東日本大震災以降、地震はもちろん火山活動など自然災害が増えています。それらが原因で、建物や家財に被害を受けた場合に備える保険が「地震保険」です。万が一の時、生活再建に向けた一時資金として頼りになるお金ですが、その保険料は急速にアップする傾向にあります。

まずは地震保険の基本を理解しておこう

地震保険とは、地震や噴火またはこれらによる津波を、直接または間接の原因とする火災、損壊、埋没、流出などによって、保険対象に生じた損害について保険金が支払われるもの。地震が原因で火災に遭った場合は、火災保険ではなく地震保険から保険金が支払われます、ただし火災保険とは異なり建て替えなどの費用を保障するものではなく、被害の程度を全壊、半壊、一部損の3段階に区分し、保険金額の一定割合(100%、50%または5%)を受け取ることができます。要するに建物や家財を再建するための資金というより、生活再建に向けた一時金と考えた方がわかりやすいかもしれません。

地震保険は火災保険とセットで加入することが義務付けられているため、住宅購入時など火災保険に新規加入する際に併せて加入する人がほとんど。阪神・淡路大震災、所得税の地震保険料控除制度の開始などによって加入率は徐々に上がり、2013年度は新たに火災保険を契約する人の約6割は加入しています。しかし、全世帯から見るとまだ加入率は3割程度にとどまっているのが現状です(下図)。

大地震がひとたび起こるとその被害は甚大で、損害を保障するには多額の費用が必要になります。ということは、民間の保険会社では支払い切れなくなるかもしれません。そこで巨額の損害を伴う大地震が発生しても契約者に保険金が支払われるよう、地震保険は民間と政府が共同で運営しています。だから地震保険は、どこの保険会社で加入しても保険料は同じ。でも、だからといって、すべての住宅の保険料が同じではありません。地震保険の保険料は住所地(都道府県ごと)の地震リスクと建物の構造によって決まるシステムになっていて、最も安いケースと高いケースでは実に5倍近くも保険料に差があるのです(下図)。

2014年7月の15.5%アップに続き、2017年からさらに上がる

東日本大震災では1兆2000億円を超える保険金が支払われ、生活再建に大きく役立ったといわれています。持続可能な制度にするためには保険料の支払い余力を確保する必要があり、これまでも何度か保険料率は改訂されてきました(下図)。

2017年1月から予定されている保険料率の値上げ幅は全国平均で19%。2014年に15.5%値上がりしたのに続く大幅アップで、3年程度の間に30%以上も値上がりすることになります。巨大地震の被害予測などを反映すると保険料が上がることは仕方がないのかもしれませんが、家計にとっては大きな負担であることは間違いありません。

保険料以外の変更点としては、損害区分がこれまでの3区分から4区分に。半損が2つに分けられ、全損に近い40%以上50%未満の損壊の場合は保険金の支払い割合が60%に引き上げられます(下図)。

少しでも地震保険料を安くするには?

地震保険には「建築年割引(10%)」「耐震等級割引(等級により10%~50%)」「免震建築物割引(50%)」「耐震診断割引(10%)」があります。新規に加入する場合は、まず保険対象となる建物が、該当する割引はないかをチェック。重複して適用することはできませんから、最も有利なものを選んで利用しましょう。

既に加入している人は、保険期間の確認を。地震保険は最長5年ですから、残りの期間によっては途中解約をして加入し直した方が有利な場合があります。保険期間の残りが多く、保険料を1年ごとに払っている人はまとめ払いを検討してみるのも有効です。

<著者プロフィール>

鈴木弥生

編集プロダクションを経て、フリーランスの編集&ライターとして独立。女性誌の情報ページや百貨店情報誌の企画・構成・取材を中心に活動。マネー誌の編集に関わったことをきっかけに、現在はお金に関する雑誌、書籍、MOOKの編集・ライター業務に携わる。ファイナンシャルプランナー(AFP)。