――このシリーズ以外にも子役時代には様々な作品に出演されていました。子役になるきっかけは?

私が2歳くらいの時に両親が芸能事務所に応募したのがきっかけです。最初はCMや広告に出させていただくことが多かったのですが、成長するにつれてドラマの仕事もさせていただくようになりました。物心ついてないころからこの世界でお仕事をさせていただいていたので、私にとっての子役は……何だったんでしょうね(笑)。

――子役の中にはそのまま仕事を続けていく方もいますが、向井地さんは一時期芸能界を離れましたね。ご自身の選択だったのですか。

そうです。演技のお仕事も楽しいですが、中学受験をすることになって、普通の中学生としても人生を歩んでみたいなと思って、中学時代は芸能活動をお休みすることにしました。普通の女の子になって気づいたのは学校という空間が好きで、そこで過ごす時間が楽しかったということ。人生の中でそういう時間があったのは、今でも良かったと思っています。

――そこからの復帰がまさかのアイドルです(笑)。

そうなんですよ(笑)。芸能活動をお休みしている時も、具体的にいつから再開しようとかあまり考えていなくて…。どちらかというと私は今を楽しむタイプ。中学時代に仲良くなった子がAKB48ファンでその影響で私も好きになって、「今を楽しむ」ためにAKB48に挑戦しようと決意しました。普段は消極的なんですが、なぜかそういう時だけ急に大胆な行動に出てしまいます(笑)。受かるとは思ってなかったので、びっくりしました。

――ご両親はどのような反応でしたか?

ちゃんと相談していなかったんですけど、なんとなく気づいていたみたいで。私が毎日のようにAKB48のことを見たりしていたので、それで勘付いたのかもしれません。母が「受けてみたら?」と勧めてくれました。

――そして見事に合格。友だちも驚いたでしょうね。

受かった最初の頃は、本当に仲が良い1人、2人以外の友だちには何も伝えていなくて。なんとなく秘密にしたかったんです。デビューして顔が出た時にすっごく驚かれました(笑)。子役時代とは違った厳しさがありますが、AKB48のメンバーとして活動することはすごく楽しいです。やっぱり歌って踊っている時間が楽しいですが、何よりもいろいろなことに挑戦できるグループというのが私にとっては一番幸せなことです。

――AKB48として芸能界に復帰し、初めて出演したドラマが昨年の『セーラーゾンビ』(テレビ東京系)でした。ほかのメンバーとの共演でしたが、久しぶりの演技はいかがでしたか。

ゾンビ役のメイクをしてグリーンバックの撮影だったので、演技をしたという実感はあまりありませんでした(笑)。久しぶりの演技として緊張したのは『マジすか学園』。『アンフェア』をやっていた子役時代のことは覚えていますが、実際に演技を「どのようにやるのか」を全然覚えていなくて。だから、私にとっては「全く新しい人間」として演技のお仕事をやらせていただいている感じです。

――ご本人としてそう思っていても、周囲は経歴から判断して演技力に期待しそうですね。

そうなんです! 演技うまいよね、みたいな感じで見られることもあるんですけど、自分としては自信はありません。むしろハードルが高くなってしまう感じで、つらいです(笑)。演技に関しては現場の方々に指導していただきながら、必死に勉強しています。将来的には女優さんを目指して頑張りたいんですけど、私は「今を楽しむ」派なので(笑)。だからまずはAKB48一筋で頑張りたいなと思います。

(C)2015 関西テレビ放送/フジテレビジョン/ジャパン・ミュージックエンターテインメント/東宝/共同テレビジョン

――そこであらためて聞きたいのですが。先ほども申し上げましたが、制作サイドにとって向井地さんは『アンフェア』に欠かせない存在でした。向井地さんから見て、『アンフェア』はどのような存在ですか?

自分の人生に欠かせない存在です。この10年で一緒に成長させていただいたという思いがあります。私が演じた美央も物語の中で同じように成長して、まさか10年後に17歳で出させていただけるなんて、当時は思ってもみませんでした。

――子役に応募したご両親にとっても、今回の出演は感慨深いでしょうね。

そうですね! 今回のお話は、スタッフさんからさり気なく「出るらしいよ」みたいにサラッと言われて(笑)。確か紅白歌合戦の楽屋だったと思います。そんな状況で言われたので、私の方がビックリしていました(笑)。でも、出演が決まったことを両親に話したら、すごく喜んでくれましたので、うれしかったです。早速試写で観て、楽しんでくれたみたいです。「大きくなって成長を感じた」と言ってました。向井地家のみんなを成長させてくれた作品、それが私にとっての『アンフェア』です。

■プロフィール
向井地美音(むかいち・みおん)
1998年1月29日生まれ。埼玉県出身。子役として芸能界デビューし、2006年のフジテレビ系連続ドラマ『アンフェア』で雪平の娘・美央役に起用される。その後も、2007年の映画『アンフェア the movie』、スペシャルドラマの『コード・ブレーキング~暗号解読』(06年)と『ダブル・ミーニング ~二重定義』(11年)に出演。中学校入学を機に学業を優先するために芸能活動を一時休止。2013年にAKB48の15期生オーディションに合格して活動を再開した。