近年、「地方創生」を耳にする機会が増えたが、実際に都内で働く人が地方でビジネスをするなら、どのようなメリットがあるのだろうか。そこで今回は、過去に岩手県知事や総務大臣などのキャリアを持ち、『地方創生ビジネスの教科書』(文藝春秋/1,200円+税)の著者でもある、日本創成会議座長の増田寛也氏に、地方での働き方や地方が求める人材について、お話を伺った。

増田寛也
1951年、東京都生まれ。東京大学法学部卒。建設省を経て、岩手県知事、総務大臣を務める。2011年より日本創成会議座長。2013年、全国の市町村の約半分にあたる896の自治体に"消滅"の可能性があるという調査結果を公表。『地方消滅 東京一極集中が招く人口急減』(中公新書)は大きな反響を呼び、「新書大賞2015」1位に選ばれる。「地方問題」の第一人者として活躍中。

地方の働きやすさとは

――都市勤めのアラサービジネスパーソンが地方で勝負するメリットは何だと思いますか

仕事上での自己実現について考えると、都内よりも達成しやすいと思います。私が岩手県の知事を経験して感じたのは、地方では人材層が薄いということです。だからこそ、スキルを持っている人は強い。ビジネスパーソンが自信のある分野でビジネスを始める場合、都心と比べて競争相手が圧倒的に少ないと思います。

また、地方であれば職住近接30分以内が多く、物価も安いので、生活がしやすいでしょう。30代前後の既婚者や子育て中の方がワークライフバランスを両立させるには、東京は難しい地域だと思います。通勤時間が片道60~80分と長時間で、近所との関わりが少ないケースも多いです。例えば子供が熱を出した場合、地方の企業であれば「一旦、家に帰って子供の様子を見たらどうか」と声をかけてくれます。15分ほどで自宅に帰れて、子供を看病したら会社へ戻れる。この"近さ"が地方で働く良さだと思います。

起業してみたい方にとっては、細部の法律関係まで相談可能な体制になっていることが重要だと思いますが、今は地方の環境も相当整ってきています。競争相手が少なく、環境が整っており、ワークライフバランスを確立させやすい。こうした生活環境からみた働きやすさが、地方のメリットとして大きいのではないでしょうか。出身地の近くで知り合いがいれば、ネットワークを広げやすいという利点もありますね。

――逆にデメリットはありますか?

人によって考え方は異なりますが、毎晩違うナイトスポットに出掛けたい、歌舞伎座に通いたい、など都市的な刺激に飢えている人にとって、あまり満足感は高くないかもしれません。

――Iターン、Uターンでは、東京より南の地方が人気だと思うのですが、東京より北の状況はいかがでしょうか

たしかに、移住となるとそうですね。北の地方の場合でも、東北を飛ばして北海道に行きがちです(笑)。しかし、たとえば仙台なら東京から1時間半ほどで行けますし、都会の需要に合ったサービスを仕事にしたい方にも、良い地域ではないかと思っています。