2016年で創業10周年を迎えたガチャガチャメーカーの奇譚クラブ。ガチャガチャとしては異例の1,000万個を突破した超人気シリーズ「コップのフチ子」をはじめ、哀愁ただようサラリーマンが土下座する「シリーズ生きる」など唯一無二のアイテムをリリースし続け、大々的なPRなどはないもののSNSを中心としたクチコミでファンを獲得し大ヒットを飛ばしている。
そんな奇譚クラブで広報を務めるのは、しき"広報"せいたさん。自身も「フチ子」のコスプレに身を包み、正式非公認広報「コップのシキ子」としてイベントなどに参加する異色の広報である。10周年を記念して開催されている「奇譚クラブ10周年展」の会場で、今までにリリースされたアイテムを振り返りながら、しきさんに大ヒットを生み出す秘密を聞いた。
――10周年おめでとうございます。
ありがとうございます。うちはガチャガチャ事業をスタートする前が長くて、2年間ほど他のメーカーさんの下請けで原型などを制作していました。ガチャガチャを始めたのは2008年からなんです。僕が入社したのが2013年4月で、シキ子の誕生はそれから間もなくの9月でした。
――そもそも「奇譚クラブ」という名前の由来を教えてください。
社名はオーナー的存在の方に命名いただいたのですが、もともとの由来はSM系雑誌の名前なんですよね。創業して数年はネットで検索しても雑誌ばかりがヒットしていたのですが、最近はうちのほうも上位にきて認識してもらえるようになりました。
――しきさんは以前にもPRのお仕事などを?
元は全然違う仕事をやっていて、PRをやるようになったのは入社してからですね。広報って真面目なイメージがあったので、もうちょっとお客さんに近い存在がいたら楽しいだろうなと思ってシキ子をやりはじめたんです。実は僕自身「フチ子」のファンで、コスプレもしてみたかったんです。人間型でOLなので、男子がやったらおもしろいんじゃないかなと思って……。軽はずみですね(笑)。
――それが今ではミドルネームにも"広報"と入るほどに。
「フチ子」を共同開発したマンガ家のタナカカツキさんに初めてお会いした時に、いきなり「ミドルネームに"広報"って入れちゃえ(笑)」って言われたのがきっかけです。"正式非公認広報"に任命していただいたのもタナカカツキさんなんです。僕はPRのスタイルを会社用とシキ子用の2パターン作っていて、会社のほうでは発売日のこととか「THE 情報」を。シキ子では「フチ子」の深~いことを言うようにしているんです。シキ子は"正式非公認広報"なので、お客さんに近い、寄り添うような存在でありたいと思っています。個人的な視点から物事が言えるので、そこはすごく楽ですね。
――それでは、シキ子さんと一緒に奇譚クラブの今までの商品を見ていきたいと思います。
最初は超絶リアルな生物フィギュア「NATURE TECHNI COLOUR」をメインに作っていました。カプセルトイの値段でこのクオリティーというのは、コスト的にはもうアウトですよね(笑)。ターニングポイントになったのは2010年。「シリーズ生きる」(土下座ストラップ)、「江頭2:50ストラップ」、「おさんぽカエル」などが生まれた年ですね。コストがかかりすぎて業績として大変だったのが、これらのシリーズは生物に比べて作りこみが少なく、話題にもなりました。
ここからですね、うちがおかしな会社になったのは(笑)。「生物」と「アホ」の二足のわらじで行こうという方針です。江頭2:50さんがなぜ選ばれたのかというと、うちの社長が大ファンだったからなんです。当初社内では猛反対だったのですが、箱を開けてみたら100万個の大ヒット。当時はあまり芸人さんのフィギュアがなかったのもヒットの理由かもしれません。
ほかにも、「キノコソフトストラップ」もすごく売れました。300万個くらいかな。前にクラゲをモチーフにした「クラゲソフトストラップ」を作っていて、完成したものを社内で見た時に「これキノコに似てるよね」という声が上がったことから生まれた商品なんです。ちょうど世の中的に"キノコ女子"とかがはやり始めてたので、すごくラッキーでしたね。