フランス人の父親を持ち、フランスで生まれた滝川クリステルにとって、フランスの作家アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの『星の王子さま』は、"人生の友"とも言えるとても身近な大切な一冊。物語の重要なテーマである"目に見えない大切なこと"を、ブログのタイトルにもしているほどだ。そんな彼女が、『星の王子さま』初のアニメーション映画『リトルプリンス 星の王子さまと私』(11月21日公開)で、バラ役の吹き替え声優に大抜擢。持ち前の温かく艶(つや)のある声で、見事にバラになりきっているが、本格声優初挑戦は想像以上に難しかったという。このたび、『星の王子さま』との深い関わりや、演じたバラへの思い、吹き替えの苦労などをインタビューした。
――フランスで生まれ、3歳までフランスに住んでいらっしゃった滝川さんにとって、『星の王子さま』は特別な一冊とのことですが、この物語との関わりを教えてください。
10歳から12、13歳くらいにまたフランスに住んでいた時期があり、その時に読んだのが一番記憶にあります。とにかく絵が印象的で、物語はよくわからないまま、でも気持ちは惹きこまれて、「目に見えない大切なこと」というフレーズはずっと残っていました。そして、大人になって日本語バージョンで読んだ時にやっと、作者が言いたいことはこうなんじゃないかって。この本は、自分が成長して読むとまったく違う答えを出してくれる、自分のその時の状況や環境で捉え方がまったく変わる変幻自在な不思議な本だと思います。
――具体的に、こういう時にこういう影響を与えてくれたというエピソードはありますか?
転校が多く環境が変わりやすかったので、友達との関係やアイデンティティのことなど迷うことがあり、人には言えず悩んでいた時に、この本に教えてもらいましたね。また、自分の家族とこの数年、この本の解読をしていて、それも大きなエピソードですね(笑)
――解読はどなたがやろうと提案されたんですか?
私が『星の王子さま』の翻訳をやっていた時に、母がちょっとしたことに気付いたんです。この不思議な絵に関して解けていったものがあり、本当に星の王子さまが言いたかったことがあの絵に隠されているんです。
――そうなんですか! 私はまだ読み込みが足りてないようです。
みなさんわからないと思いますよ。わが家では、常に意見を言い合ってきて、解読できました。『リトルプリンス・トリック "星の王子"からのメッセージ』(11月19日発売/講談社)という本を出すのですが、その中で答えを明かしています。
――興味深いです。それほど原作を愛する滝川さんから見て、日本とフランスで『星の王子さま』の受け入れ方など違いを感じますか?
フランスでは、小さい頃から教育にも教材として取り入れられていて、当たり前に子供たちが読むものとして存在しています。フランス人の方が思い入れは強いと思いますが、より神聖なものとして捉えられていると思います。
――そんな『星の王子さま』が初めてアニメーション映画化されました。完成した『リトルプリンス 星の王子さまと私』を見て、いかがでしたか?
監督はすごい苦労しただろうなと思います。アニメーション映画化といっても、この物語を再現したわけではなく、その方向にしたんだなと。やっぱりそうですよねって思いました。監督も「僕はこの物語には触れられません」と最初は断ったそうですが、「なんとか!」という声に応えるべく、考えて考えて考え抜いて、周囲の人たちのその後の物語として、本のエッセンスをちりばめながらメッセージを伝えていくというスタイルにたどり着いたそうです。言葉もとても選んだと思います。また、王子さまのキャラクターの表現方法に感動しました。アニメではなく手作りというのは、物語のファンを裏切らないと思います。