確定申告もそろそろ締め切り時期。会社員にはあまりなじみがないという人が多い税金の申告ですが、来年からはもっと身近になる可能性が。病気やけがをしたときに薬局で買った市販薬の購入金額が少額から所得控除の対象になり、税金が安くなるかもしれません。
来年から医療費控除が変わる?
1年間にかかった医療費が一定以上になったときに、確定申告すると税金が戻ってくる医療費控除についてはご存知の方も多いでしょう。ただ、医療費は健康保険が適用されるためそれほど高額の医療費がかかることはまれで、実際に医療費控除を受ける人は出産した人や歯の治療にお金がかかった人などが中心です。
それが来年から医療費控除の特例ができ、誰もが控除の対象になる可能性が出てきました。これまでは、病院の費用などで「年間10万円(または所得金額の5%)以上かかった場合」に申告することで、超えた分の金額が所得から控除されました。しかし、来年からは、薬局で買った薬代が年間1万2,000円以上になった人も所得控除が受けられるようになります。
ちょっと体調が悪いけど病院へ行くほどでもないという時に、市販薬を買って済ませる人も多い現在、こうした薬の購入費も、年間を通せばかなりの額にのぼっているのではないでしょうか? それらの費用を所得から控除できるこの特例は、多くの人にとってメリットがありそうです。
ただし、どんな薬でも対象というわけではないので注意が必要です。この医療費控除の特例の対象となる薬は「スイッチOTC」と呼ばれる薬です。
スイッチOTC医薬品って何?
どんな薬がスイッチOTCなのかというと、もともと医療用で使われていた薬品のうち、安全性などに問題がないと判断されて一般的な医薬品として販売されるようになったものです。OTCとは「Over The Counter」の略で、薬局のカウンター越しに売られる薬のこと。医師の処方箋が必要だった薬がOTCに切り替えた(=スイッチした)薬がスイッチOTC医薬品です。
注意したいのは、市販されている薬に「スイッチOTC」と明記されている訳ではないという点。薬に配合されている成分がスイッチOTCなのかどうかで、その薬がスイッチOTC医薬品かどうか判断されます。
例えば痛み止めとして使われているインドメタシンや頭痛薬などに使われているイブプロフェンなどが代表的。同じような胃腸薬や風邪薬などでも、配合成分によって特例の対象になるかならないかが違うので、購入するときには成分表示をよくみたり薬剤師さんに説明を受けたりすることが大切です。
恐らく来年特例期間が始まれば、薬局やドラッグストアでもよりわかりやすい表示がされるようになると思います。ですが、いまから薬の購入の際には、これらのことを意識しておくといいでしょう。風邪や頭痛、胃腸炎などばかりでなく、消炎剤や目薬など幅広い薬にこのスイッチOTC医薬品がありますので、よく使う薬も一度チェックしておきましょう。
特例の期間は2017年から2021年
この特例が適用される期間は来年の2017年から2021年までで、毎年1月1日から12月31日までの分を翌年の確定申告で控除を受ける形となります。1万2,000円以上かかった分を所得から控除されるので、例えば3万円のスイッチOTC医薬品の購入があった場合には、1万8,000円が所得から控除されます。税率が10%の人なら1,800円、税率20%の人なら3,600円が還付されます。
この特例が受けられる上限は8万8,000円まで。この金額を超えた場合は、通常の医療費控除が適用されるので、医療機関にかかったなどでほかにも医療費がある程度かかったというケースでは、通常の医療費控除の適用を受けた方がいいケースもあります。
いずれにしても、医療費として支出したものは、たとえドラッグストアで購入したものでもきちんと領収書など記録を残しておくことが、これからより一層大事になるということを今のうちから覚えておきましょう。
堀内玲子
ファイナンシャルプランナー。証券会社勤務後、編集製作会社で女性誌、マネー関連書などの編集を経て93年に独立。96年ファイナンシャルプランナー資格を取得。FPとして金融・マネー記事などの執筆活動を中心に、セミナー講師、家計相談などを行う。著書に「あなたの虎の子資産倍増計画」(PHP研究所・共著)「年代別 ライフスタイル別 生命保険のマル得見直し教室」(大和出版)など。