動脈硬化や心筋梗塞などのリスクを高めるとして、悪者扱いされてきた食品に含まれるコレステロール。コレステロール値が高い人は、コレステロールの多い食べ物を控えるのが普通だが、どこまで関係があるのだろうか。

「卵は1日1個まで」は、間違いだった!?

高コレステロール食品の代表としてよく挙げられるのが、卵だ。そこで、マイナビニュースの読者500人に実施した、卵の摂取量についてのアンケートでは、「卵は1日、何個までと言われてきましたか?」という質問に対して、8割以上の人が「卵は1日1個まで」という認識であることがわかった。

設問:卵は1日、何個までと言われてきましたか?

卵は、栄養価が高く、コレステロールの含有率も高いことから、「摂取をしすぎるとコレステロール値が高くなる」と結びつけられてきたが、最近の学説ではコレステロール値との因果関係が否定されている。

今回、食事とコレステロール値の関係性について、「品川イーストワンメディカルクリニック」の板倉弘重先生にお話を伺った。

「コレステロールは脂質の一つで、人間をはじめ動物が生きていくうえで不可欠な細胞膜を維持する大切な役割をもっています。体内のコレステロールは、7~8割が肝臓で合成され、食事で摂取するコレステロールはたったの2割。食事でのコレステロール摂取量を減らしたとしても、その分、肝臓で多くコレステロールがつくられる、といった具合に肝臓はコレステロール値を一定にコントロールする働きがあります」。

つまり、コレステロールを含む食品をたくさん食べたからといって体内のコレステロール値に大きな変化が起きるということは無いのだ。では、卵も同じなのだろうか。

「卵の黄身は、高コレステロールなので、1日1個が適量といわれますが、1個でも2個、3個でも心配ありません。動脈硬化や心臓病などコレステロールに関係した病気を患った人の多くは卵を食べていない人の方が多いのですが、禁止するほどではありません」。

コレステロール値は、高すぎても低くすぎてもダメ?

食事を制限しても体内で調整されるコレステロールの量。では、年齢による摂取コレステロールの制限はあるのだろうか。

お話を伺った板倉先生

「コレステロールの基準値は、年齢や体質など人それぞれ異なります。若年齢のうちは体内のコレステロールの量も少ないですが、年齢を重ねるにつれて肝臓の働きも弱くなってくるため、コレステロールを調節する機能も衰えて、コレステロール値も上がってきます。また、女性は更年期を過ぎると女性ホルモンが低下してくるため同様に数値が高くなります」。

しかし、コレステロール値は低いから健康というわけではないようだ。

「体内のコレステロールが不足すると、ホルモンが作れなくなります。その結果、免疫機能が低下してしまい病気にかかりやすくなります。がんはコレステロール値が高くても発症リスクが高くなりませんが、低すぎる場合には発症のリスクが高まります」。

正常なコレステロール値を保つための方法

コレステロール値は、体の健康状態を知るバロメーターのようなもの。最後に体内のコレステロール値を正常に保つためのポイントを教えてもらった。

「体の中でコレステロールを増やしてしまわない食事をすることをおすすめします。青魚と呼ばれるサンマ・イワシ・アジ・マグロ・ブリなどに多く含まれる必須脂肪酸は、体内で生成されるコレステロールを抑える効果があります。 あとは、食物繊維も良いです。体内のコレステロールを排泄する働きとともに、食事で摂取されるコレステロールを減らしてくれます。例えば、精米されたお米よりも殻に食物繊維がある玄米を食べるのも良いでしょう」。

photograph = Yui Kanai