今日のアイドルはここまで進化! 愛知県・名古屋で彼女たちが寿司を握る理由

「アイドルに会える寿司屋」が今、名古屋で話題になっている。歌って・握れる"寿司ドル"が接客してくれる「寿司処 五一」だ。この店がプロデュースするのが寿司ドル「アイドル教室」である。選抜7人＋Jr5人からなり、メンバーは全員名古屋在住のいわゆるご当地アイドルチーム。ふだんは寿司屋でアルバイトし、週末はアイドルとして活動している。

プロデューサーは寿司屋の3代目

プロデューサーは五一の3代目、梅村紀之さん(37)。自身もかつては東京で音楽活動をしていたが、30歳の時に家業を継ぐために帰郷した。「アイドル教室」をスタートさせたのはその後しばらくしてからのことだった。

「アイドル志望の女の子たちのレッスン風景を配信するWEB放送が始まりで、『アイドル教室』はその番組タイトルだったんです」。

メンバーをある程度固定してライブ活動を積極的に始めたのが、それから2年後の5年前。寿司屋でアルバイトしながら活動するというスタイルは、この当時からのことだと言う。バイトで生活費を稼げるし、シフトの融通も利くし、店でライブもできる。メンバーにとってはなかなかおいしい環境というわけだ。だが、当初は寿司屋がプロデュースしていることを隠していたのだとか。

「それなりに歴史のある寿司屋ですから、常連のお客さんが離れてしまってはいけないし、彼女たちにとっても変なイメージがついてしまうなどデメリットの方が多いと思っていました」(梅村さん)。

なお、五一では寿司のほかにも、名古屋メシがまとめて食べられる名古屋名物コース(手羽先、エビフライ、味噌煮込みきしめん、味噌カツ、ひつまぶし、天むす、ういろう)などもあり、観光客からの人気も高い。

テレビ番組がきっかけでタブー解禁

タブー解禁となったのはメディア側の事情がきっかけ。テレビの報道番組でアイドルたちが取り上げられることになり、そのプロデューサーを秘密にしておくことができなかったそうだ。

「実際に公になると、かえってそれが独自の持ち味になることが分かった。また、寿司屋にもそれまで来なかったお客さんが来てくれるようになり、お互いにメリットが多かったんです」(梅村さん)。

メンバーたちも、「ファンの方とお店のお客様とではそれぞれ接し方が違いますが、いろんな方と接することができるのでコミュニケーションのとり方が磨かれます」と"二足のわらじ"には相乗効果があると言う。

地元での活動が中心で、毎週ストリートライブや寿司屋で公演があるので、気軽に会いに行けるのも魅力。ファンの声をひろってみても、「直接しゃべったりもでき、アイドルだけど身近な存在。直接感じられる人柄の良さが一番の魅力」(Mさん/30歳/男性)、「3年前から毎週ライブを見てます。楽しそうでこっちも幸せな気分になれる。アイ教(『アイドル教室』の通称)があるから一週間仕事頑張ろうって思えます」(えりめろさん/21歳/女性)。

また、「7歳と2歳の娘を連れて家族で来ました。イオンモールでイベントを見てファンになって、車でCDをかけると娘がノリノリなんです」(オノさんファミリー)などと、距離の近さに親しみを感じるという意見が多かった。中には、「娘が元メンバー。アイドルなんて全然興味がなかったのに、娘の送り迎えをするうちにハマってしまった」(まんじまるさん/45歳/男性)なんて声も。

寿司と一緒にライブも楽しむ

2014年11月18日にリリースされた4枚目のシングル「愛はメラメラ」はパワフルなロックチューン。オリコンデイリーチャートで4位を獲得した。そんな彼女たちは、毎週土曜日は各地で無料ライブを開催。しめのフレーズは寿司ドルらしく「おあいそさ～ん♪」だ。そして、毎週日曜日には五一の4階にあるイベントスペースにてメイン公演を行い(入場料1,000円)、毎回約90人近いキャパが満席になるという。さらにこの1月には、ダイアモンドホール(名古屋・新栄)でのワンマンライブも決定している。

夢はもちろん「全国に羽ばたくこと」(梅村さん)。寿司屋を地盤に活動を続けながらファンと二人三脚で成長していきたいと語る。つまり、今後も五一に行けば会える寿司ドルであることは変わらない。全国各地のご当地アイドルの中でも異彩を放つ、名古屋の寿司屋から羽ばたく「アイドル教室」。あなたは歌を聴いてから食べる? それとも食べてから聴く?

●information
寿司処 五一
名古屋市中区新栄1-26-5

※記事中の情報・価格は2014年12月取材時のもの。価格は税込

筆者プロフィール : 大竹敏之(おおたけとしゆき)

名古屋在住のフリーライター。雑誌、新聞、Webなど幅広い媒体で名古屋情報を発信。Webガイドサイト「オールアバウト」では名古屋ガイドを務める。名古屋メシ関連の著作を数多く出版。『名古屋の喫茶店』『名古屋の居酒屋』『名古屋メン』『続・名古屋の喫茶店』(リベラル社)は自腹リサーチをコンセプトにしてご当地ロングセラーに。10月上旬にはご当地グルメコミックエッセイ『まんぷく名古屋』(KADOKAWA、森下えみこ著)に案内人として登場。