ダイエットを意識している女性でもやせたくない部位、それが「バスト」。もちろんボリューム以外にも、「授乳で胸が垂れた」「左右で形が違う」など、自分なりの悩みを抱えている人は意外と多いはずだ。
それらの悩みを解消したいと思ったら、豊胸手術も選択肢の1つ。今回は、豊胸手術の種類と術後の注意点について、湘南美容外科クリニックの福澤見菜子医師にお聞きした。
安価なシリコンに注意
豊胸手術にはいくつか方法があります。その1つが「シリコンバッグ」。乳房の中にシリコンを挿入する方法です。ワキ下などのシワに沿って3~4センチを切開して入れるので、傷跡もほとんど目立ちません。大きくハリのあるバストにしたい方にお勧めです。
外からの刺激でシリコンが変化することはほとんどありませんが、ご自身の体質や使用するシリコンによっては、皮膚と皮下組織が薄くなってシリコンの輪郭が浮き出ることもあります。また、皮膚と皮下組織がシリコンを"異物"と判断すると、拘縮(シリコンが収縮し硬く盛り上がった状態になること)が起こり、異物の表面積を少しでも小さくしようとする抵抗が生じます。すると、シリコンがどんどん球状になっていき、見た目的にはおわん型の胸になってしまうことがあります(※)。
それを防ぐには、まず医師のアドバイスに従って適切な大きさのシリコンを選ぶこと。そして、値段につられて安価なシリコンを使用しないことです。拘縮の起きづらい形状でできているきちんとした製品を選べば、将来的なリスクを減らせると思います。
※効果には個人差があり、シリコンバッグの施術すべてに起こることではありません
脂肪やヒアルロン酸の注入
シリコンのようなリスクがない方法としては、脂肪やヒアルロン酸の注入があります。脂肪注入では、ボールペンの芯くらいの大きさの穴から脂肪を注入してふくらみを出します。自分の脂肪なので自然で柔らかい仕上がりになりますし、触り心地にも違和感がありません。授乳後に垂れてしまった胸の改善にもお勧めです。
ヒアルロン酸の注入は、即効性があり、注射なので傷跡もほとんど残りません。ヒアルロン酸は体内に吸収されるため永久的にはボリュームは続きませんが、手軽に胸を大きくしたい方には適した方法です。
ただし注意点が1つ。脂肪もヒアルロン酸も100%皮膚や皮下組織にくっ付くわけではないので、微小石灰化といって小さなしこりになることもあります。乳がん検診で誤診につながるほどではないことが多いですが、検診の際は念のため自己申告をすることをお勧めします。
注入にしてもシリコンにしても、体の中に何かを入れる場合、もちろん医師や病院には説明する義務があります。とはいえ、ご自身の大切な体のことです。「いつ・何を・どのぐらい入れたのか」といった施術内容をきちんと把握し、記憶しておくようにしましょう。
理想は人それぞれだが、"大きくハリがある胸"に魅力を感じる女性もいる。手術をきっかけに女性らしさに自信が持てるようになったり、長年の悩みが1つ解消されたりするのであれば、豊胸手術を視野に入れてみるのもいい。そのときは、どんな胸になりたいかを医師とよく相談し、価格だけではなく将来的なリスクまで理解したうえで決めるようにしよう。
※画像と本文は関係ありません
記事監修: 福澤見菜子(ふくざわ・みなこ)
2003年度ミス慶應グランプリで、歴代のミスの中でも唯一「専門医」の資格を持つ医師。
2006年に慶應義塾大学医学部を卒業後、同大学病院、東京大学医学部附属病院 形成外科・美容外科、大塚美容形成外科 千葉院院長などを経て、2013年より湘南美容外科クリニックに勤務。そのほか、日本形成外科学会 専門医、日本美容外科学会(JSAPS) 正会員、日本抗加齢医学会 正会員、埼玉医科大学総合医療センター 形成外科・美容外科 非常勤助教など。
医師として、正しい美容医療の普及と実現に貢献することをライフワークとし、オフィシャルサイトでも情報を発信している。