『キック・アス』『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』のマシュー・ヴォーン監督がメガホンをとるスパイアクション映画『キングスマン』が9月11日に公開される。俳優コリン・ファースが演じる主人公は、実体は世界最強のスパイ機関というロンドンの高級テーラー「キングスマン」に所属するエリートスパイのハリー。組織の指揮者アーサー(マイケル・ケイン)のもと、地球規模のテロを企てるIT富豪のヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)に立ち向かう。

マシュー・ヴォーン監督

原作者のマーク・ミラーがグラフィック・ノベルとして作品にする前から、ストーリーの構成に関わっていたというマシュー・ヴォーン監督は「マーク・ミラーも私も最近のスパイものがやたらシリアスになっていることに不満だったんだ」と明かし、「われわれは『007』シリーズや『電撃フリント・アタック作戦』、TVシリーズ『おしゃれ(秘)探偵』などを見て育ってきた。どれも軽やかながらしっかり楽しめるスパイもので、とにかく楽しくて想像力あふれる作品だったんだ」とコメント。「そこで、『現代のスパイ劇を描くならどうするか』という話に発展し、古い世代と新しい世代がミックスるする展開も入れてはどうか、と。そうやって『キングスマン』が生まれたんだ」と明かした。

さまざまなスパイ映画へのオマージュがちりばめられていることについては、「過去のあらゆるスパイ映画へのポストモダニズム的なラブレターだよ」と表現し、「だからといって模倣しただけではないんだ。スパイものの楽しい部分をさらに新しくし、現代の観客に楽しんでもらえるようなものを作っているよ」と説明。「取り上げているテーマはシリアスなのに、思いっきり楽しくしているところがこの映画の特徴だね」と本作の魅力をアピールする。

そして、キングマンの組織をアーサー王の円卓の騎士になぞらえた理由について、「キングスマンが道義心や礼節の精神に根ざしたものだということを描くのに分かりやすい方法だったんだ」と返答。「円卓の騎士の伝説なら皆知っているし、伝説を現代化させ、新鮮に感じさせるのにいいモチーフだった」と語った。

また、主人公のハリーについて「俳優のデヴィッド・ニーヴンをモデルにしている。当時はモダン紳士ともてはやされていた俳優だ」と語り、「粋だがタフで、チャーミングだがお高くとまっているわけではない。そういう要素が(この作品を作る上でも)大切だったんだ」と説明。敵役のヴァレンタインについても「実在のモデルは特にいないが、あえて挙げるならスティーブ・ジョブズかな」と名前を挙げ、「つまり億万長者で、そのブランドと技術が全世界に影響を与えるほどの力を持つ男だ。その男が仮に悪巧みをしようとしたら恐ろしい強敵になるだろう? そういった意味で、スティーブ・ジョブズが一番近い」と補足した。

アカデミー賞主演男優賞を受賞した『英国王のスピーチ』などで知られ、アクション未経験のコリン・ファースを起用したことについては、「いつもと違う彼を見ることができたら楽しいに違いないと思ったからだ」とコメント。「彼は何カ月にも及ぶトレーニングに取り組んでくれたよ」と言い、「『この役をやるなら必ずトレーニングしなければならない』、そして『撮影に入る前にテストをする』とも言ったんだが、そのテストに見事に合格してくれたね」と明かす。

さらに、本作のアクションシーンへの反響がいい理由は2つあるとし、「僕はアクションは見せるためだけではなく、そこに必然性がなければならないと思っている。仮に、この映画のアクションシーンをそっくりそのまま他の映画に応用したとしても、キャラクターに共感することもできないし、鬼気迫るものにはならないだろうから、飽きてくるよね」と1つ目の理由を説明。もう1つは「格闘シーンのコリオグラフィーとセカンド・ユニットの監督を務めるブラッドリー・ジェームス・アランが優秀なんだ」と分析し、「ジャッキー・チェンという天才のもとでトレーニングをした人だよ。カンフーなどの要素を入れつつ、西洋化させた振り付けになっている」と語った。

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