日本時間3月4日22時30分に発表された米2月雇用統計は、概ね好結果ではあったが肝心の賃金が低下するという締まらない内容であった。

「米非農業部門雇用者数と失業率」

非農業部門雇用者数は前月比24.2万人増と予想(19.5万人増)を上回る伸びを示したほか、失業率は2008年2月以来の低水準となった前月と同じ4.9%であった。また、働き手(求職者も含む)の割合を示す労働参加率も62.9%に上昇しており、ここまでは極めて良好な内容と言える。

ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)による今後の利上げペースを読む上で市場が注目していた平均時給は前月比-0.1%と、増加予想(+0.2%)に反して25.35ドルに減少した。前年比でも、+2.2%と7カ月ぶりの低い伸びにとどまった。賃金の減少は、米GDPの7割を占める個人消費の減速につながり、インフレへの下方圧力にもなりかねない減点材料だ。

「米国平均時給」

市場は、こうした強弱マチマチの結果に対して消化不良気味の模様であり、雇用統計発表後の為替市場でも、ドルは円に対して小幅に上昇した半面、ユーロや豪ドルに対して下落するなどマチマチの展開となった。一方、この日の取引を小幅高で終えた米国株式市場では、雇用統計について、景気腰折れ懸念を強める事なく3月利上げの可能性をほぼ消滅させるという、「ほど良い弱さ」だったとの見方も出ていた。

いずれにしても、米2月雇用統計は市場に対して強いインパクトを残さずに通過した格好だ。市場には、3月15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、4月以降の追加利上げに関するヒントが出るのを待つしかないとのムードが漂い始めている。

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya