目にいい習慣を学ぼう

パソコンやスマートフォン、テレビなど、私たちは日常生活において気づかないうちに目を酷使している。近年では大人になって近視症状が出る人も増加。この現象は、「目に負担がかかる生活」が招いた結果と言えるだろう。

ただ、毎日の目の負担は、ちょっとした工夫で軽減させることができるのだ。今回はあまきクリニック院長の味木幸医師に、「日常生活に取り入れたい目にいい健康習慣」について伺ったので紹介しよう。

空や遠くを見る

パソコンやスマートフォンを使う際、人はどうしても画面との距離が近くなってしまう。そして、長時間にわたってその姿勢のままでいることもよくあるが、その状況は目にとても危険だ。

「人は近くを見る際、目の中にあるピントを合わせるための『水晶体』や、その水晶体を調節するための『毛様体筋』が緊張した状態になります。この状態が続くと、目にとても負担がかかってしまいます。反対に、遠くを見ると毛様体筋は弛緩(しかん)します。そのため、遠くを見ていると目はリラックスできますし、いろいろな距離を見ることは目にとってよいのです」。

立ちっぱなしでいると足が疲れるのと同様、近くを見続けていると目も疲労してしまう。そのため、定期的に目線を違うものに向けることが疲労軽減には重要だ。

オフィスの窓から遠くのビル群や緑に目を向けたり、デスクからちょっと遠い位置にある時計やカレンダーを眺めたり、時には屋外に出て空を見上げたり……。方法は人それぞれだが、できる限り習慣化して毎日の生活に取り入れるようにしよう。

目をぐるぐる動かす眼筋体操

目を支えている筋肉をほぐすための目の運動も、目にとってよい効果があると味木医師は解説する。

「目を閉じた状態で上下を見るように目玉を動かしたり、目玉を右回り・左回りにぐるぐる動かしたりしてみましょう。目を閉じた状態のストレッチで、目の周りの筋肉がほぐれますよ」。

私たちの目は、「内直筋」「外直筋」「上直筋」「下直筋」「上斜筋」「下斜筋」の6つによって支えられている。この目を動かす「眼筋体操」を行うと、この6つの筋肉がほぐれる。そうすることで、血行もよくなる効果が期待できるという。

意識的な「しっかりとした」まばたき

パソコンやスマートフォンなど、近くを凝視していると自然とまばたきの回数が減り、ドライアイにつながりやすい。そのため、ドライアイ対策としてまばたきを意識的にするのはよい習慣だ。だが、その仕方に注意が必要だという。

「パソコンやスマートフォンを凝視したり、人とのおしゃべりに夢中になっていたりするときに、瞳をきちんと閉じきらないで、開いたままの状態でまばたきをしてしまうときがあるんですね。それを私は『空振りまばたき』と呼んでいます」。

涙は目の下部分に分泌されてたまり、上まぶたが下まぶたときちんと接着し、その涙をすくいあげることで目の表面が潤う。だから、空振りまばたきばかりしていると、涙が流れ出てしまったり、「涙目なのにドライアイ」という症状の人が出てきたりするというわけだ。

通常、まばたきは1分間に10~20回程度だが、パソコンなどを使用している際はその3分の1まで回数が減ると言われている。涙は酸素を目に供給するという役割もある。ドライアイ対策として、「上まぶたがしっかりと下まぶたに着地するまばたき」を意識的にすることを覚えておこう。

目を冷やす・温める

目を冷やしたり温めたりする習慣も、ぜひとも取り入れてもらいたい。「冷やす」と「温める」のどちらも有効だが、味木医師は「基本的には、気持ちのいい方を優先してください」と話す。

「疲れ目には、どちらかというと目を温める方が有効です。水をある程度しぼったタオルを電子レンジでチンして、粗熱がとれてから目の上に当ててみましょう。温かくて気持ちいいし、血行もよくなりますよ」。

目を温める際は、首の後ろ部分を温めるとより一層、効果的だという。最近では、首や肩を温める温熱パッドなどの製品も販売されているので、オフィスで目の疲れを感じた際には首周りに当てるのも効果的だ。

また、ホットとクールを交互に体験させるのも、目にはよい。

「例えば、ちょっと水で湿らせたタオルなどを冷凍庫で冷やしておき、お風呂前に出しておきます。すると、お風呂上がりにはカチカチではなく、ほどよく冷えています。湯船につかって温まった目を、クールダウンさせると気持ちいいですよ。十分に温かいもので顔をしっかりと洗った後、冷たいシャワーを浴びるのもいいかもしれません。これならば、今のような暑い夏にもできますよね」。

自分のできる習慣からトライ!

世の中には裸眼の人もいれば、メガネやコンタクトレンズを使って視力を矯正している人もいるし、レーシック手術を受けた人もいる。ただ、「目を大切にしたい」という気持ちはすべての人に共通するはずだ。

今回紹介した習慣は、いずれも特別にお金をかけることなく実践できるし、「目の疲れが取れる」「頭がスッキリする」というメリットも出てくる。まずは自分のできる範囲内から、目にいい健康習慣を始めてみてはいかがだろうか。

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記事監修: 味木幸(あまき さち)

あまきクリニック院長、慶緑会理事長。広島ノートルダム清心高校在学中に米国へ1年の留学。米国高校卒業後に母校に戻り、母校も卒業。現役で慶應義塾大学医学部入学。同大学卒業後、同大学眼科学教室医局入局。2年間の同大学病院研修の後、国家公務員共済組合連合会 立川病院、亀田総合病院、川崎市立川崎病院・眼科勤務。博士(医学)・眼科専門医取得。医師として痩身や美肌作り、メイクアップまでを医療としてアプローチする。著書も多数あり。