4日、東京証券取引所第1部に日本郵政、ゆうちょ銀行 、かんぽ生命保険の郵政グループ3社が同時に新規上場しました。いずれも仮条件の上限で決まった3社合計の売り出し価格は、1兆4362億円と、民営化案件の上場としては1987年のNTT以来の大きさであることから、市場の大きな関心を集めました。
日本郵政の初値は1631円、ゆうちょ銀行は1680円
4日午前9時に東京株式市場での取引がスタートしてからすぐに3社とも買い気配で始まり、9時20分から開始された上場セレモニーの最中である9時33分に、日本郵政とゆうちょ銀行が初値をつけました。
日本郵政は1400円の売り出し価格に対し、初値は1631円(+231円)となり、公開価格を16.5%上回りました。寄付き時の売買高は3491万4700株。
一方、ゆうちょ銀行は1450円の売り出し価格に対し、1680円(+230円)となり、公開価格を15.9%上回りました。寄り付き時の売買高は3359万2400株。
上場セレモニーの最中も、かんぽ生命保険だけは買い気配が続いていましたが、上場セレモニー終了後の10時6分に、2200円の売り出し価格に対し、初値は2929円(+729円)となり、公開価格を33%も上回りました。寄り付き時の売買高は794万株。
約170万人の株主が今後の株価の動向に注目
日本郵政グル―プ3社は株式の8割を国内で販売し、そのうちの95%は個人投資家向けであるため、約170万人の株主が今後の株価の動向に注目しています。
上場セレモニーの挨拶で、日本郵政の西室泰三社長は「上場は民営化の第一歩であり、日本郵政が手掛ける物流ビジネスの国際化に向けて、(買収した豪物流大手)トール・ホールディングスを育てることを含め、厚みを増していくことを考えていかなくてはならない」と、今後の事業展開についての抱負を述べました。
日本郵政グル-プ3社は、機関投資家も注目する主な株価指数に採用される見通しであるなか、配当と株価水準に対する投資妙味から個人投資家を中心に人気を集めました。
業績改善による株価の値上がり益に期待できるかどうかポイント
そうしたなか、今後は、業績改善による株価の値上がり益に期待できるかどうかがポイントとなってきます。
特に、日本郵政は、約140年間、官業・国有企業として日本のインフラ、物流を担ってきた歴史のなかで、様々な規制に縛られた収益構造になっており、全国一律の郵便サービスを展開する郵便事業は、未だに全国の8割の郵便局で業績赤字の状態が続いています。
今後の株価を見極めるためには、ひき続き、規制改革の進展や業績の推移に注目していく必要があると言えます。
執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)
経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。