ケトジェニックって?

続いて、「ケトジェニック」という聞き慣れない言葉について説明しよう。「ケトジェニック(ketogenic)」は、日本語訳で「ケトン体生成の」という意味。同書のタイトルにも「ケトン体回路を回し健康的に痩せる! 」とあるが、同ダイエットでは、ケトン体回路を活発に回してケトジェニック状態にすることがダイエットのポイントとなっている。

糖質は、タンパク質・脂質と並ぶエネルギー源の1つ。食事で糖質を摂らなくなると、前述した「糖新生」というシステムにおいて、脂肪から分解されるグリセロール、筋肉を構成しているアミノ酸などを材料に、体内で糖をつくり出すようになる。ただし、糖新生でつくれる糖質量にも限りがあるため、エネルギーのメインは「糖エネルギー」から「脂肪酸エネルギー」へとシフトし、体内の中性脂肪を分解してエネルギーをつくり出すことになるという。

減らしたいのは「体脂肪」だけ!

このとき、脂肪酸の一部はケトン体という物質に変わる。これが「ケトン体回路」。つまり、体脂肪からケトン体が発生するまでのシステムのことで、体脂肪を燃やして痩せるという仕組みだ。このケトン体回路が動くと、あらゆる細胞でエネルギーとして使われる。あえて糖質を摂らないでずっと枯渇した状態にしておくと、ケトン体を供給しなければならず、脂肪細胞中の中性脂肪がどんどん分解・放出されていく。同書では、このケトン体回路が活発に回り続けた状態を「ケトジェニック状態」と表現している。

ケトジェニックダイエットでは、「減らしたいのは体脂肪だけ」がキーワード。糖新生によって筋肉を構成するアミノ酸が消費されるため、タンパク質を多めに摂取して体内のタンパク質を維持することが重要なのだ。

そして、このダイエットの効果は痩せることだけではない。実践した人が感じた効果として、「髪の毛の量が増える」などのルックスの変化、「疲れにくくなる」「集中力が増す」といった健康の実感、「貧血」「冷え性」「むくみ」などという不調や病気の改善についての報告があるという。

「ごぼう茶」による若返り術や1日1食の健康法などを提唱する、ナグモクリニックの南雲吉則総院長も同書を推薦する一人。感想をお聞きすると、「私は1日1食にしてから痩せて体調もよくなりました。そのときはまだ概念がなかったのですが、今思えば空腹状態のときは『ケトジェニック状態』だったんですよね。日本にケトジェニックという理論を持ち込んだ斎藤先生は、すばらしいと思います」とコメントをくれた。

ココナッツオイルでケトン体が約3倍に?

「ココナッツオイル」などに含まれる中鎖脂肪酸を摂ると、ケトン体が通常の約3倍に! ※イメージ画像

糖質が枯渇したとき、脂肪酸の一部からつくられるケトン体。しかし糖質を枯渇させなくても、「ココナッツオイル」などに含まれる中鎖脂肪酸を摂ると、直ちに肝臓に運ばれ、ケトン体をつくることができるという。

驚くのはその量。斎藤医師が副理事長を務める日本ファンクショナルダイエット協会が行った研究では、10名の被験者にココナッツオイル33gを摂取させた。その3時間後、血中ケトン体濃度は平均して摂取前の約3倍になった。

同協会の理事長を務める白澤卓二医師は、ココナッツを取り入れた健康法などを提唱している。今回、ケトン体を増やすココナッツオイルの効果についてうかがったところ、「斎藤先生には『ずるをしてる! 』って言われちゃうんだけどね(笑)。ココナッツを入れると本当にケトン体が増えるんです。糖質制限をしている人は痩せるし、していなくても脳の老化予防にいいですよ」と語ってくれた。

後編では、ケトジェニックダイエットの具体的なやり方と、斎藤医師のインタビューをお届けする。