猫の睡眠時間は1日10~15時間あり、最大20時間にものぼります。つまり猫は人生の2/3を寝て過ごします。猫の名前の由来は「寝る子」から「ねこ」と変化したという説もあるぐらい猫はよく寝ます。英語では「catnap」はうたた寝を意味し、世界中で猫=寝るというイメージが持たれていることがわかりますね。

人間は寝なさすぎ?

睡眠時間は動物によって実に様々。もっとも長いナマケモノやコアラは約20時間、もっとも短いキリンは約2時間です。人間の平均睡眠時間は8時間なので、動物界では睡眠時間が短い方になります。猫以外にも「寝ている時間>起きている時間」の動物は沢山います。

睡眠時間は肉食>草食

動物を食生活で分類すると、肉食動物のほうが、睡眠時間が長い傾向にあります。草食動物の食事である草は低カロリーなのでたくさんの量を食べる必要があるんですね。必然的に食べるために時間がかかるので、寝ている時間が少なくなってしまうからです。

また、肉食動物に襲われる危険性があるので長時間深い眠りにつくわけにもいきません。牛の睡眠時間は4時間ほど、キリンは2時間しか睡眠時間をとりません。例外としてコアラとナマケモノの睡眠時間は20時間以上と非常に長く、それは消費エネルギーを極限まで減らすという戦略をとって進化してきたからです。

猫はもちろん肉食動物なので高カロリーの肉を食べ、食事にそれほど時間を使いません。また肉食動物は狩りをする時間は決まっており、それ以外の時間はエネルギーを温存するため寝ます。ライオンやトラなどネコ科動物は総じて睡眠時間が長い傾向にあります。

猫はまとめて寝ない

猫の睡眠時間のサイクルを調べた研究では、26分の覚醒と79分の睡眠を繰り返していることがわかりました。深い睡眠であるレム睡眠に入るまで時間がかかります。猫の場合、20~30分後にレム睡眠が6~7分続き、その周期を繰り返します。トータルの睡眠時間は長いですが、短時間の睡眠を繰り返すので深い睡眠に入っている時間はそれほど長くありません。

実は犬も結構寝ているが……

ある複数の調査のまとめると猫の睡眠時間が12.1時間なのに対して犬は10.6時間で、その差は1.5時間しかありませんでした。しかし一般的には犬と猫を比較した時、圧倒的に猫のほうが寝ている時間が長い印象を持たれています。

それは猫の活動時間と人の活動時間がずれているからではないでしょうか。猫は夜行性ですが正確には薄明薄暮性動物(はくめいはくぼせいどうぶつ)です。薄暗い夕方や夜明けに活動性が増す動物のことです。

猫の目は暗いところで真価を発揮しますが、完全な暗闇では流石に見えません。獲物の動物には見え辛いが、猫には十分な光が残っている薄暗い時間帯が猫本来の行動時間です。猫がやたらと朝が早く、夜明け頃に「ごはんくれー」と起こしてくるのはこのためです。

AM4時に飼い主を起こし、飼い主が身支度を終わらせ家を出る頃にはもう寝ている。このような人間との生活スタイルの食い違いが、実際の睡眠時間以上に猫が寝ている印象を与えているのではないでしょうか。

安心だにゃ!

上記の研究の報告では猫の睡眠時間は12.1時間という結果でしたが、家で飼われている猫は明らかにもっと長い時間寝ていますよね。その理由として考えられるのは狩りや、パトロールする必要がないから。つまり安心しきっているのでしょう。お皿の前でニャーと鳴けば食事が手に入り、滅多にテリトリーが侵されることがない家猫は睡眠時間がより長くなります。

まとめ

自然界で起きている時間よりも寝ている時間が長い動物は猫以外にもいますが、猫の睡眠時間は長い部類には入ります。睡眠時間が長い理由として、肉食であること、薄明薄暮性動物であること、睡眠が散発的であることなどが考えられます。また室内飼いの猫はストレスが少ないことから、睡眠時間が長い傾向にあります。

その他には雨の日は睡眠時間が伸びることも。また歳をとるとさらに睡眠時間が長くなり、20歳を超える高齢猫ではナマケモノなみに眠ることもあります。1日の大半を寝て過ごす猫は、睡眠時間が不足がちな現代社会人からすると羨ましい限りです。留守番をしている日中も寝て、夜も飼い主と一緒に寝て、よくそんなに寝られるものだなあと感心させられます。1日でも良いので代わってもらいたいものです。

(画像と本文は関係ありません)

■著者プロフィール
山本宗伸
獣医師。Syu Syu CAT Clinicで副院長を務め、現在マンハッタン猫専門病院で研修中。2016年春、猫の病院 Tokyo Cat Specialistsを開院予定。猫に関する謎を掘り下げるブログnekopediaも時々更新。