戦略を描くのではなく、戦術を描く

――今作に盛り込まれたテーマは、本編中でもいくつかの話数に織り込まれていたものです。今回、そこにフォーカスしたのは?

SF的な種明かしもありますが、主題として"相互理解"をきちんと描きたかった面はあります。ロードムービー的な感覚で描いてきた長い旅を、1本の映画にするというのは非常に難しい。戦略を描くとなると、どうしても俯瞰で見なくてはならないので、色々なものが些末にならざるを得ないからです。でも小さい舞台で起こった戦術を描くと、大きい戦略の中では一つのピースであったドラマの部分も強化されていくし、映画としてまとまりやすい。ドラマの部分に主眼を置くのであれば、そういうやり方のほうが実は良かったりします。

戦闘シーンに関しては、敵が脳筋(笑)な感じもあるし、今回はダイナミックで外連味があるな部分も入れてみようと、(本編と)同じ宇宙での戦いの中でも、ちょっと違った面が見えるようにはしているつもりです。それと、言ってしまうとヤマトが他艦と艦隊を組んでの参加している艦隊戦は『2199』ではやったことがなく、今回が初めてですね。

――確かにそうですね。波動砲が封印された状態で臨むヤマトの戦い方も気になるポイントです。

波動砲は皆さん期待していると思うけど、何か枷がないと、困ったら波動砲を撃てばいいという話になってきてしまう。オリジナルを作った方々も戒めを含めて「むやみに使うものではない」としていました。"便利な武器"になってしまうとインフレを起こしてしまう。だから、逆に封印して良かったと思います。パトレイバー(※)じゃないけど、知恵と勇気でやっていく方が本当は面白い。

※『機動警察パトレイバー』。重機や車輛の延長として製造・運用されているレイバー(=人型汎用ロボット)が登場する近未来リアルロボット漫画/アニメ。1980~90年代にかけて漫画、OVA、テレビアニメ、劇場作品が作られ、ほとんどのメカニックデザインを出渕裕氏が行っている。

――必殺技が"ない"ことの面白さが出てきますね。

波動砲を使うのであれば、使うかどうかの部分で葛藤が生まれると思うんですけど、「よし、波動砲だ」とお手軽になってしまうとね。その必殺技であるはずの波動砲がチートになりすぎてしまい、それでは盛り上がらない。必殺技なのになぜか波動砲が効かない敵が出てくるとか、じゃあ今度は連射できるようになりましたとか。そういうところに陥ってしまうので、波動砲の取り扱いは厳重注意ですね。

設定やデザインから生まれる演出

――テレビシリーズの企画開始から考えると長期間にわたって作ってこられたわけですが、制作するうちに監督ご自身の中でヤマトの世界観が膨らんだ部分や、広がった部分はありましたか?

僕はメカデザイン出身なので、入ってきたスタッフがデザインしたものに刺激を受けて、これならこうやったらもっと面白いかも、というアイデアが生まれることがありましたね。