名前を掲げた「神戸コロッケ」を紹介。神戸市内だけではなく、全国的に出店しているブランドなので、デパ地下などで見かけることも多いだろう。今回は、神戸でも人気の観光スポットである中華街「南京町」にある店舗を訪れた。最寄り駅はJR・阪神電鉄「元町駅」だ。
コロッケの種類もいろいろと取りそろえられているが、今回はネーミングからしていかにもおいしそうな「黒毛和牛のビーフコロッケ」(195円)をチョイス。神戸コロッケに使われているジャガイモは、北海道端野町産。「神戸コロッケ」はその栽培から関わっているというこだわりぶりだ。
●infomation
神戸コロッケ元町店
住所: 兵庫県神戸市中央区元町通2-4-1
営業時間: 10:00~19:00
定休日: なし
職人の技を味わえる「森谷商店」のコロッケ
「神戸コロッケ」に舌鼓を打った後は、同じく「元町駅」近くにある神戸の老舗の精肉店「森谷商店」の元町本店へ。名物のコロッケを買い求める人たちの行列が絶えない人気店だ。
販売開始から60年以上たつというシンプルな「コロッケ」は、なんと1個90円。肉を知り尽くした熟練の職人が牛肉をミンチに加工し、4時間以上炒めたというタマネギと共に、牛ミンチと相性のよいジャガイモ「メークイン」と合わせて揚げる。リーズナブルな価格ながら、手間と時間をたっぷりとかけているのだ。
●infomation
森谷商店 元町本店
住所: 兵庫県神戸市中央区元町通1-7-2
営業時間: 9:00~19:00(揚げ物は10:30~18:30)
定休日: なし
B級グルメ「ぼっかけ」のコロッケも
さて、今度は元町を離れ、"神戸の台所"と呼ばれる「東山商店街」へ。ここでは、神戸のB級グルメ「ぼっかけ」を使ったコロッケを紹介しよう。明治34年(1901)創業の老舗精肉店「三ツ輪屋総本店」の「味コロッケ」(70円)だ。
「ぼっかけ」とは、牛すじとこんにゃくを砂糖、醤油で甘辛く煮たもので、神戸ではお好み焼きやうどんに入れて食べることが多い。「味コロッケ」は、じゃがいもの甘みと醤油風味のぼっかけがよく合う、食べごたえのある味わいだ。「ぼっかけ」を中に入れたコロッケが売られているのも、神戸ならでは。
●infomation
三ツ輪屋総本店
住所: 兵庫県神戸市兵庫区東山町1-1-19
営業時間: 10時~19時
定休日: 木曜日
ゴルファーが広めた「黒毛和牛コロッケ」
最後に紹介するのは、神戸牛の牧場を経営する「山垣畜産」の「黒毛和牛コロッケ」(95円)。外はカリッと、中はジューシーでしっとりとしており、お取り寄せでも人気だとか。
「山垣畜産」の牧場は神戸市の郊外にあり、当初はゴルフ場帰りの人々の間で評判になったそうだ。それが口コミで広がり、いまでは道の駅やショッピングモール、神戸市・三宮の商業施設「ミント神戸」地下などでも買えるようになった。ゴルフ場の発祥地とも言われる神戸ならではエピソードだ。
和洋折衷の歴史が育んだ素朴な洋食・コロッケ。今回紹介したのは、いずれもグルメな神戸っ子をうならせるコロッケだ。ぜひ、神戸を訪れてお気に入りの味を探してほしい。
※記事中の情報は2016年4月取材時のもの。価格は税込
筆者プロフィール: 藤岡智子(ふじおか ともこ)
神戸市出身。フットワークの軽さを生かし、旬の情報を収集するとともに、関西を中心に取材・執筆活動を行っている。栄養士の資格を生かしたグルメ取材も多数。趣味は野球観戦。